10話 聖者は王都に戻ることを勧められる
「すまないな。ラグナ、出来れば王都に戻って欲しい」
せっかくスローライフを送るために田舎の村に戻ってきたというのにギルドマスターにそう言われた。
嘘だろ?
「どうして?」
「今の勇者は色々問題があってな。腕は立つが問題がある」
「そうなのか?」
「君を少し見て思ったが君、お人好しだよな?結構」
「そうか?俺はそうじゃないと思うけどなぁ」
俺は今までに困っていた人々を助けたことはあるがお人好しでは無い気がする。
だって俺に当たって骨が折れたという兄ちゃんには金貨5枚要求されたのに1枚しか渡さなかったし、俺俺と手紙を送ってきた友達には金貨1枚しかあげなかったし、全然優しくないしお人好しでもないと思うが。
「まぁいいんだけど。とにかく王都に戻ってきてはくれないか?私は君を王に紹介したいんだ」
「俺は弱いぞ?」
「え?」
あんぐり口を開く彼女。
「俺は究極雷帝竜を1日かけないと倒せないし師匠のように組織とも戦っていないし、俺は支援職しか出来ない。弱いぞ?王になんて紹介しないで欲しいんだが。恐れ多い」
「いや、でも君をここで放置しておくのも勿体ない」
そう言われても恥ずかしいものは恥ずかしいのだが。
「そうやって俺の事を買ってくれるのは嬉しいけど俺に実力なんてない」
そう言って俺は立ち去ろうとしたのだが
「実はもう迎えを呼んでいるんだ、ということで来てもらうぞ」
「まじか」
結局俺の王都行きは免れないらしい。
※
『アルスカガチャ引きますか?』
迎えの馬車に乗った俺にまず話しかけてきたのは女神様だった。
「そうだな。引いとくか、そりゃ!」
『うーん残念賞ですね』
「ほんとだ、外れだな。ラストエリクサーかー、いらねぇや」
『次の挑戦をお待ちしています〜』
何とか言いながらラストエリクサーをポーチにしまった。
「ラストエリクサーが外れってどんなガチャ引いてるんだ………」
対面に座るギルドマスターが呆れたように口を開いた。
俺のスキルと女神様については既に話してある。
「うーん。分からないけどハズレだよ。当たり枠はスキルカード」
スキルカードは俺じゃなくても使えるし効果は永続だ。
だから味方を回復させたり強化したりする聖者としてこれ以上の当たりは無いわけだ。
「スキルカードが出るのか?!」
「うん。ほら」
俺は何枚かアイテムポーチから取り出した。
「こっちは侍、こっちは青魔道士のスキルカード………スキルカードを何故こんなに?」
「何故こんなにと言われても持っているからな」
ガチャから沢山出てくるから不要な分は貯めるようにしてある。
そう説明したら
「きゃーーーーー!!!!!!」
「ドラゴンだ!!!!!」
馬車の外から悲鳴が聞こえてきた。
隣にいた師匠を連れて急いで飛び出す。
聞いてしまったのなら助けなくてはいけないからな。
目の前には少女が4人居た。
そしてそのすぐ側には巨大なドラゴン。
「あ、あのだな、そのだな。ラグナ」
何故かプルプル震えながら俺の方を見てくる師匠。
「どうしたんだ?師匠」
「お前こそどうしたんだ私をこんな所に連れ出して私は女だぞ?女をドラゴンの前に連れ出すのか?」
プルプル震えている師匠。
どうしたのだろう。
武者震いというやつかな?師匠でもするんだな。
なるほど。ドラゴンという強敵と戦えることによって興奮していてプルプル震えているんだな。
分かった。
「俺は支援するから師匠よろしく頼むよ!」
「………任された」
仁王立ちで立つ師匠の背中が大きく見える。
それにしても何故こんなところにドラゴンが?
こんなところにドラゴンがいるわけがないと思うのだが。
※
シーア視点
どどどどどどどど、どうすれば!!!!!
何が任されただ!
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!!!
死んじゃうーーーーーー!!!!!!!
私のステータスオール1でジョブニートなのを知らないのか?!このバカタレは!!!
「師匠どうしたの?早くしないとあの子たちが!」
そんなこと言うならお前が行けぇぇぇ!!!そう言いたいのにダメだ
「やれやれ………あまり力は使いたくなかったのだが」
そんな力ないのに何を言ってるんだ私は!!!!!
「とりあえず強化しといたよ師匠!あとは任せた!!!」
「任せよ」
何が任せよだ!ばか!!!!
しかし
「ふぅ………」
深呼吸1つ。
もうどうにでもなれ。
そんなことを思いながら魔法を使う。
「星屑は1つ流れ落ちる。それは私があの時に流した涙と同じように」
詠唱を始める。
「星屑は更に流れ続ける。それはあの時のように私の憎むべき相手に向けて。受けるがいい!!!───裁きの隕石!!!!!!」
瞬間ドカーン!!!!!
メテオが1つ降り注いで
「ギャァァァア!!!!!」
ドラゴンに直撃した。
ポカーンと口を開ける。
「流石だ師匠!」
え?
何今の私がやったのか?!まさか本当に隠された力があったのか?!
そう思いステータスを見て見た。
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【名前】シーア
【ジョブ】ニート
【レベル】100
【攻撃力】9999
【体力】9999
【防御力】9999
【素早さ】9999
【魔力】9999
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となっていた。
やはり私は選ばれし者だったようだな。
ふはははははは!!!!!!!
いや、違うな。
私はただのニートだ。
流石なのは私ではなくラグナの方だろう。
私のオール1のステータスをやけくそのようにここまで引き上げるなんて流石だ、としか言いようがない。
それにしても犬の真似をし出した時はなんなのか意味が分からなかったがこれが奴流の魔法の使い方というやつなのか。勉強になった。
世界には色んな魔法の使い方があるらしいな。
だがしかしそんなラグナの調整したステータスを使いこなした私も中々ではないか?
「やはり私には隠れた力があったか」
「どうしたんだ師匠?」
「なんでもない。巻き込まれたくないなら私にはこれ以上関わらないことだな、ふっ」
「関わるなって、師匠友達いないんだからそんな事言うなよ。しかもさみしがり屋のくせに。寂しさで死んでしまわない?」
中々にえぐい所を付いてくる弟子だった。




