3.腹が減っては戦は出来ぬ
男がいた。
お世辞でも広いとは言えない倉庫のような場所で
男は何かをしていた。
何をしているか分からなかったのは自己の知識の
中に男がしている行為を当てはめる言葉が無かったのだ。
何か光る玉?に力を念じているようだ。
集中していて扉が開く音がしたのにもかかわらず
こちらに視線を向ける様子がない。
このままでは埒が明かないのでこちらから声を掛ける事にした。
「···すいません。少しお話を聞きたいのですが。」
男はようやく視線をこちらに向けた。
容姿は黒髪で日本にいても違和感はなさそうに見えた。
着ている服を除けばの話だが。
大広間で見た大臣の服とそれほどかわりがなかったので、そこそこの役職とみえる。
まじまじと見つめていると彼の方から話掛けてきた。
「あっ、申し訳ございません。気が付くのに時間がかかってしまいました。迎えの者が参るはずだったのですが。どうされたのでしょうか?」
どうやらあちらは私の事を知っているようだ。
詳しく聞いてみよう。
「起きてしばらく経っても誰も来なかったので、
廊下に出たら光が見えたので、こちらに来ました。貴方はだれですか?」
「私はトールと申します。召喚者殿は皆食事室に集まる手筈となっておりますので、まずはそちらに向かいましょう。そこで説明もさせていただきます。お腹も減っておられるでしょう?」
···召喚者、不吉な言葉を聞いた気がする。
しかし、ここで二の足を踏んでいては先に進めない。
男の提案に乗り食事室に向かう事にした。