終わりの始まり?
摩天楼の光が消えて、今までその極光で見えていなかった星々は砕けた金剛石のように、漆黒の帳の中、煌めいている。
普段の喧騒も、全て嘘のように消えた夜。全身の精神が研ぎ澄まされ、何もかもが今生の宝の様に見える中秋の日。
風が吹き荒ぶ、一際高いビルに立っていた俺たちは天の帳が地上に堕ち、神秘的な光景に包まれた。不思議なもんだ。上にあるはずのモノが自分たちの目の前に現れて優雅に舞っているんだから。
夜の帷の中で瞬き煌めく星の先に、穏やかな日輪からの光を放つ天上の楽園を見た。水晶の様に透明で銀の如き煌めく水が湧く泉、その周りを妖精が遊ぶように白金の鱗粉を撒く虹色の蝶、祝福された極彩色の可憐な花々。黄金のリンゴやたわわに実った黄桃、そして彩光を放つ黄緑の葡萄を枝に実を付けた老年の大木たち。大理石よりも遥かに、素晴らしい色を誇るとにかく白く美しい宮殿と彫刻たち。それは、ミケランジェロのダビデ像や古代のラオコーン像やらの人類を代表とする美術品なんかよりも、遥かに素晴らしく、精巧に緻密に作られている。未熟者の俺の言葉では言い表せないほど秀麗だ。
俺も、この世界で暮らしたい。
だけどそれは、人間の義に反する。だからこうして俺たちは奴の計画を粉みじんにしようとして、この場に立っている。俺たちは、俺たちで自分を決める。奴らの勝手にさせない。何が運命だ、何が聖なる約束だ、俺たちはすべてを踏破する。
そう、いずれ神に至るために。
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