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3話 聖者は悪徳商人をワンパンで倒します

 揺れる馬車に乗って数十分後くらいに俺とシャルは目当ての場所までやってきた。

 馬車を降りてとりあえずシャルと話すことにする。


「ここでいいのか?」

「そうだぜ兄ちゃん。ここに私たちを飼っている奴がいるんだ」


 道すがら話を聞いていたがどうやらシャルは奴隷としてこの村の偉いやつに買われているらしい。

 そして、それを証明するかのように声が聞こえてくる。


「ふははははは!!!!働けよ奴隷共!!!!!キビキビ働けぇ?!誰がお前たちを食わせてやってると思ってるんだ?!」


 大声で叫んでいるのか村の外まで聞こえてくる。


「シャル」

「どうしたんだ?兄ちゃん」

「奴を油断させたい。無理をさせるかもしれないがシャルだけ先に入ってくれないか?」

「あぁ。いいぜ。兄ちゃん来てくれるんだよな?」

「あぁ。期待してくれていい」

「待ってるぜ」


 そう言ってシャルは先に入っていった。



????サイド


 奴隷商人様に水をかけられました。


「おらぁ!キビキビ働けって言ったよなぁ?シエル」

「ご、ごめんなさい」


 必死に謝ります。

 でも


「謝ってる暇があるならその箱を向こうに持っていけよ。奴隷が」


 痛い。

 蹴られました。


「お前らに飯を与えてやってんのが誰か分かってるよな?奴隷が。ゴミが。せいぜい俺をイラつかせないように立ち回れよ?」

「は、い………」


 答える声にも力が入らなくなってきました。

 誰か………助けてください。


 もう耐えられない。


「シエル?」


 ガッと私の胸ぐらを掴んでくる商人。


「もっと元気よく大きな声で返事をしろといつも言っているよなぁ?!」


 凄んでそう叫んできます。

 このパターンは………知ってます。


 殴られるんです。


「いや、嫌です!」


 気付けば商人の手から逃れようとしていました。


「おい、シエル」


 商人の声音が変わりました。


「ひ、ひぃぃぃい!!!!」

「おおっと逃げても無駄だぞ?今日はお仕置だな」


 商人の顔が歪みました。

 そうしながら一歩一歩近付いてきます。


 だ、誰か………


「助けてください!」

「助けなんて来るわけねぇだろ?ここは王国にきっちり認められた村だぞ?そしてここにいる連中は外にこの村のことを漏らさない。完璧だ」


 そ、それでも誰か………


「さぁ、お仕置だ!」


 今振り上げた拳を振り下ろしに来ました。

 もう………ここまでですか………そう思った時。


「お、お前は………」

「こんな女の子を殴るくらいなら俺を殴れよ」



 少女に振り下ろされた拳を左手で弾く。

 そして


「おっとっと!」


 よろめく男。


「そらよ!」


 そこを見逃さず顔に1発右手で拳を叩き込む。


「づおっ!」


 仰け反る男。


「ぐおぉ………」


 そうして倒れた。


「えっ?」


 な、なんで倒れた?

 まだここからだろ?


「ふ、ふえぇぇぇぇ………」


 そうして少女が抱きついてきた。


「いったい何があったんだ?」


 それよりも俺としてはあの商人が一撃で倒れたことの方が気になるが。

 まさか俺いいところだけ持っていったのか?


 そうだろうな。

 この少女が限界まで削っていた男の体力を俺がドヤ顔で持っていったに決まってるなこれ。


「こ、怖かったですぅぅぅ!!!!」


 少女は勿論そうやってか弱いアピールを忘れずに俺を持ち上げてくれる。

 そうか。なら今回はその優しさに甘えることにしよう。


「怖かったな、俺が来たからもう大丈夫だ」

「ふえぇぇぇぇ」

「悪いな。普段なら泣き止むまで待っていたいところだが」


 振り返ってギロりとそばに居た商人の召使い達を睨んだ。


「ひ、ひぃぃぃ!!!!」


 それで後ずさる男達。


「この商人がここのボスで間違いないか?」

「は、はいいいい!!!!」


 ブンブンと首を縦に振る男達。


「そうか。隠し事すんなよ?」


 そう言いながら女神様に聞いてみた。


『本当のことみたいですよ。この商人がボスです』


 そうか。と返して気絶している商人を引きずって男達に近付く。


「お前らはこれからギルドの世話になる。いいな?」

「は、はい………」


 ギルドは冒険者の支援等を行っていると同時にこういった奴らの処分まで引き受けてくれている。

 頼もしい組織な事だ。

 

「さて」


 立ち上がると少女を連れて一通り村を見て回った。

 そうしながら捕まっていた奴隷達を解放する。


「いらないことしてくれた」


 1人がそう行ってきた。


「あんたのせいで私達は食えなくなった」


 そう言ってくるのは1人の少女だった。


「何で?」

「私達はあの豚に食わせてもらってた。その飼い主がこうなっちゃったら私達は餓死する。そんな事も分からないの?」


 辛辣にそう行ってくる少女。

 なるほどそういうことか。


 文字通りこの中にはあの商人に食わせてもらっていた奴もいるということか。


「気にすんなよ。そんなことなら俺の村に来いよ」

「あんたの村………?」

「あぁ。俺の村。村の皆は優しくて人手は足りないし頼めば幾らでも仕事はあるぞ」

「そ、そうなの?」


 奴隷として過ごしてきた彼女達だ。

 生きるために仕事をすることに対して抵抗はないのだろう。


「あぁ。だが俺は先にこいつをまた引き渡さなきゃいけない。とりあえずここで待っていてくれるか?」


 そう言って俺はシャルの元に商人達を連れて戻ることにした。

 のだが


「ま、待って」


 さっきの少女がまた声をかけてきた。


「どうしたんだ?」


 俺も返事をしておくことにした。


「そ、そのごめんなさい」

「何で謝るんだ?」

「え、だって………」


 言い淀む少女。


「そんなことも分からないのかって言われそうだな」


 苦笑いする。


「そ、そんなことないよ!」


 必死に否定する少女。

 その後にまた口を開いた。


「さっきあなたに酷いこと言ったから。私達の食い扶持潰されたって思ったから」

「そういうことか」


 なんの話しをしているのかと思ったがその事について謝りたかったらしいな。


「だから謝りたかった。その、ごめんなさい。しかもそんなことも分からないの?とか言っちゃって」

「気にすんなよ」


 そう言ってシャル程度の年齢に見える少女の頭を撫でた。


「俺が何とかしてやるから」

「//////」


 何故か顔を高める少女。

 何故だろう?


 まぁいいか。

 先にこの商人達を引渡しに行こうか。



ここまでお読みくださってありがとうございます。

少しでも面白い、面白そうと思っていただけたならブックマークなどして頂けると嬉しいです。

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