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3話 別れてみれば

 目覚めたのは魅了の力だと感じるが、代償にマリアンへの感情を失ってしまった。

 気分直しにダンジョンに潜ると魔物が動かなくなってしまう。

 鑑定の結果、能力はテイムだった。


 別れてみればクラスの棟が違うマリアンとほとんど会わなくなった。

 俺が見る景色は変わらずに、ただマリアンが消えただけだ。


(会いに来てくれてた・・・か)


 付き合っている間に会いに行った事がなかった。

 一番多い記憶は笑顔で駆け寄ってくるマリアンの姿。

 している時の表情ですらいまいち記憶にない。


(マリアンを見ていなかった)


 だから、駆け寄ってくる姿しか覚えていない。

 態度にも出ていた。

 最後に触れたのは手を振り払ったときだ。


(そりゃ心も折れるよな)


 俺がマリアンならもっと早く別れていた。

 そりゃリチャーノに(なび)くだろ。

 いかれた方法だったけど、あそこまでのめり込めるんだ。

 俺と違うのは想像に難くない。


 感情が消えてから未練はない。

 けれども残っている記憶が罪悪感を作り出す。

 どうにかできなかったかと何度も思う。


 次は間違わずに向き合えるのかな。

 というか次があるのか?


 2週間も経つのに悪い噂が流れることも無かったし、マリアンの噂を聞くことも無かった。

 こっちが警戒しても自意識過剰に思えて馬鹿らしくなった。


 よくよく考えてみれば魔力だけで圧倒されたんだ。

 同い年でそこまで実力が違うとは思わなかった。


 いつでも倒せる。


 そういう相手を追い詰める理由は思いつかない。

 するヤツは本当のキチガイだろう。

 自滅を予測してるなら、むしろ警戒するのは向こうだよな。


「はぁ」


 ため息が出る。


 不思議とリネットをはじめとした女の子たちは適度に思える距離にいてくれる。

 なんとなくリネットが根回ししたのかもな。


 お陰で表向きの影響はなく心配したような修羅場も起きなかった。


 ☆ ☆ ☆


 今日はパーティーでダンジョンに潜っている。


 テイムを公表してから初めてダンジョンアタックだ。

 メンバーは俺、ダオモ、リネットの3人。

 リセットするとは言ったもののリネットを誘ってしまった。

 十分馬鹿にした行為なのは分かっているが、リネットは頷いてくれた。


「テイムって便利だよね。てかテイムなの?」


「ああ。やっぱ楽勝だな」


 ビックラットが動かなくなったのを見てリネットが呆れたように言う。

 ダオモも余裕な感じで頷いている。


「テイムっては言ってた。自分のスキルなのにちょっと怖いよ」


「どんなモンスターに効くか確認したの?」


「ああ、スライムにも効いてたけど、4層まではいけてた」


「え~スライムにも効くの?どこに目があるのよ!じゃあ今日はテイムについて検証しようよ!」


「検証?」


「うん1層から全モンスターをテイムするの。スキルのレベルも上がるだろうし、報告上げたらいい評価つくんじゃない?」


「おっ賛成!俺が記録とるわ」


「まあいっか。じゃ今日はよろ~」


 という訳で1層からテイムの検証が始まった。


「ほんとにスライムにも効くのねぇ」


「不思議だよな。どんな感覚なんだ?」


「う~ん。見てるとちょろっと繋がったような気がするんだ。その後ギョッって驚いたような感じがして繋がったのが切れるんだよ」


「そしたら動かなくなる?」


「ああ。なんだろな?」


「ほんとどこに目があるのかしら?感覚的なもの?テイムが心を通わるってのは合ってそうね?」


「う~ん。比べるものがまだないからなんとも」


「よっしゃ。まあ楽しみだな」


 結局10層までに出現する全てのモンスターで確認したけど、現象は同じだった。

 階層が深くなるにつれて硬直から回復する時間が短くなったから、レベルと関係あるかもしれない。


「みんな同じ反応ね。繋がった感覚も同じなの?」


「ああ。全く同じ。なんだろなぁ」


 地上のモンスターなら違うのか?

 本当はテイムじゃないとか?


 せっかくのテイムだから1体くらい成功しないかな?


