24話 決闘と調合
アルスカが視線を向ける方に俺も向けた。
そこにはイラが立っていた。
「よう。踊り子」
「イラか」
イラが一歩一歩近付いてくる。
そして
「俺と決闘しようぜ」
「またか?」
「あぁ。今度こそねじ伏せてやる。お前見てっとイライラすんだよ」
そう言ってイラは指で俺を促す。
付いてこいという事らしいのでついていく。
そして連れてこられたのは王室だった。
「王!」
イラが王様に声をかける。
「もう一度この踊り子と決闘させてください!」
「何度やっても変わらんだろ」
王様にもそう言われている。
何度やってもイラの方が強いという事だろうか。
それなら確かにそうだが、俺はしょせん不意打ちしか出来ないわけだし。
だが
「やらせてください」
イラの真剣な顔に折れたのか
「分かった」
そう返事をする王様だった。
※
俺たちは庭園に来ていた。
そして前回と同じように互いに距離を取り合って見合う。
「おい、踊り子」
そう声をかけてくるイラ。
「ん?」
「ほらよ」
そう言って木剣を投げてきたイラ。
自分も同じものを手に持っていた。
「覚えてるか?小さい頃木剣でこんな風に戦ったの」
「あぁ。覚えてるぜ」
俺は勇者に選ばれたイラの練習相手だった。
「俺らの間で魔法だのなんだのは必要ねぇだろ?必要なのはこの木剣。その振り合いだろうが」
そう言って構えるイラ。
「俺はな!あん時からお前のこと嫌いだったんだよ!」
そう言って開始の合図もまだなのに踏み込んできたイラ。
しかし、遅いぞ?
やはり遅い。
「せい!」
イラの鋭い刺突。
それを
「ごめんなぁ!」
弾いて受け流す。
「ちぃっ?!」
そして連撃を繰り出す。
「喰らいな!」
右、左、上からの連撃だ。
「づおっ!」
それを受けて膝を付くイラ。
あれ?
大したことしてないと思うんだが。
「はぁ………はぁ………」
そして肩で息を始める。
何だ?こいつも揃いも揃ってティアに何か負けるように言われたのか?
「ゴミが調子に乗るなよ!」
しかし一転して斬りかかってくる。
それを避けて
「叩きのめす!」
上からの一撃をお見舞いする。
「かはっ………」
それで今度こそ膝を付くことなく倒れたイラ。
「勝負あり!」
王様がジャッジした。
弱かったな。
イベント戦だからといってここまで手を抜くことないのにな。
そう思っていたら
「よ、よくもイラ様を!」
「よくもイラを!」
踊り子のミーナと剣聖のメアがそう言って俺の前に立ち塞がった。
「何をしている!」
王様の声も虚しく
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「メアさん!バフをかけます!」
斬りかかってくるメアに踊り始めるミーナ。
何なんだ一体。
メアの攻撃を避ける。
「な、なんと!剣聖の一撃を避けるとは!」
「剣聖の一撃を避けれた人間などいたでしょうか?!」
みたいな会話が聞こえてくる。
ティア………お前はどこまで仕組んでくれているんだ。
俺は嬉しいよ。
「うぉぉぉぉぉ!!この!この!」
メアが何度も何度も剣を振ってくるがそれを全て避ける。
「何故木剣を取らない?」
そう聞いてくるメア。
「女の子に手を出すなって親父に言われたからさ」
今は亡き親父に言われた言葉だ。
だから俺は出来るだけ手を出さない。
しかし
「うぉぉぉぉぉ!!」
それを聞いてまた剣を振ってくるメア。
「しつこいと話は別だぜ!」
落ちていた木剣を手に取り柄の部分を腹にねじ込んだ。
「ごふっ………」
それで倒れるメア。
それを見て
「うわぁぁぁ!!!!よくも2人を!!!!」
襲いかかってくるミーナ
「しつこいんだよ」
それを同じようにして眠らせる。
静かになる庭園。
しかし次の瞬間
「うぉぉぉぉぉ!!すげぇ!!!!!!!!」
「勇者からの連戦を勝ち抜くなんて凄すぎないか?!!!!!あの聖者様!!!!!」
なんて歓声が湧いてきた。
イベント戦だから勝ったことに対しては嬉しくはないがしかしここまで盛り上がられると恥ずかしいな。
「………」
無言でそそくさとティア達の元に戻った。
「すごいじゃないですか!お兄ちゃん」
「すごくかっこよかったですよラグナ様!」
「凄かったぜ兄ちゃん!」
「我が弟子ながら良くやった。私は感動しているよ弟子」
のだが、こちらでも褒め殺しにされるのだった。
※
決闘の後俺は新しいスキルを試すことにした。
そのために王様に研究室を貸してもらうことにした。
ここなら色々あるだろうということで貸してもらったのだ。
室内はごちゃごちゃしておりよく分からないものばかりだ。
大錬金術師の心得というスキルについてまだ試していなかったことを思い出したのだ。
「流石だな。先程の戦いは本当に素晴らしかったぞラグナ」
隣にいる王座がずっとそんなことを言っている。
いい加減恥ずかしさはマシになってきていたがやはりそれでも少し恥ずかしさを感じるのだ。
そんな中それでも俺はスキルを試すことにした。
大錬金術師のスキルを発動する。
初回の説明が出てきた。
大錬金術師の心得━━━━貴方は大錬金術師になれる。錬金の全てを知り尽くしておりどんなものだって作成出来る。
しばらく待っていると次のウィンドウが出てきた。
【何を錬金しますか?】
ウィンドウが表示された。
「うーん、そうだなぁ」
1人呟いて次のウィンドウに目をやる。
━━━━━━━━
→ラストエリクサー
・エリクサー
・ラストポーション
・テント
etc
━━━━━━━━
色々と出てきたのでとりあえずラストエリクサーを選んでみた。
「必要なものポーション99個?!」
そんなにないんだが。
どうしようかと悩んでいたら
「ポーションがどうかしたのか?」
王様が聞いてきた。
「今錬金術のスキルを使ってるんだけどそれが必要らしくて」
「待っていろ」
そう言うと王様は従者に何か指示を出した。
しばらく待っていると
「お待たせしました!」
ポーション99個が届いた。
それを見ると
【作成条件が整いました】
となり、灰色になっていたラストエリクサーの項目が白色になった。
俺は知ってる。こうなったらこの項目を選べることを。
他のスキルだってそれは同じだから。
俺はスキルに指示された通りポーション99個を1つの瓶に注ぎ込んで魔力を流した。
すると
ゴキュゴキュピーン!
みたいな音が鳴って爆発した。
「げほっ!げほっ!」
吹き出た煙を吸った王様が咳き込んでいる。
「何だこれは」
「分からない」
とりあえず煙が晴れるまで待っているとそこには
「おー!!!!これは!!!!」
王様が目を輝かせる。
そこにはラストエリクサーが1本置かれてあったからだ。
「ポーションからラストエリクサーが出来るのか?!凄いな!!!!!!」
無事に出来たそれを俺は王様に渡す。
「いいのか?」
「別にいらないし」
俺は毎日のロクボガチャで腐るほど余らせてるからもう要らない。
「なら有難く貰おう」
そう言ってアイテムポーチにしまった王様。
「ん?何処か行くのか?」
俺が歩き出したのを見てかそう聞いてきた王様。
「少し用があって」
今までのはそのための実験のようなものだ。
むしろここからが本命と言って問題ない。




