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この世界で傭兵達は生きる  作者: 白狼 雪
1章 傭兵達の生き様
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1話 噂と依頼

傭兵団の朝は早い。

訳では無い。

各々自由に起きて自由に過ごす。

朝早く起きる者もいれば昼前や昼過ぎまで寝ている者もいる。

そんな中、拠点のキッチンで料理をする者がいた。


「フワァ〜……。おはようございます、ミネさん。」


「おはようリィ。アンタは偉いねえ。朝しっかり起きて。他の連中も見習ってほしいよ。」


「いやぁ〜ミネさんのできたて朝ご飯食べれるのが早起きの特権ですからねえ。今日の献立何ですか?」


「嬉しこと言ってくれるじゃない。今日はベーコンエッグトーストとサラダだよ。食器出してくれるかい。」


「了解で〜す。」


朝ご飯を作るミネと食器を出すリィ。

ミネ・ディスカル。”法外の人々”のメンバーの一人であり、団のオカン。キッチンは彼女の領域であり誰であろうとキッチンでは彼女に逆らえない。


「しっかし、リィ。アンタ14なんだから傭兵なんてやってないで学校の一つでも行ってきたらどうなんだい?」


「学校で教わる基礎学は全部勉強済みですし、何より拾われた恩を返さなきゃいけないんで。後、単純に今更学校行ったところであんま意味ないし。」


「そりゃあそうだろうけど。友達とかはどうすんのさ。」


「この”眼”ですからねぇ。友達というよりいい虐めの対象ですよ。」


リィは自分の片目をトントンと軽く叩きながら言う。

リィの眼は”魔眼”と呼ばれる類のもの。

魔眼は魔法使いからは”魔の幸”と呼ばれ、強大な力の象徴と言われており、魔眼を持つ者は強大な魔力を持ち、優れた魔法使いになることが約束されていると言われている。


「ごめん、軽率だったね…。」


「構いませんよ〜。それにこの眼のお陰でここにいるようなもんですし。悪いことばっかじゃないですよ。」


しかし、一部を除いた地域では不幸の象徴とも言われ、持つ者は災厄を呼ぶと言われ、蔑まれ、人々から避けられている。

リィは自身の持つ魔眼のせいで物心ついてからかなりの迫害を受け、他にもかなりの苦労をしてきた。

ミネは自身の軽率な言葉でその事を思い出させたのか謝るが、リィは気にしてないと言い少し気が楽になる。


「そういや、最近街で妙な噂を聞いたんだよ。」


「妙な噂?」


「何でも変なローブの連中が教会を建てたって。変な宗教とかじゃなきゃいいけどねえ。子ども達に悪影響だよまったく。」


「…………。」


「さてできた。リィ、盛り付けるから持ってってくれるかい。……リィ?どうしたんだいそんな怖い顔して。」


「えっ⁉い、いや何でもないですよ‼ただレナちゃん達に変な影響与えないといいなって考えちゃって。」


「確かにねえ。うちの子にも変な影響与えないといいけど。」


などと話していると二階から誰か降りてきた。

ショートカットの金髪に血のように紅い両目、そして左目にある龍殺しの一族の象徴でもある特徴的な模様。


「クァ……。ん?あぁミネにリィか。おはよう。」


「おはようございます。リニムさん。」


「おはようさん。朝ご飯できてるから顔洗ってきな。」


リニム・ヘイルヴァル。”法外の人々”に所属する傭兵であり、龍殺しの一族の一人。

普段の鋭い眼つきと不機嫌そうな表情は無く、眠そうに目を擦りながら顔を洗いに洗面所に向かう。


「リニムさん相変わらず朝に弱いですね。」


「早起きなだけマシだよ。他の連中は昼前か昼過ぎまで寝てからね。アンタやリニムを見習ってほしいよにまったく……。」


「それは難しそうですね。」


「ふぅ。さっぱりした。」


ミネとリィが話していると顔を洗ったリニムが戻ってきた。

眼つきがいつも通りの鋭い眼つきに戻り、寝癖もなおっている。


「それじゃあ食べようか。」


「悪いわね待たせて。」


「別に待ってないですよ。寝坊助三銃士に比べたら全然ですしね。」


「プッw」


「確かに寝坊助三銃士ね。フフッw」


「とりあえず食べましょう。」


「そうね。じゃあ皆で、」


「「「いただきます(ま〜す)。」」」


三人で朝ご飯を食べ始める。


「リニムさんは今日何して過ごすんですか?」


「依頼よ。グィラの奴が私に依頼を任せてきたからね。ちなみにリィ、アンタ私と同行ね。」


「えっ?」


「グィラの奴がリィを連れてけって。」


「報連相位しっかりしてくださいよ……。後で剣と“アレ“の整備と準備しなきゃ。」


「悪いわね。文句ならグィラに言って。私も言われたの昨日の夜だから。」


「グィラの奴は偶に報連相が抜けるからねえ。それさえなければ顔が怖いのと口が悪い以外はいいやつなんだけどね。」


「既婚者で二児の父親、傭兵団の団長。忙しいのはわかりますけど、ねえ?」


「とりあえずリィは準備しといてね。お昼前には出るから。」


「は~い。ちなみに日帰りですか?」


「なんとも言えないわ。場所が場所だから。」


「何処です?」


「大監獄”プリゾンフュラケー”よ。」


「は?」


「ちょっとリニム冗談にしちゃぁ悪質過ぎるよ……。プリゾンフュラケーって言ったら終身刑か死刑の囚人しかいない大監獄も大監獄じゃないか。そこにリィを連れてくって?ふざけてんのかい……。」


「ふざけてないし、文句を言うならグィラに言ってくれない?私だって反対したさ、でも連れてけって聞かないんだ。何かしら理由があるんだろうけど………。」


「アイツなに考えてるんだ………。リィ、別に行かなくてもいいんだ。アンタはまだ14なんだから。」


「ミネの言う通りだよ。無理して行かなくていいんだ。グィラの馬鹿には私が言っておくから。」


「……………二人共、心配ありがとうございます。でも行きます。多分今回はグィラさんが僕が傭兵としてやっていけるかどうかのテストだと思うんです。だから行きます。」


「………。」


「わかったわ……。ただし、もし私が無理だと判断したらすぐ帰らせるから。」


「わかりました。」


「ミネもそれで良いね。本人が行くって言ってるんだ。私らがこれ以上どうこう言うわけにはいかないよ。」


「…………ハァ……わかったよ。リィ、絶対無事に帰ってきなさいよ。それとリニム、リィを頼むよ。」


「僕はそうやわじゃないですよ。」


「任せときなさい。」


「二人共無事に帰ってくること。良いね。特にリィ。」


「僕ってそんなに弱そうですか?」


「14歳だし、身体が細いからねぇ。」


「私と比べたら弱いだろ?」


「リニムさんと比較されるとうちじゃあ誰も勝てませんよ………。むぅ……そんなに細いかな?」


「細いね(わね)。」


「二人して被らないでくださいよ!!」


拠点に3人の笑い声が響く。

朝食を食べ終わり、リニムとリィは依頼に向けて準備をし、集合場所へ向かう。

この依頼が後にあのような結末になるとは3人はこの時予想も出来なかった。

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