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奇怪なダイナモ 1

ジャンク素材の塊のような自律型対人魔石式戦機(マナアーマー)は機銃を乱射する。


ドドドドドドッッッ!!!!!


生身で魔力を込めてなければ掠っただけで手足が吹っ飛ぶ火力だ。周囲の瓦礫やジャンクの山は勿論、廃工場のまだ健在な壁や柱も蜂の巣にされる。


「カンロっ! 自慢の刀でなんとかしろっ」


「近付けたらな!」


俺と、人間族の白兵士(ウォリア)のカンロ・サクマノーベルは瓦礫山から瓦礫山へ、ジャンク山からジャンク山へと転げ回るように逃げ回っていた。


「もうちょっと撃てタツオっ、ジェドも戻らない、ジリ貧だっ!」


「言うのは簡単だよっ」


俺は、掃射の並みを見切って瓦礫の山から上半身をだし、雷の力を付与した拳銃型の付与火器(ブラスター)で対人アーマーの左腕一体型の機銃に撃ち込んだが・・


ドドドドドドッッッッ!!!!!


一瞬怯んだだけで、すぐ撃ち返された。俺とカンロは慌てて吹っ飛ばされる瓦礫の山から逃げ出した。


「だぁああっ?!」


「全然ダメじゃないかっ」


「硬ぇし耐電だしっ!」


と、対人アーマーは銃撃を止め、代わりに前傾姿勢になって背部に2機背負った2門ある魔力誘導爆雷(マナトービード)射出機にエネルギーを充填し始めた。


「またアレかっ!」


「くっそっ」


4門合わせて12連発。完全にロックオンされてる。俺はブラスターに風と分身の力を付与した。半分減らし、あとはカンロの刀の切れ味次第だ。


「運試しだ!」


俺は対人アーマーが放ったマナトービードに分裂する風の銃弾『ミンチブロウ』を連射した。



・・小一時間程前、俺は魔石式バイクの後ろにカンロを乗せ、市の南部の荒野を走っていた。

並走する形で狐型獣人族(ワーフォックス)のジェドが飛行形態に合体変形した中型傀儡人形(ミドルゴーレム)に乗って飛んでいる。

座布団を敷いて中々快適そうなジェド。


「それ、いいよな!」


「いやぁっ、魔石の燃費悪いからなぁ! ギルドから予算出てなかったらこんな長距離じゃ普通やらないよっ?」


「ふうん?」


この兵器の残骸がちらほらある荒野の先にある廃工場を目指していた。表向きは農機工場だったが、軍用の魔力式の動力機(ダイナモ)を開発、生産していたらしい。

あまり良い噂は無く、戦後になると早々に閉鎖されている。


「・・1発で当たりを引けたら名探偵になれるんじゃないかっ?」


後ろのカンロが言った。彼女も軍人時代の知り合いだ。交友関係が狭い、というより軍人時代以外に対人で深い付き合いをしたことがなかった。

わりと器用な方ではあるが珍しい耳長族(エルフ) の混血ってのもあり、性分でもあるんだろう。戦後は負い目や『目』が変わったこともあってなおさらだった。


「それは名探偵というより博打打ちだなっ」


この間、完全機械化人間(エルドール)に絡まれてから即、稼ぎ屋(バウンサー)ギルドと連携して調査を始めていた。

調べてみると半年程前から戦中、パイロット適性の高かった魔石式戦機(マナアーマー)乗りが確認されただけで数十名、失踪してる。

失踪者の相当割合で白兵戦の後や大量の血痕を残していて益々疑惑は強まった。俺は運が良かった方だ。

戦争の後、過激な思想組織は雨後の筍のように多数発生しているが、その中でもアーマーの運用に拘り存在自体許されないエルドールの暗躍まであるとなると、かなり限られる。

その上で政府筋にも粉を掛けて調べた結果、それらの組織との関連がありそうな武器密輸専門のマフィアの一派が、これから向かう廃工場を使って違法なダイナモ開発をしている情報があった。

