19話 決闘とその結果
次の日俺は王様に呼び出されていた。
王室だ。
高そうなツボや高そうな剣が飾ってある部屋だった。
「なんなんだ?急に呼び出したりして」
「お前に頼みたいことがあってな」
そう口にする王様。
それと同時に
「王様?何なのですか急に呼び出して」
そう言って入ってきたのは勇者のイラだった。
それからそのパーティメンバー。
「何でここにいる?踊り子が」
「いや、呼び出されて」
俺だって来たくて来たわけじゃない。
正直な話家で寝ていたい。
「ラグナ」
マリーだけは笑顔で俺の方にやってきた。
「久しぶりだね」
「あぁ。元気だったか?」
「まぁまぁかな」
そう返事をくれた。
そうか。
「マリー!」
しかしマリーが俺と話しているのが気に食わないのかそうやって呼び戻すイラ。
「ごめん、ラグナ、また今度話そ」
そう言って彼女はイラの方に戻っていった。
『感じ悪いですねー相変わらず』
女神様が横で呟く。
「そうだな」
短く答えて王様に目をやった。
「用件は?」
「イラと模擬戦を行って欲しい」
突然そう言われて何と答えればいいのか分からなかった。
「え?」
「俺がこの踊り子と?」
それはイラも同じだったようで聞き返していた。
「おいおい、こんな踊り子と戦わせるなんて何を考えてるんですか?王様。秒で血祭りですよ」
数秒後笑いながらそう口にするイラ。
「ならば俺は代打で師匠に任せます」
そう言って師匠を両手で前に押し出す。
「ふ、ふん。また私の出番なのだな」
「いや、お前が出ろラグナ」
王様が玉座から立ち上がってそう俺に言ってきた。
「俺が?俺は戦えないけど」
俺は師匠のように強くないから後衛をやっているんだが。
「いや、お前が出ろ。俺はお前の力を見たい」
マジか。
そうなる流れなのね。
だがそういう流れなら仕方ないか。
「分かった」
「おいおい、王様。こんな踊り子と俺を戦わせるのか?圧勝に決まってるじゃねぇかよ」
「そうですよ!踊り子と勇者が戦って勝てるわけないですよ!」
「そうだ王様。ラグナが可哀想だから辞めてやって欲しい」
イラ、ミーナ、メアの3人がそれぞれそう言い放った。
誰もが俺に勝ち目がないと思っているらしい。
事実そうだろう。
俺はイラのパーティを追放された。
弱いからだ。
究極雷帝竜をイラは5秒で倒せるはずなのに俺は倒せない。
そんなに戦力差がある相手に勝てるとは俺も思えない。
でも
「いいぜ」
俺はその模擬戦を受けることにした。
「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!!!!」」」」
また悲鳴にも似た声が上がった。
※
王様に案内された俺達は模擬戦を行うために闘技場に案内された。
結構使われているのかあちこちに傷やヒビが入った闘技場。
真ん中に丸いフィールドがある。
そこで戦うのが俺とイラ。
「両者開始位置に付け!」
王様の指示を受けて俺達は互いに向かい合うように立った。
「懺悔の言葉は考えたか?踊り子」
聞いてくるイラ。
「不要だ」
「けっ!そうかよ」
俺はスキルを使うことにした。
剣聖のスキルだ。それから念の為剣の心得も発動させておく。
2重でスキルを使った状態の俺ならばイラとも互角に戦えると思う。
「それでは、試合開始!」
「くらえ!ウォーターボール!」
先に動いたのはイラだった。
イラが放つ水球。
それが俺を襲い俺の顔を覆った。
息が出来ない。
「はははは!!!苦しめよ!死ぬ前には解放してやるから安心しろよ!」
そう言っているイラ。確かに苦しい。
まだもつが何時までもこの状態ならばしんどい。
しかしこの水球結構脆いぞ。
手加減してくれているのか簡単に出られそうだ。
だが同時にあそこまでイラが言ったのだ出れば何か別の罠が発動するのかもしれない。
賢しい男だな。
2重に3重に罠を貼っている。
俺が調子に乗って出たところで次なる罠か………それならこのまま次の行動を考えた方がいいか。
そうして5分が経過した。
「王様、踊り子のやつ死んでねぇか?」
イラが王様にそう聞いたので俺は親指を立ててまだ生きているアピールをする事にした。
俺の体は情けない。
普段ならば五分も息を止めてられないが魔法で今は普段より酸素の消費を少なく済むようにしている。
「生きてるみたいだな」
「なら俺が終わらせてやるよ!」
ついに動かない俺に痺れを切らしたのか斬りかかってくるイラ。
今は冷静さを欠いているように思う。
それならば
「ぷはっ!」
俺は水球から顔を出して
「なにっ!」
何故か驚いているイラの背後に回った。
そうしながら使用スキルを変えるモンクに、だ。
すると敵の弱点が思うように見える。
「眠れ」
首にトンと手刀を食らわせて眠らせる。
適度な力で適度な箇所に手刀を下ろす。
スキル頼りの行動だったが
「かはっ………」
それで倒れるイラ。
一瞬の沈黙の後
「しょ、勝者!ラグナ!」
王様が審判を下した。
俺の勝ちが決定した瞬間だった。
そしてそれを見た奴らが
「う、嘘ですよ!こんなの!」
「そうだ!こんなの嘘だ!」
主に俺の代わりに入ったミーナと剣聖のメアが騒ぎ立てる。
「あ、有り得ませんよ!踊り子が勇者に勝利するなんて!」
「そ、そうだ!ありえない事だ!王様!模擬戦のやり直しを求める!」
現実を受け入れられない2人はただ騒ぐ。
しかし
「勝敗は決まった。これ以上のやり直しはなしだ」
短くそう言い放つ王様。
「で、でも有り得ないですよ!こんなの!」
「そうだ!王様!ただイラは調子が!」
「黙れ!」
まだやり直しを求める2人に対して厳しくそう言いきった王様。
「これにて終わりだ。これ以上下らない話をさせるな」
冷めた目で二人を見て王様は俺の方に歩いてきた。
「よくやってくれたなラグナ」
「1番はイラの油断だな。俺が水球の中でくたばらないのに焦って俺を斬る事だけを考えてくれていたから不意を付けた」
「なんとその歳でそこまで勝因を把握しているのか。恐るべき男だなお前」
王様と話している最中に。
「流石兄ちゃんだぜ!」
「そうですよね。流石ラグナ様です。一生ついて行きます♡」
シャルとシエルがそう言ってくれた。
「そうですよね。流石は私のお兄ちゃんですよね。やっぱり宇宙一ですね♡」
「ふっ………我が弟子ながらこの成長っぷりには本当に驚かされるな」
ティアも師匠も俺の勝利を称賛してくれている。
本当に有難い。
ただ、イラの不意を付いただけなのにここまで称賛してくれているなんて嬉しい話だ、とそう思った。




