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一
僕の花を選んでくれた彼女が死んでから、明日でちょうど一年になる。
僕はその時の出来事を、自分の主観を多大に含んだ文章で紡いでいく。パソコンに表示される文字はただの二進数によって形成された無機質なものであるはずなのに、それが羅列されて意味を持つと、ある人にとっては特別な意味を持つものへと変貌する。
夕方からパソコンとにらめっこしていた僕は、すっかり暗くなった部屋に驚きながら伸びをし、部屋の電気を点けた。
もう一度チェアに座ってみると、先ほどまではパソコンの画面にしか意識を向けていなかったせいで視界に入らなかったものが突然僕の意識に飛び込んできた。
本棚に立てかけられているノート。これは、彼女が僕に遺したものだ。
……いや、僕と彼女が一緒に、この世界に残したノートだ。
それを見て思わず微笑んだ僕は、よし、と小さく息を吐き出して、またキーボードをカタカタと打ち始めた。
この物語は、「これは、僕と彼女の、僕にとっては希望となる物語である」という文章から始まる。