表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

繋いだ手

10年後ー


(あき)、出張。お疲れ様」


「疲れたー。でも、恋夏(こなつ)に会いたかったから嬉しいよ」


私と(あき)は、22歳で結婚をした。


私達は、キス以外の初めてを結婚してからした。


「まだまだ、二人でいたいな」


「私もだよ」


周りが、結婚して子供を作っていく中で、私達は、二人でまだまだいたかった。


「私は、まだまだ二人でいたい」


「俺もいいよ。だって、もっと二人で行きたいとこもしたい事もたくさんあるんだよ。」


(あき)は、私を抱き締める。


「あの時よりお金があるから、俺は、恋夏(こなつ)といろんなとこに行きたい」


「私も、二人の時間を過ごしたいよ。」


父が、死ぬ前に私に言った言葉を(あき)に伝えたい。


(あき)


「なに?」


(あき)は、おでこにキスをしてくれた。


「私ね、お父さんに言われた言葉があるんだ。」


「うん」


私は、(あき)の手を握りしめる。


「この先、どんな事があっても繋いだ手を放さない事だけが大切なんだよ。子供が出来ないかもしれない、病気になるかもしれない、相手を傷つけるかもしれない。それでも、自分が好きなら放したら駄目だよ。愛し合って生きていたら、どんな事があっても二人なら必ず答えを見つけられるから…。って、父が言ったの。」


「うん」


「だからね、私にとって必要なのは(あき)との人生なんだよ。」


「俺もだよ」


(あき)は、私を抱き締めてくれた。


「二人でいる時間が、すごく大切なんだよ。」


「うん、俺も」


大切な事は、(あき)のその手を放さない事


恋夏(こなつ)、愛してるよ」


「私も、愛してるよ。(あき)


私は、(あき)の手をしっかりと握りしめる。


左手の薬指に光る結婚指輪が、重なった。


言葉にするのが、不器用で苦手な私達は…。


必ず手を繋ぐ。


私は、あの日ちゃんと伝えなかった気持ちを(あき)に伝えようと決めた。


「あのね」


「うん」


「今さらこんな事言うけど」


「なに?」


秋は、眉を寄せてる。


「あの電車で、桜の季節に出会った時から、私は(あき)が、大好きで。心の中でずっと話しかけていたよ」


「なんだー。」


(あき)の顔が緩んだ。


「ずっと、言ってなかったから」


(あき)は、私を抱き締めた。


「そんなの、全部聞こえてなくても知ってたよ。俺も毎日、恋夏(こなつ)に話しかけてたから」


「そうだったの?」


「うん、この手を繋ぐだけで全部わかるよ」


そう言って、左手の甲にチュッとキスをしてくれた。


幼い日に約束をした事を、守って現れた王子様。


二人で生きていく道でもいい


子供を育てていく道でもいい


この手を繋いでさえいれば、どんな未来も怖い事などない。


私は、死ぬときまで、この手を放さずにいたい。


繋いだ温もりから、愛を感じ


繋いだ手から、優しさを感じ


繋いだ手から、幸せを感じ


私は、今日も明日も明後日も…


この先、何十年も…


ううん


お婆ちゃんとお爺ちゃんになっても、この手をずっと握りしめていく。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