14.カエサルとの出会い※英里視点※
2018.2.8修正
「トール、お前もう少しで死んでいたぞ?」
自分の手に激しい痺れが広がり、気が付くと私の槍は手から離れていた。
いつの間にか私とトールの間に男が立っている。
細身の身体に引き締まった筋肉。
インナーの様な服を着て、腕と腰と足に必要最低限の鎧を纏っている。
まるで物語の騎士がそのまま飛び出てきたかの様な整った顔をしている。
金の髪がその感情に拍車をかけていた。
その男の手には何の変哲も無さそうな剣が握られていた。
いつ近づかれたのかも分からなかった。
相当の手練れかもしれない。
「···カエサル様、なぜこちらに入らしたのですか。」
細身の男、カエサルはキースの方を向き直し、満面の笑みで問いに答えた。
「それは勿論、アホな部下が早ちとりした挙げ句、大切な召喚者を殺そうとしていると聞いたからな。止めに来たんだ。」
つまり、この状況は王国側の総意ではないという事だろうか。
「それにしてもその格好···まさか貴様返り討ちにあったのか!?
なんとも珍妙な格好よな!無様だな!フハハハハハハハハ!」
キースは嫌味を返す事なく歯を食い縛り耐えている。
やはり立場はカエサルの方が上のようだ。
「カエサルさん、ちょっといいですの?」
カエサルがこちらに視線を向けた。
ゆらりと向けられた視線は友好ではなく警戒。
慎重に交渉しなければ。
「カエサルさん、とはまるで初対面みたいな口振りだな。
一度会って話をしたではないか。
いや、話というよりはこちらが一方的に話しかけた、と言った方が正しいか。」
会った事がある?
こちらはそんな覚えが···
「あ!?」
思い出した。
初めてこの世界に来たときの大広間。
あそこで王の横に控えていた人だ。
王の自己紹介の次に話していたが意識が朦朧としていたせいか何を話していたか覚えていない。
「そうか、皆初めての世界移動で疲れていたのか。
それで話を覚えていろという事がおかしいか。
ならば改めて自己紹介しよう!
私の名はカエサル。
この王国の筆頭騎士だ!」
ふむふむ、なるほど。
そうか筆頭騎士か、道理でキースよりも偉い訳だ。
ん?筆頭騎士?筆頭···
「も、もしかして貴方は···」
私の驚いている顔を見てカエサルは悪戯が成功した少年の様に笑った。
「そうだ!私がこの国で一番強い騎士だ!」