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剣聖の幼馴染が勇者と旅に出たので、村人の僕は先回りして魔王を討伐してみました。

作者: 寸胴鍋の精霊

 アイル・デフィカルスは村人である。村人である。

 大事なことなので、もう一度言う。ただの村人である。


 しかし彼と共に過ごし育った幼馴染の少女ーーアリシア・セイバルツは、村人では無かった。神々から祝福を受けて、剣精の加護を授かった世界最強の剣士、剣聖となり、異世界より召喚されし伝説の勇者と旅に出たのだ。

 ただの旅?いいえ。かつて伝説の村人に打ち滅ぼされた魔王が、数百年の時を経て復活した。名誉ある魔王討伐の旅に出たのです。


 そして魔王討伐の旅に参加した幼馴染キャラは、高確率で勇者に寝取られることが過去より伝わるD・O・U・J・I・N・S・Iにより知られていた。

 いつかこんな時が来るのだと、彼は幼い頃から半ば確信していた。だって、アリシアは昔からちょっとおかしかったから。

 ある時は、料理をして大好きな彼に手料理を振る舞うのだと意気込んで包丁片手に台所に立てば、食材が切られたことに気が付かず、村が両断された。

 ある時は、大好きな彼とおままごとしましょといつの間にかチャンバラごっこに興じれば、舞台である村の広場が更地に変わり、直線状にあった高い山々が消し飛んだ。

 ある時は、突如村に大魔神が現れた時、寝起きだった彼女は歯ブラシ片手に磨き殺した。


 彼女はきっと歴史に名を残すに違いない。

 彼の初代大勇者、田中太郎のように。

 彼の初代剣聖、田中二郎のように。

 彼の初代賢者、田中三郎のように。

 彼の初代聖女、田中花子のように。

 そして伝説の村人、ユン・ヤン・ヨンのように。


 そうなればきっと無様に村を追放されて、幼馴染を寝取った勇者にざまぁを仕掛けて返り討ちに合うのだろう。彼の目には、未来が見えた。


 何を成すべきか?彼が考え、そして導かれた答えは、勇者より先に魔王を討伐しちゃえば万事解決オール・オッケーだった。


 そうと決まれば、彼の行動は迅速だ。薪割りの斧と鍋の木蓋を装備し、道端産の質が悪い雑草を薬草代わりに懐へ忍ばせて村を出た。


 まずやるべきことは、装備の強化。流石の彼も、鍋の木蓋で魔王の攻撃を凌ぎ切ることが出来るなどと自惚れてはいないつもりだった。

 しかし金がない。ならばどうする?彼が買ったのは寸胴鍋の鉄蓋だった。


 そこからの旅は早かった。迫りくる魔王軍を薪割りの斧で兜割し、ドラゴン部隊による吐息ブレスの一斉放射を寸胴鍋の鉄蓋で防ぎ切る。若干溶けた。

 お返しだとばかりに放たれた薪割りの斧による一撃は連なる部隊を、数百キロメートルは先にある魔王城ごと吹き飛ばし、こうして村人アイル・デフィカルスによる幼馴染寝取られ防止のための魔王討伐の旅は成されるのだった。

めでたし。

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[一言] 旅に出た後なら手遅れでは
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