風花
『一本!勝負あり!』
主審が高々と宣言する。
道場同士の交流会でワシは負けた。
剣に人生を捧げ、授業中も寝る時も剣の腕を磨くことばかり考えてきたワシが全く歯が立たずに負けてしまった。
それも同年代の女子にだ。
『黒田って太刀花様の刀を打ってる所のだよね。
やっぱあの家に関わってる人は強いねー!』
そう言って彼女は笑顔で面を外した。
その表情からは疲れも焦りも見えない。
彼女の名は佐々木 風花
君達の知る太刀花藍の祖母にあたる強く美しい女性だった。
その後、負けず嫌いのワシは何度も彼女に挑んだ。
道場にも乗り込んだ。
彼女の通学路にも待ち伏せした。
校門前で待ってヤジウマ達に囲まれて決闘したこともあった。
(この時はいつも以上にボコボコにされた気がする)
結果は全戦全敗じゃ。
だが彼女に挑む時はいつも胸が高鳴った。
いつしかワシは太刀花家の事を忘れ彼女を追いかけていた。
ワシの青春は彼女と共にあった。
男が強くなる時は大体3つ。
怒り、夢、色だと思う。
かくいうワシは色であった。
気付けばワシは彼女の髪を、瞳を、唇を独り占めしたいと考えるようになっていた。
そう、ワシは彼女に恋をしていたのだ。
恋がワシを強くした。
ワシは太刀花を振り切ったと思っていた。
そしてワシは彼女と共に剣士としての高みを進むのだと当然のように考えていたのじゃった。




