第三十三話 『謁見』
使者に連れられ歩いていると、じきに玉座の広間の入り口に着いた。
絢爛な装飾の大扉が、外開きに開け放たれており、両端には衛兵が一人ずつ、槍を携えて番をしていた。
枢たちは背筋の正される思いで、扉を潜り抜けた。
「エイゼイア様。”巡賛会”の長たちを連れて参りました」
先導の使者が、一段高くなった玉座に歩み寄り、膝を突いた。
枢たちもそれに倣う。
「黒髪の者よ。そなたが、幽世からの客人か」
朗々とした声が、玉座から響いた。
「は。由埜英の波残寿から参りました、久峩岑と申します」
枢が怯まず、一歩前に出る。
「心地良い覇気だ。さだめし、功夫を積んでいるのだろう」
玉座の者がふ、と笑った。
「余が、レングーン王たるアウリオレ家の頭首、エイゼイアである。用件を申すが良い。但し、手短にな」
二人の目が合う。そこに束の間、火花が散ったように見えた。
この男、酔狂で玉座に就いている訳ではない──枢は、そう確信する。
「では、私が代表して申し上げます、王よ」
マティアスが前に出て、また一礼する。
「許す。申せ」
「では、手短に──この者が持つ”遺物”、”巨鬼の双牙”をお目通し致す代わりに、先日この者が奸賊より奪還せし宝物庫の品、”風鳴りの籠手”及び”浮き雲の具足”を、一度借り受けたく存じます」
それを聞いて、王の眉が剣呑な形に変わった。
「余の持つ”遺物“を借り受けたい、と申すか。加えて、その者の持つ”遺物”を見逃せ、と。──舐めているのか?」
しびれるような空気が、一転して周囲に広がる。
「この者は、怨敵”月輪の円卓”との抗争で勝利を勝ち取るために、重要な位置を占めているようなのです。そしてそれには、この”遺物”を手放す訳にはいかない。何卒、ご理解を頂きたく存じます」
それを聞いた王の、不機嫌な表情は変わらなかったが、どうやら興味は抱いたようだった。
「”月輪の円卓”……なるほど。そなたは確かに、その件に手を焼いていたな。解決を急ぐ内心は察してやらんでもない。ふむ……」
「では、この話が、陛下の妹君……エティエンヌ様の行方に関係しているとしたら──どうです」
枢は思わず、マティアスを凝視した。そんな話が、一体どこから出て来たのか。
「何──妹の行方が分かったのか……!?」
果たして、王は腰を浮かせた。
「大事にならないよう、これまで伏せていましたが、大魔女がいたという小屋の中から、エティエンヌ様の辰気の名残りが発見されました。エティエンヌ様の失踪に、奴らが一枚噛んでいるのは、恐らく間違いないかと」
「何ということだ……我が国の双璧が、あのような逆賊の手の内に──よし、”遺物”の貸与は許そう。但し、エティエンヌは急ぎ連れ戻せ。良いな!」
マティアスのはったりにより、謁見は急転直下の展開を見せた。




