夢想終末 ~また、巡り会う~
西暦2385年4月、世界の景色は一変した。
人類滅亡などという比喩すら生温く感じる程の大災害が起き、世界の人口は激減した。
自然と名の付くモノは全て消失し、生物と名の付くモノは全て衰退して逝った。人類を含め、全てが衰退してしまった世界となった中で、私は途方も無い探し物をしていた。
それはきっと、決して見つける事の出来ない物で。もし見つければ私は、本当の意味で救われると思う。根拠は無いにしても、それでもそんな確証があるのだ。ただの勘でしかない妄想を抱きながら、私はまた歩を進める。
「……」
その行動に言葉は要らず、ただ真っ直ぐに前をだけを見て進み続ける。例えどんなにボロボロに傷つけられようとも、例えどんなにズタズタに引き裂かれようとも……私は進み続ける。
――進み続けなくてはならない。
この絶望とも云われている世界で、私はこれからも歩みを止める事は無いだろう。これまでも、そしてこれからも……ずっと、ずっと。
◇
ピッ……ピッ……ピッ……。
静まった病室の中で、無音にも等しい彼女の寝息を聞きながら窓の外を眺める。
時刻は深夜を回っているにもかかわらず、その景色は何も無いに等しい。いや、何も無くなったと言った方が正しいのだろう。だがあの大災害が起きた日の中、この病院だけが半壊だけで済んだという奇跡に感謝しなくてはならない。
これで彼女が無事であれば、この上ない幸福感に満たされるだろう。しかし、彼女の様子は危険な状態となっていて、今夜の山を越えなければ目覚める事は無いと思った方が良いと医者に宣告されてしまっている。
きっと彼女は今、果てしない荒野の中を彷徨っているはずだ、それは虚無という比喩すら生温い空間で寂しげな空間なはずだ。
そんな事を思いながら、彼女の手を握って目を瞑るのだった。そろそろ身体的にも精神的にも、辛いものがある。だから、先に逝って待っているとしよう。その前に挨拶をしないといけない。
ただ一言、それだけを呟いて――
「おやすみ……」
――明日へは、辿り着けなかった。
「逝こう?一緒に……」
「うん。君となら、僕も嬉しいよ」
◇
ピッ……ピッ……ピーーー……。
果てしない廃墟となった世界の中で、私は探し物を見つけたのであった。
ご拝読、ありがとうございました。
この作品や短編などですが、これからこんな感じの作品が月に一回は投稿されると思います。
なので、もし目に入って気になった時には宜しくお願いします。
※「月に一回」:これはサークル内で決められました。
本日は、貴重な読者様の時間を割いて頂き、有り難う御座いました。
他の作品共々、今後とも宜しくお願い致します。