激闘
いい加減しびれを切らしたミノタウロスがソウタに襲いかかる。降り下ろされる斧の速さは、先ほどの非ではない。
「起動軸 盾」
ソウタは一度ミノタウロスの斧を止めた物を再び展開した。ミノタウロスの斧は、またしても止められる。
その間に骨騎士は、馬を巧く操りソウタの背後に回り込む。一気に速度を上げソウタを殺しにいく。
しかし、ソウタの5m程前で地面が爆発し馬が宙に浮く。骨騎士は、なぜ自分が浮いているのかわかっていない。
「言っただろ、ここからはチートのお披露目だって。その辺はもう地雷で一杯だぞ」
やがて、骨騎士と馬は地面に叩きつけられた。馬には、もう足がない。それを確認した骨騎士は、剣と少し大きめの盾を構える。骨騎士は、横に剣を振った。剣から斬撃が放たれソウタが用意した地雷が全て爆発する。そのまま骨騎士はソウタに向かって走りだす。
「起動軸 仮想弾丸」
ソウタは、ミノタウロスにつきだした手とは逆の手を下にかざす。すると、光の球体が次々に出現する。その数はどんどん増え数十にもなった。
「発射」
骨騎士に手を向ける。光の球体は骨騎士に向かって飛んでいく。それを剣で全て斬り落とそうとするが、間に合わず何発か命中する。
その間にミノタウロスに張っていた盾を解除する。ミノタウロスはここぞとばかりに攻撃を仕掛けてくる。だが、ソウタはその攻撃を紙一重で避ける。ミノタウロスが斧を振り上げたタイミングでソウタは反撃にでた。
「起動軸 片手剣」
降り下ろされた斧を剣で受け流す。そこに首に一撃、背後をとったところで背中に一太刀あびせる。
「グワァァ !」
悲鳴をあげながらミノタウロスはソウタの方に向くがもう遅かった。すでにミノタウロスの周りを囲むように仮想弾丸が展開されていた。
「終わりだ」
次の瞬間、弾丸が一斉にミノタウロスを襲う。爆発による土煙でミノタウロスの姿は隠れる。土煙が風で流されて姿が見えた時には、ボロボロで立っているのがフラフラしている。やがて、力尽きその場に音をたて倒れた。
突如、草むらから骨騎士が飛び出してくる。ソウタは咄嗟のことで反応が遅れた。もう剣は目の前まで迫っていた。
「まずい !」
急いで盾を出そうとするが間に合わない。
「フレイム」
遠くから一度だけ見た火の玉が骨騎士に当たる。空中にいた骨騎士は、体勢を崩し地面に落ち受け身をとる。
「何で戻ってきたんですか ?」
そこには、逃げたはずのカレルとユーティリアがいた。
「やはり、君のことが気になってな。この子が戻ろうと五月蝿くて戻ってきたと言うわけだ。他のメンバーならもう森を抜けているだろう」
「そうですか、でも助かりました。危うく死ぬところでしたよ」
ソウタは冗談混じりで笑いながら言うが、ユーティリアは少しも笑っていない。
「少年、その子がどれだけ君のことを心配したのかわかっていないな。感謝するなら、その子に礼を言うんだな」
カレルは杖を構え臨戦態勢をとる。
「ありがとう、ユーティリア」
「ちゃんとした言葉は帰ってから聞かせて。今は、あいつを倒しましょう。サポートは任せて」
ユーティリアは、にっこりと微笑む。それを見てソウタは緊張が少しほぐれた。
「カレルさんもサポートに回って下さい。あいつの相手は、俺がします。起動軸 盾剣」
ソウタの手に現れたのは、盾を鞘の代わりにした剣だった。盾から剣を抜く。2人はお互いに睨みあう。先に動いたのはソウタだった。
盾を構えながら骨騎士に突撃する。骨騎士はソウタを盾ごと吹き飛ばすかの勢いで剣を叩きつける。しかし、ソウタはその攻撃をよんでいたのかのように避ける。骨騎士は降り下ろした剣をソウタを追撃する。それもソウタはしゃがんで避けた。目の前からソウタが消え骨騎士が見えたのは詠唱を唱えるカレルの姿だった。
「撃ち抜け ボルトスピア」
カレルの杖から雷の槍が5本出現し、骨騎士に向け放たれる。完全に油断していた骨騎士に全ての槍が命中する。1本の槍が左手を撃ち抜き骨騎士の左手がとれる。骨騎士はカレルに狙いをつけるがソウタの存在をすっかり忘れていた。
「こっちも見ろよ !」
死角からの攻撃で反応が出来ない。そう考えていたソウタだったが、魔王の幹部の名は伊達ではなかった。
完全に死角からの攻撃を残った右手の剣で受け止める。そのままソウタの剣は弾かれる。
「うっ !」
吹き飛ばされたソウタは体勢を崩して転がる。その間に骨騎士は落ちていた自分の左手を拾う。そのまま肩にくっつける。何度か左手が動くか確認して盾を持ち直す。
「ははっ、くっつくとかありかよ」
ソウタは起き上がり息を整える。骨騎士は一気にソウタとの距離を詰める。先ほどまでとは比べ物にならない速度で剣を操る。ソウタは防ぐだけで限界だった。少しずつ骨騎士の剣が当たり始める。
「少年 !伏せろ !」
カレルの声が聞こえなんとか剣を弾き急いで伏せる。すぐに頭上を火炎球が通る。だが、火炎球はあっさり盾で受け止められる。骨騎士はソウタを無視し、カレルを攻撃しに行く。
「ここまでか」
カレルはうっすら笑っていた。骨騎士は自分の剣を思い切りカレルに投げる。
「起動軸 !盾 !」
カレルの前にソウタの盾が現れ間一髪剣を阻止した。骨騎士はソウタの方を向く。
「おいおい、そっちは殺らせないぞ。お前の相手は俺だろうが」
骨騎士はソウタを強敵として再認識した。