最悪、不法ダイナモの密造の証拠を押さえてギルドに報告するだけで仕事としては成立する。


「博打もいいな! 戦後は何かにつけて辛気臭くては敵わないっ」


「鬱々としているならカンロ君もフガク爺さんの霊蘭酒、相伴に預かればよかったんだよっ? あれは極上だったっ」


思い出してうっとりするジェド。通院しながらも呑む男。


「文無しの息子に説教して買える酒をわざわざ一から材料集めて造ったんだろっ? 私はそんな暇な仕事はしないっ。大体、サボテンだかなんだかを斬ってもつまらん!」


「サボテンじゃなくて蘭なっ、ドランクプラント!」


「どっちにしろ『剪定』ではないかっ?」


「剪定・・」


軍人時代の知り合いは極端なヤツばっかだぜ。と、


「タツオ、あれだねっ」


「斬り応えのあるヤツはいるかなっ?」


廃工場が見えてきた。政府の上空観測では工場とその周辺に汚染等は確認されなかったが、内部や地下まではわからない。何より、停止しているはずの魔除けの障壁が再展開されていたのは確認されていた。注意が必要だ。

何者かは施設を利用している。



ジェドが触媒の水晶玉を手に廃工場内部を千里眼魔法(パイ)で見ている間に俺は貧血対策の増血剤を飲んで日陰で休み、「敷地を一通り見てくるぞっ!」と無駄に元気なカンロは背負っていた刀身の伸縮する太刀型の付与白兵武器(ブリンカー)を抜いて展開し工場の側面へと、そんなに? という速さで走っていった。


「・・・」


体内で、血が増えてゆくのがわかる。浅い目眩が徐々に引いてゆく。


・・・・タスケテ。


「っ!」


サングラス越しに、揺らめく子供達の幻影が見えた。敵意は無い。俺はサングラスを慌てて取ったが、それらの姿は既に消えていた。


「はぁ~、ざっと見終わった。地下に魔法系の観測対策をキメたエリアがあったよ? 見えないね」


顔をしかめて魔力活性剤(エーテル)を飲みつつ、ジェドがこちらに歩いてきた。


「退路を確認して、場合によって・・お、戻ってきた。速っ、ここの敷地の面積わかってんのかな? カンロ君。人間にしては美人だけど、あんな感じだからなぁ」


太刀のブリンカーを肩で担いでカンロが物凄い勢いで駆け戻ってきた。


「特に異常は無かったぞっ!」


「そうか・・」


「ねぇ」


水晶玉に記録した内部情報を事前の戦中戦後に確認されている工場の資料と照らし合わせ、ギルドから借りた長距離電信機をウワバミのポーチからだして、ざっと報告し、カンロに封鎖された入り口を切断させると、俺達は内部への侵入を始めた。



目標は地下の観測対策エリアだが、退路の確保が最優先。少し大回りだが地下への階段が広く、隔壁が無い、ないし機能しない状態で、さらに階段近くにかなり大きな通気口がいくつかあり、その内1つは広さ、ダクトの強度、調節壁(ダンパ)と外部の防塵カバーの脆さが程好かった。

まず、最初のファンがブッ壊れて外れているのが手間いらずだ。

内部はガラクタだらけ。戦後1年と少し程度だが、物理的な魔力障壁は無く、壁や天井に砲火の痕で穴がいくつもあるせいで、屋内の劣化具合は10年は放置されたかのようだった。

もう少しで階段に着くという所で妙に広いガラクタの山と瓦礫が目立つ区画に差し掛かった。

水晶玉の映像より違和感が強い。


「あの山、大き過ぎないか?」


「ちょっと斬ってみよう」


「透視した時は何も無かったが?? 崩れるんじゃないか?」


カンロが迷わず一太刀浴びせる構えで近付き出したので、俺も止める前にカンロの斜め後ろに付いてブラスターを抜く流れになった。

対してジェドは単純にガラクタ山が崩れるのを警戒して、連れているゴーレム『1体』と1歩後ろに下がった。その時、


ドォオオオォッッッ!!!!!


ガラクタを噴出させて、対人アーマーが姿を現した。

俺達は飛び退き、飛んできたガラクタはカンロが全て両断して払った。


「ステルスかっ!」


「侵入者ッ! 排除ッ!!!」


既にマナトービードの充填が済んでいた。放たれる12発のマナトービード。

ロックオンが甘かったのか、狙いはさほど正確ではなく回避できたが、辺りをメチャクチャに爆撃され、離れた位置にゴーレムに抱えられて避けたジェドは足元の床を崩落させられた。


「嘘ぉ~っ??」


ジェドはゴーレムに抱えられたまま、地下へと落ちていった。


「ジェドが落ちたぞっ?!」


「ゴーレムもいるっ、先にこっちだ! 殺る気満々だぜっ?」


こんな軽武装で対人アーマーとやり合うハメになるとはなっ。


「侵入者! 侵入者ッ!!」


対人アーマーは右手の鋼鉄の拳を激しく帯電させつつ、左腕の大砲のような機銃を構えた。

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