 「目を閉じてテイムしたらどうなるんだ?」 


 「やってみるか」


 安全のため1層に戻る。


 「とりまビックラットでも連れてくるわ」


 「ああよろ」


 目を閉じて待っていると、キーキーと甲高い声が遠くから聞こえてくる。

 なんか遠くに光っているような感じを受ける。

 それがどんどん近づいてくる。


 光が強くなってこれがビックラットか?そう思ったら、キーーーと大きな鳴き声が聞こえると静かになった。

 目を開けるとリネットが警戒して構えていた。


「レオなんかした?」


 ガードしているリネットが聞いてくる。


「ん~。声の方でぼんやり光を感じたんだ。そしたらあの声だ。ダオモを待とう」


 ダオモがぐったりしたビックラットを持ってきた。


「突然叫んでこうなったんだ。レオであってるか?」


「たぶん?目ぇ閉じてると何か光ってるんだ。それが近づいてきてビックラットかな?って思ったら大声が聞こえた」


「こうやって目を閉じるとビックラットが光ってるんだなってわかる」


「心眼みたいなもんか?かっけぇーな」


「心眼?ってこんな感じなのかな?なんか不思議だよ。慣れてきてたらできることも増えるかも?」


「ねぇ1層に戻ったし、外で動物をテイムしてみない?」


「あっ!ダンジョンより先にすればよかったな」


 外に移動して動物を探す。

 ダンジョンの周囲は森なので動物くらいすぐに見つかるだろう。


 ☆ ☆ ☆


 動物はすぐに見つかった。


 ダンジョンを出てすぐに目を閉じ気配を探ろうとした。

 光った!と思った瞬間。


 バタバタバタバタトトトットバタバタバタトトトットバタバタバタ


 大量の羽ばたきの音と共に鳥の大群が集まった。

 足元を見るとリスやネズミ、猫なんかも集まってくる。


「なにこれ?」


「いやすごいな!テイム使ったのか?」


「ああ。使ったというか・・・ビビるな流石に」


 数が多すぎてあたふたする。

 動物たちは我先にと集まって挨拶をしてくる。

 そう挨拶しているのが分かる。


 ダオモとリネットは何もできずにオロオロしている。

 リネットからは若干うらやましそうな気配も感じる。


「どうしよ?」


 ついに身動きが取れなくなった。

 視界もほとんどない。


「・・、だ・・・・か」

「・・に・・・い・?」


 動物の鳴き声で、ダオモとリネットの声が聞き取れない。

 焦っても仕方がない。


 力ずくで追い払うことは難しそうだし、したくない。

 テイムでどうにかできるのか?


(まぁやってみよう)


 再び目を閉じるとたくさんの弱い光に囲まれているのが分かる。

 ダンジョンのモンスターと比べて明らかに光は弱い。


 脱力して感じるがままにしてみる。


 本当にたくさんの光に囲まれている。

 好意的な気持ちがガンガンぶつかってくる。

 恋愛はまずったけど、動物に好かれるのは嬉しい。


 集中していると光が別々に認識できるようになってくる。

 大きいもの小さいもの、色や形も違っている。


 一つ一つが生きていてそれぞれ違う。


 当たり前のことをぼんやりと思った。


 ふと足元に一際強い光がいることに気が付いた。

 これは何だろう?

 ビックラットの光よりも強い。

 モンスター?


 目を開き光の元を見ると、銀色の猫がいる。

 あれ?見えないはずなのに見える?


「なぁ~~ぉ」


 なんでだろう?猫の鳴き声がはっきり聞こえる。

 緑色の綺麗な瞳と視線が合う。


(あっ)


 視界が猫の瞳に飲み込まれる。


「なぁ~~ぉ」


 猫から目が離せないが、猫と俺の二人の空間にいることが分かる。

 猫は嬉しそうだ。


(くるか?)


 なんとなくそう問いかけた。


「なぁ~~~~ぉ」 


 承諾らしい返事を聞いた。


 バタバタバタ


 羽ばたきの音が遠ざかっていく。


 気が付くと集まった小動物はいなくなっている。

 残っているのはさっきの猫だ。

 俺の足元に頭をこすりつけている。

 目が合うとタンっと軽い感じに肩へ飛び乗った。


 重くない。

 というか重さを感じない。

 不思議なことに安心感がある。


 撫でてみようと手を伸ばす。

 指をペロッと舐められ、ゴロゴロと頭をすりすりしてくる。


「これってテイムできたのか?」


 自分でも分からずにつぶやいた。


「か~わ~い~~!そうだよ!テイムだよ!初めて見た!」


「いやすげぇな」


 リネットは猫に興奮していて、ダオモは群れの衝撃から戻っていないようだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 目覚めたのは魅了の力だと感じるが、代償にマリアンへの感情を失ってしまった。 これも有るんでしょうが、寝取られたなら復讐だで、自分の至らなかった点無いのか考えもしない主人公より、内省する主人…
[良い点] 短編部分で闇堕ちすると見せかけて モフ墜ちするとは……良いぞ、もっとモフれ。
[一言] 続きが読めて嬉しいです。この後の展開を期待してお待ちします。
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