フリか?フリだよな?思い立ったらミートソースを作ろう
夜中に現実逃避したくなりますよね?
はいエッセイのランキングを見ていたら、たまに『思い立ったらガトーショコラを作ろう』がランクインしていて深夜にヒィッ!と驚く筆者です。
あれから値上げの影響か、筆者が購入する安くて量がある業務用チョコは無期限の販売停止となっていました。
二番候補のチョコも同様で、筆者は何を楽しみにすればいいのだと絶望で四つん這いに。
そして四肢で支えられた身体を見るとプヨンとムチムチの腹が。
体を揺らすとブルンブルン。
ガトーショコラが筆者に残してくれたものは食欲と身に着いた脂身でした……。
パージ出来ない脂身増加装甲から目を逸らしつつ小説を投稿していると、ムクムクと湧き上がる、何かを作りたい欲求。
ここで筆者は毎年恒例激辛ラー油を作りました。(思い立ったらラー油を作ろうを参照)
汗をかき、トイレでなぜあんなもの作ったのだと後悔と絶望を繰り返すまでが毎年のパターンです。
不思議なことに、だいたい五月ぐらいにラー油を作るんですよね。
おそらく夏が来る前にー!と体が疼くのでしょう。
げに恐ろしき激辛の中毒よ。
まあこれで秋までは作りたい欲求は収まります。(そして今年分のラー油は消費済み……。また作るのか)
なのに悪魔が囁いてきたのです。
「トマト貰ったから持ってきたよ」
母が親戚から貰った規格外のトマト持ってきたのです。
その親戚の育てたトマトはちょっとお値段お高めで、筆者はスーパーのトマトが食べれなくなるほど美味しいものでした。
「え?いつも二、三個なのになんでこんな沢山?兄ちゃんのとこにやらなかった?」
姪っ子がトマト大好きなので、筆者の元には実家を出てからは年に数個食べれればいいトマトが、レジ袋にゴロゴロ入ったのがテーブルの上に。
「やり過ぎたからあんた所に持ってきたとよ」
「本当は?」
「持っていくのが面倒くさかった。ちょうどあんたの所に行くけん全部持ってきた」
安定のマイペース母である。
二個ほど切ってマヨ醤油をつけて食べた。相変わらずの美味さでした。
ただ規格外品で完熟を過ぎ少し腐りかけたのもあったので、数個残して残りは冷凍庫に。
かなり昔、そのトマトが高級なものと知らずに遠慮なく使用してミートソースを作っていたのを思い出したが、あいにくと量が少し足りなかった。
仕方ないのでインスタントのカレーにぶち込んで消費していこうと考えていた。
昔、高級なミートソースを作ったよなと母に笑い話で言った。
母が帰り、一週間後。
父がやって来た。
母が持ってきた時と、ほぼ同量のトマトを持って。
フリか?フリなのか?
この時、書いている二つ小説はそこそこコメディー寄り(?)で、筆者の脳はそう受けてしまったのである。
父が帰った後に残るトマト。
しかも母が持ってきたのよりもさらに熟して、割れたのにはカビも生えている。
深夜の一時過ぎ。
いくつもの伏線を前半に入れこんだのを回収途中の小説が進まず、古の戦場で精神と時間を大幅に消耗した筆者はストレス解消にミートソースを作り始めたのである。
幸いか不幸か、安くなり始めた玉ねぎと人参が大量にある筆者の冷蔵庫。
圧力鍋を取り出して、玉ねぎをみじん切りに切って切って切って……。
「ぬをぉっ!?目が目があぁぁっ!」
包丁を砥いでいなかったせいで滂沱の涙を流しながらの玉ねぎのみじん切りでした。
そのあとは人参を圧力鍋の上ですりおろしタイム。
「うををおぉぉ!腕がキーボードを打つ大切な腕が腱鞘炎になるうぅぅ!」
腕をパンパンにしながら、深夜二時に叫ぶ筆者。
田舎の山奥に住んでいて良かったと思えた瞬間でした。
どうせグズグズになるから雑に切っても良かったと気づくのは、なぜか深夜三時に練習しているウグイスの鳴き声を聞いている時でした。
圧力を抜いている間にトマトの湯剥きです。
父が持ってきたトマトは生ですからスルスルと剥けます。
「おおぉぉ指がっ指が冷たくて痛いー!」
母が持ってきたトマトは撲殺できるほど凍っていて、お湯に入れて皮を剥いている時にその冷たさは容赦なく筆者の指を攻撃してくるのです。
その後の荒く切るときにも冷たい態度は変わりなく、人参のすりおろしで握力が無くなった筆者を容赦なく責め立ててきました。
「よしっ!あとは煮込むだけだ!ひき肉、コンソメは明日買いに行くぞ!」
圧力が抜けた圧力鍋にトマトを投にゅ……。
鍋の中はほぼ溶けた玉ねぎと人参だけでいっぱいでした。
水は入れていないのに野菜の水分って凄いですよね。
泣く泣く家にある大家族の料理でも作るのか?と呼べる大鍋を取り出して(筆者一人暮らし。残してくれた祖母よありがとう)、トマトと圧力鍋の中にある具材を移し替えました。
