13話 超レアカードを引いた
シーアサイド
「ただし、戦うのは師匠だ」
そう言われて私の頭の中は真っ白になった。
何で?!!!
どうして私なんだ?!
「………」
その意味を込めて我が弟子であり既に私を超え遥か高みにいるラグナに目をやった。
「こういうのは貴様が戦わなくては意味が無いだろう?」
それとなく自分で戦えと言ってみるが。
「俺戦えないし」
ニッコリと笑ってそう言われるだけだった。
「だからといってこんな少女に任せるのか?」
「師匠は師匠だしそもそも俺支援職だから戦うこと自体おかしい」
ぐぬぬ………確かに戦うと支援職とは………何なのかという話になってしまう。
それにここで恩を売っておけばラグナは私に逆らえないかもしれない。
「よし、いいよ」
「そうこなくっちゃ」
※
俺達は団長と共に王城の庭園まで来ていた。
綺麗な花が咲く庭園の真ん中に大き目の広場がある。
そこで手合わせするらしい。
「私に勝てれば王への謁見を許可しよう」
団長が俺たちに向かってそう言ってくる。
「逆にお前たちが負ければこの話は無かったことにしてくれ」
そう言って剣を抜く団長。
それに対して
「ふっ………」
「な、何?!」
「武器を持たないだと?!」
騎士達が叫び始めた。
そうだ。俺の師匠である大賢者シーアは何も持たずに腕を組んでいるだけなのだ。
「何をしている武器を抜け。切り刻んでしまうぞ?」
団長の脅しとも取れる言葉に。
「私を侮るなよ若造」
自分の方が明らかに若いのに立場のある人にそんなことを言い出す師匠。
流石だ。
「その減らず口どこまで持つか見ものだな」
団長も煽るように口にした。
「ふん。下らん。私に楯突いたことあの世で後悔するのだな」
「ここでその言葉撤回させてやろう」
そう言うと団長は剣を構える。
そして審判のギルドマスターが両者に確認を取り模擬戦スタート。
「切る!」
先に動いたのは騎士団団長。
彼は真っ直ぐに向かってきて師匠に剣を振り下ろした。
しかしそれを見て笑う師匠。
「遅いぞ若造」
それをスルッと避けて後ろに回り込む師匠。
「な、何?!」
「その程度の速度では私を捕まえることは出来んよ。まだ組織の犬の方が強い」
「せい!」
怒りからかそのまま剣を振る団長だがそれも当たらずに
「そこだ」
師匠が逆に懐に潜り込み。
胸を狙った掌打。
「ごはっ!」
鎧すら貫通する掌打のダメージを受けて倒れる団長。
「しょ、勝負あり!勝者シーア!」
戸惑うリンゼだったがそれでも勝敗を告げるのは流石ギルドマスターと言ったところか。
「シーアさん凄いですぅ!!!!」
ティアが師匠のところに走って抱きついていた。
「や、やめろ小娘!」
「凄いです!シーアさん!」
やめろと言われているのに聞かないティア。
それから
「流石だぜ兄ちゃん」
シャルは俺にそう言ってくれた。
「そうか?」
結局俺のやることなんてバフをかけるだけだ。
あんな動きができたのは俺のおかげではなく師匠が元から出来るからなのだ。
俺の功績なんてのはそれこそその動きがしやすいように後押しした、それだけだ。
「いえいえいえ今のはラグナ様のお陰だと思いますよ!」
それなのにシエルもそんなこと言ってくれる。
「そうか?」
「はい。絶対に今のはラグナ様のお陰もありますよ。あんな動き普通なら誰にもできませんよ!」
本当に優しい子だな。
俺の活躍だということにしてくれるなんて。
「さて」
俺は次はギルドマスターに目をやった。
「次はどうすればいい?」
正直やはり俺の願ったスローライフとはかけ離れている気もするが、何とかなるだろう。
そんな感じで突き進むだけだ。
「あ、あぁ」
少し反応に困ったような顔をするギルドマスター。
しかしそれでも口を開いた。
「王城に向かおう。そこに王が」
「待て、その必要は無い」
ギルドマスターがそう言ったあと新しい声が聞こえた。
そこに立っていたのは顔の整った男。
「王様!護衛も付けずに何を」
ギルドマスターが駆け寄ろうとするがそれを手で制する男。
どうやらこの男が王様らしい。
「貴様がラグナという男か?」
その男にそう聞かれた。
「話は聞いている。そこの団長を倒し四天王まで退ける程の腕を持つ聖者という話をな。しかし訳あって勇者とは相いれず別れることになった。実に興味深い」
そう言って俺に近付いてくる。
「話をしようではないか」
「いっちょ、よろしく」
そう答えるとはははと笑いだした王様。
「俺を相手に言葉遣いを変えないとは流石は英雄候補というだけはあるな?」
英雄候補?
「英雄候補って?」
「俺はお前を第2の勇者にしたいと思っている」
※
豪華な装飾のなされた道を歩く。
「すげぇ〜」
初めて踏み入る王城に胸がドキドキする。
見るもの触れるもの初めての物や事ばかり。
「くっ………組織の手がこんな所まで………そんなに私を殺したいのか?」
「はいこれでゴブリン1万匹目です〜。アクビ出ちゃうくらい余裕でした〜」
約2名いつも通りの奴らがいるが俺にとっては凄い新鮮なところだった。
「な、なぁ兄ちゃん」
そんな時ちょいちょいと俺の袖を引っ張ってきたシャル。
「どうしたんだ?」
「き、緊張する………」
ガチガチになっているシャル。
それとは別に
「広いですねーラグナ様ー」
シエルは意外にもいつも通りだった。
もっと小動物みたいな奴かと思っていたらそうでも無いらしい。
『ぷーくすくす。庶民共はこんなしょぼい王城で大はしゃぎですか』
また1人ここにも平常運転な女神がいた。
『私の暮らす神の城の方がすごいですもんねーくすくす。庶民共とは違うんですモーン』
とは言っているが妄想にしか思えない。
この女神様はいつも俺の隣にいるからだ。
『でもこの体も退屈ですねー。何にも触れないし悪戯も出来まちぇ〜ん』
お前は一生そのままでいろ。実態を持てば要らないことをするだろう。
『ふんふんふーん。ダンシング女神ちゃんいっときましょうかね〜』
そう言って何処からかガチャボックスを取りだした女神様。
忘れないうちにガチャに手を突っ込むことにした。
『お、おおうおうおうおうおう?!!!!』
「こ、これは!」
思わず叫んでしまった。
『大当たりじゃないですか?!初めての入手じゃないですか?!確率0,000000000001%くらいですよ!』
俺が手に入れたのは大賢者のスキルカードだった。
早速使った。
すると
【大賢者の心得Lv1】とステータス欄に新しく追加された。
「1人で何を叫んでるんだ?」
その時王様が振り返ってそう聞いてきたが素直に答えると説明が面倒だ。
だがこれは間違いなく最強の一角のカードだ。
喜ばずにはいられない。
そう思った時
「ついたぞ、ここだ」
俺たちは会議室まで来ていた。




