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2話  戦う聖者は脳死最強範囲技ぶっぱマンです

 勇者パーティーを追放された俺は、故郷の田舎に戻るための揺れる馬車の中で夢を見た。

 俺は弱かった。


『ええぇぇぇ?!!!ラグナって【究極雷帝竜(アルティメットサンダードラゴン)】を片手で倒せないのか?』


 これは小さい頃に村の同年代の子供に言われた一言だった。

 俺はこいつを倒せなかった。


 その悔しさをバネにひたすら魔法を使い込んできた。

 その結果何とか12歳の頃に両手で倒せるようになった。


『えぇぇぇぇぇぇ?!!!ラグナ死者を蘇らせないのか?!だっさwお前それで聖者ってまじ?!w』


 これもまた村人に言われた言葉だった。

 しかも同年代の子供にだ。


 俺は聖者ならば皆が出来るはずの死者蘇生を出来なかった。

 何も出来なかった。


 悔しかった。

 そのため俺は───────ひたすら全ての練習をこなしてきた。


 ただ闇雲に。

 その結果やろうと思えばある程度なら死者も蘇生できるようになった。


『そうです!そこです!ぎゃぁぁぁぁぁあ!!!!!やられました!!!!!何で?!!!!』


 女神様の声で夢の世界から帰ってきた。


「何してるんだ?」

『ゲームですよ!ゲーム!GS4(ゴッドステーション4)ですよ!あー味方!何してるんですか!味方!何死んでんですか!!!!?!あなたのせいで負けますよ?!!!!ぎゃぁぁぁぁあ!!!!むかつきますぅぅぅ!!!!ファンメ送ります!!!!』


 げーむ?

 よく分からないが四角の箱と手にはよく分からないものを握っている女神様。


 天界には色々とあるらしいな。


『おい!ド戦犯!お前のせいで負けたんです!ばーかばーかあーほあーほ!です!はー頭パピーセットですねー。あなたの介護代請求しますので、えぇ、はい。アニョゾンのカードで大丈夫ですんで。え?払えない?!今から押しかけます!覚悟しててください!』


 よく分からないが子供地味た事してるのは分かった。


「その辺にしておけよ女神さん」

『きぃぃぃぃぃ!!!!!私のポイント50も減らされたんですけど?!怒るでしょ?!1回勝って20ちょいしか増えないんですよ?!私の2回の勝利がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』


 よく分からないが怒りすぎだと思う。


『屋根裏に住んでるダニの癖に私のポイント減らす権利なんてないんですよーだ!!!!』


 ギャーギャー猿みたいに騒ぎ出す女神様。

 女神ならもっと大人しくしてて欲しいところだが。


 そう思っていたら、ドン!


「な、なんだ?!」


 馬車全体が揺れた。


『ひぃぃいぃい!!!!今の振動でゲーム落ちました!!!またポイント50持ってかれますよぉぉぉぁぁ!!!!!ぎゃぁあぁぁああ!!!!ひぎやぁあぁぁぁ!!!!』


 ポイントとやらの心配をする前にこっちの心配をしろ。

 そう思いながら外に飛び出す。


「兄ちゃん、大丈夫か?!」


 額から血を流した、盗賊の見た目をした女の子が俺の前に立っていた。

 俺達をここまで連れてきてくれた子だ。


 黒色の髪に黒い瞳をもった可愛い少女。


「あぁ、問題ないが」

『何が問題ないですか?!問題ありまくりですけど?!私の100ポイントどうしてくれるつもりですか?!!!!にぎゃぁぁぁぁぁ!!!!』


 お前の声聞こえないし聞こえたところでどうしようもないと思う。


「そうか。良かった。だがな………」


 そう言って自分の右腕を見る少女。


「どうした?」

「囲まれちまった」


 そう言った少女の言葉を聞いてから周りを見た。

 ギャーギャー叫んでいる女神様が本当にうるさいな。


「デスウルフか」


 一応Sランクのモンスターだが。


「うん。20匹くらいはいるかな」

「1人で10体くらい倒せばいけるか?」

「ごめん。何言ってるか分からない。私は戦えないぜ兄ちゃん」


 口をあんぐり開けることしか出来なかった。

 まさか戦力に数えてはいけなかったのか。


 なら、仕方ないな。

 杖を抜くと同時にスキル賢者の心得を使用する。


 これを使用すると魔法の効果が上がるのだ。

 そして魔法を使うことにした。浮かび上がるウィンドウ。


【どの魔法を使いますか?】

・メテオ

・ホーリー

→アルテマ

・フレア


 アルテマを選ぶ。

 範囲攻撃の範囲、威力ともに最強魔法だ。


 するとドカンという爆発音がした後に。


「キュー………」


 ウルフ達が倒れた。

 今度はそれをポカーンと開いた口で見つめる少女。


「どうしたんだ?」

「ひ、ひえぇぇぇ!!!ゆ、許して!」


 そう言って俺に皮袋を突きつけてくる少女。


「何なんだ?これ」

「何なんだ?って?」

「俺は何も礼をされる事をしていない」


 自分の身を守った、それだけだ。

 その過程で少女も救ったかもしれないが別に礼をされるほどのものでもない。


「だから気にしないでくれ」

「い、いやそうじゃなくて………ごめん。兄ちゃん、兄ちゃんを運ぶためのお金なんだこれ」

「?」

「ぼったくったって言えば分かる?こんなに要らないんだよ兄ちゃん」

「あーそういうことか」


 騙されてたんだな俺は。


「だからその返す」


 そう言って皮袋を突きつけてくる少女。


「そんなに強いなら気付いてたんだろ?ぼったくりだって、でも何で言わなかったんだ?」

「………」


 なるほどなそういうことか。


「名前は何ていう?」

「シャ、シャル」

「シャルはぼったくりだって気付いてたんだな」

「え?」

「話は分かった。シャルの後ろにいるやつがシャルにぼったくれって指示していたわけだな。でも怖くて反対出来なかった。ってことか」


 ポカーンと口を開けているシャル。

 やはりそうだったか。


「本当はこういうことからは足を洗いたかったんだがな」


 抜き取った杖を納刀してから声をかける。


「今からそのシャルの後ろにいるやつの所に連れて行ってくれないか?俺がお前を解放しよう」

「兄ちゃんが死んじゃうよ」

「俺は死なない」


 そう言って馬車を直す。

 こんなことも村の人間ならば誰でもできることだ。


「な、何なんだ?!これは!」

「修復魔法だよ」


 そう言って馬車に乗り込む。


「頼むぜシャル。このまま予定を変更して先にそっちへ行こう」

「い、いいのか?」

「いいよ。金が足りないならもう少しだそう」

「い、いやそれは足りてる!」


 そう言うと少女は定位置に戻っていった。


「さ、行くぜ兄ちゃん」


 そう声をかけてくれたので頷くことにした。

 俺たちが向かうのは俺の故郷からそう遠くない場所のようだ。


 さぁ、これを最後の仕事にしたいものだな。

 もうこういう荒事からは足を洗いたいものだ。


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