「うん鍋ギリギリー」
もうすぐ朝になる四時、目の前の蓋をすると零れそうなトマトソースになる一歩前の液体を見て頭が少し冷めました。
しかし、作るのはミートソース。
ひき肉とコンソメ、味付けのケチャップにソースが入らない状態。
分けて作ればいいのに、少しぐらい冷めても徹夜の脳細胞はそのまま続行。
凍ったトマトで熱が下がった大鍋の中身は中々沸騰せず。
ある程度鍋のかさが減ったのは六時過ぎ。
外に出て朝日を浴びながらラジオ体操をしながら思ったことは一つ。
小説書けよ、でした。
それからパソコンの前に座り、書こうとしたら数時間の間に話しの繋がりを忘れて読み直して続きを書こうとしたら、スーパーの半額シールが貼られる時間が近づいてタイムオーバー。
【イヤッホォーイッ!ひき肉半額ゲットだぜ!】
スーパーに行ったら目的のひき肉に半額シールが貼られていて、頭の中は狂喜乱舞。
そしてエコバックの中には引き肉2パック、合計約一キロが存在していました。
皆さん、徹夜明けのおかしなテンションで買い物に出かけないように、筆者の実体験からの注意点です。
家に帰ると数時間経っているのにまだまだ熱を持つ大鍋が、IHヒーターの発熱部分を超える大きさ鎮座していました。
買ってきたひき肉約一キロ、絶対に入りません。
そこで徹夜とひき肉と疲労の脳に天啓が!(小説で降りてきて欲しい天啓)
トマトソースか固形部分とスープを分けるのだ。そしてスープだけを煮詰めるのだガトーショコラでデブった者よ。
最後は余計でしたがさっそく実践、ボウルにザルを乗せて、そこにトマトソースをイン。
まーなかなかの固形が残り木ベラでザルに押し付けて漉す漉す。
人参すりおろし事件の被害者となった小説専用右腕(なはず?)が再びの被害に。
多大な犠牲(右腕死亡)を払いできたスープは真っ赤で、これは筆者の血だなと思いました。
そしてスープだけを煮込む煮込む。
個体が入っていた時よりも、すごい勢いで煮詰まっていくのです、そしてその横で腕をプルプル振るわせながら鮮血現場となったシンクとボウル達を綺麗にしていく筆者。
血の池地獄の横で道具を洗う鬼の気持ちがわかりました。
スープを半分以下にまで煮詰め終わり、交代するようにひき肉を炒めます。
そのままでもいいのらしいですが、炒めた時に出る肉汁を蒸発させた方が美味しいと感じるのです。
スープ、固形物(トマト玉ねぎ人参)、ひき肉を合わせます。
スープが半分になったのに大鍋に全てを入れると、再びの擦り切れ状態。
ひき肉の分なのに、どうしてこうなったあぁぁっ!と叫ぶ筆者。
家の壁が厚くて、隣の家まで五十M以上離れていてよかったですね。
さてここから最後の皇帝……おっと変換ミス、最後の工程です。
木ベラで固形物を潰しながら味付けです。
塊を見つけては潰し、コンソメを一個入れては味の確認、ソースドバー、ケチャップドボボ。
計量?何それ?
ワタシりょーりのアイアンマンアルヨー!
そして大鍋に蓋を置いても内側に赤いモノが付かないぐらいなったところでミートソースが完成しました。
軽く計算したら二十人前の材料費約七千円の大作です。
さっそく一緒に買ってきたパスタで食べました。
ほぼひき肉が赤くなっているようにしか見えないのに、もの凄くトマトと野菜の味が凝縮されていて、肉の形をしたトマト野菜スープでした。
約半日(十四時間)もかけたこのミートソースを誰にも食べさせたくありません。
小分けにして冷凍庫で保存して食べていこうと心の中で決めました。
三日後。
「飽きた。冷凍庫が圧迫される。もう食べたくない」
泣く泣く、タイミングよくやって来た母に兄の分も合わせて渡すことに。
くっ!これが孔明の罠かと悔しい思いをしました。
え、終わり?
終わりですよ。
さすがの筆者も自分の小説の中の覇王様やショタや、雨乞い2.14や具視のようなことは起きません。
オチは実際にはあまり落ちていませんね。
学生時代は山のようにありますけど。
仕方ない。ミートソースには関係ありませんが、筆者の右腕を生贄に生まれたミートソースを渡した翌日です。
母は一泊して、昼過ぎに帰る予定でした。
そんな朝、筆者の兄から電話が母にかかってきました。
母「なに?」
兄『やっぱりおれてたー』
母「は?」
筆者「は?」
スピーカーになっていたので筆者にも聞こえてきましたが意味が分かりません。
母のスマホの先にいる兄もは?と返されて困惑している様子。
母「何がおれたと?」
兄『あ?父ちゃんの骨』
母&筆者「「……はあっ!?」
父は骨折以外は元気だそうです。
まあ、兄からの連絡の後からが本番なのですが、ミートソースとは関係ないので(^_^;)
さあ、気分転換は出来たので小説の続きを書きますか!