9話 聖者は頭アルテマでした
シーア視点
どどどどどどどどどうしよう。
ラグナが帰ってきて嬉しくてついいつもより調子に乗ってしまった。
何が究極雷帝竜なら5秒で倒せるなんて嘘を付いてるんだ私は!!!!
しかも私の本当のステータスは
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【名前】シーア
【ジョブ】ニート
【レベル】1
【攻撃力】1
【体力】1
【防御力】1
【素早さ】1
【魔力】1
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なのにどうしよう!!!!
これが恥ずかしくてスキルのインビジブルで隠してるのにどどどどどど、どうしよう!!!!
しかも大変な事に巻き込まれてない?!
「師匠。これから四天王の討伐に向かう」
「分かった。この私が焼き尽くしてくれる」
何を言ってるんだ私は!!!!
四天王なんて焼き尽くせるわけないじゃん!
私のばかばかばかバカ!!!!
ほんとにバカ!
昔の私も馬鹿だよ!
子供特有の調子に乗るという行為の結果盛大にラグナが勘違いしてバカ強くなってるし!!!
何が四天王なんてワンパンだ!何が組織と戦ってるだ!本当の私は家でゴロゴロしてるだけの万年ニートなのに!
あぁ、もうばかばかばか!!!
ラグナはいつも私の馬鹿みたいな話聞いてくれてそれでいつも自分を強く見せちゃうのは悪い癖だ!
ラグナの事好きだから嫌われたくなくてこういうこと頼まれたら断れないし!
って好きって何なのよ!
あーもうばかばかばかばか!!私のバカ!
※
視点戻って
やはり師匠は頼もしいな。
毎日とても強い組織と戦っているだけはあって強いモンスターも強い四天王もボコボコのボコなんだから。
「私の紅蓮の炎によって焼かれたモンスターは死ぬ!!!!!!」
師匠曰くそうらしい。
これは期待出来そうだな。
「流石究極雷帝竜を5秒で倒す師匠だよ」
俺には無理だった。
いや、一生かかっても無理な偉業を息をするように何度もこなしてしてきた師匠には到底俺は勝てない。
「ま、まぁね」
胸を張る師匠。
流石だ。己のやってきた事をここまで誇れるというのは素晴らしいことだと俺は思う。
そんなことを思っていたら今度はティアが口を開いた。
「これで1日5万ゴブリンの日課をこなしました!」
「ゴブリンなんてどこにいるんだ?」
ギルドマスターが周りを見回してゴブリンが居ないことを確認した。
「私の心の中ですよ、ふっ」
「心の中?」
驚くギルドマスター。無理もないティアはゴブリンを憎むあまり脳内でまで討伐するようになった。
そして挙句の果てに脳内で手に入れた経験値を現実に持ち出している変態だ。
そんなことを話していたら
「ここか」
「ここのようだね」
ついに四天王の1人がいると言われている場所までやってきていた。
「さて、中に入るか」
「その必要は無い」
洞窟だったので中に入ろうとしたら声が聞こえた。
「うおっ!」
驚いて声の聞こえた方、洞窟の入り口の上を見ると
「お、お前は!四天王か?!」
「そうだ」
俺の質問に律儀に答えてくれた四天王がいた。
「おのれ!何が目的だ?!」
「世界征服」
「そんなことはさせないぞ!」
そう言って魔法を使う。
いつも通りのアルテマだ。
「な、何だこの魔力の高まり」
四天王が後ずさり始める。
それは四天王だけじゃなかった。
「な、何なんだこの魔力………」
ギルドマスターが後ずさり始めた。
ティア、こんな風に反応するように言ってくれているんだな。
ギルドマスターにこんだけ驚かれては俺も嬉しいよ。
でも知ってるよやらせだって。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!加減は出来ないぞ!!!!」
俺はノリノリでアルテマを放った。
チュドーン!!!
洞窟が崩れた。
「ぐはっ!」
そして吹き飛ぶ四天王の1人。
俺の交戦はこれにて終わったようだ。
だが最後まで油断はできない。
こいつがやられたフリをしているという可能性もある。
それにしょせん聖者の俺にはこの程度の事しか出来ないのだ。
さぁ、本業を頑張るとしますか
「うぉぉぉぉぉ!!!!!」
俺はティア達に強化魔法を使う。
「やれ!みんな!」
俺の声に何も答えない全員。
「「「え?」」」
それどころかそんな反応をされた。
「やれ!やるんだ!そいつはまだ生きているかもしれないんだ!」
俺の声にみんなが顔を合わせた。
「何を言っているのか分からないがこの男をこれ以上攻撃して、死体蹴りするのは私の騎士道精神に反する」
そう言って俺の方に近付いてくるギルドマスター。
「私もゴブリンじゃないならいいですー」
「私もパスかな。こんなつまらない奴相手にやはり全力は出せない」
ティアも師匠もそう言って俺のほうにやってきた。
「え?」
「安心しなよラグナ。あれはもう暫く立てないから」
「で、でも!」
「でもではない。もう帰ろう」
ギルドマスターがそう言ってくるので俺はそれに頷くことにした。
ここで歯向かってもどうにもならなさそうだったからだ。
※
「ラグナ様お疲れ様です」
家に帰るとシエルが出迎えてくれた。
「うん」
何となくいつもの感じで歩いてソファに座り込んだ。
「聞いたぜ兄ちゃん!」
シャルも近寄ってきた。
「四天王を倒したんだってな?!すげぇな兄ちゃん!」
「あ、うん」
そうらしいが実感がない。
俺は弱い。
究極雷帝竜を5秒で倒せない。皆ができることを出来ない俺は弱い。
だから四天王を倒せるわけが無いのだが。
そうだ。あれは偽物だったのではないか?
俺は勘違いしていたのではないのか?
考えろあれは果たして本物だったのか。
「倒したのは偽物だ」
そう言っておく。
「え?偽物?」
「そうだね。あれは偽物だよ」
師匠もそう言っている。
「あれは組織の罠だよ弟子」
「やはりそうか」
「我々に四天王を倒したと思わせる奴らの計画。あまり調子に乗らない方がいいよラグナ」
「忠告痛み入る」
やはり罠だったか。
おかしいと思っていた。
あんなにあっさりと四天王が倒せるわけが無い。
しかし俺としたことが馬鹿だった。
ギルドマスターの反応と四天王を倒したという勘違いをしていたのだから。
「師匠俺目が覚めたよ」
「それはいいね」
やはり俺はまだ色々なものが足りていないな。
慎重さなどはもう少し必要だろう。
「どこ行くつもりですか?」
シエルが着いてきた。
「いや、もう寝ようかなと」
「そうですか。なら準備をしますね」
俺は彼女が寝る準備をしてくれるのを黙って待つことにした。
はぁ………もっと強くならないとな。