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ツキビト  作者: 小島もりたか
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序章

 彼は突然現れた。


 彼が初めて現れて予言したことは、世界でも一部の人間しか知らない。

 彼が初めて予言したことは、突拍子もないことだった。


「半年後から2年間に渡り、月に数億もの隕石が降る」


 彼はそう、世界的に有名な宇宙開発センターに予言した。

 宇宙開発センターの者は驚いた。

 何故ならその予測は、その宇宙開発センターがまだ発表していない機密事項だったからだ。


 宇宙開発センターは当初、機密情報の流出を疑ったがしばらくしてその疑いは消えた。

 彼は更に突拍子もないことを予言したからだ。



「月と地球の距離が千分の一まで縮む」


「地球から、五分の一の水分、四分の一の大気が月に移動する」


「月に緑が芽生え、約三百種の飛行可能な生物が月に移動する」


「生物の寿命は最大三十年までになり、環境適応のための進化が進む」



 彼はこの他にも数多くの予言をしたが、その全てを見事に的中させた。


 ここで説明しなくてはいけないことは、彼はこれらの予言の前に忠告をしていたということだ。



 彼は、


「地球は約150年後、生物が住めなくなる環境になる。それまでに速やかに月に移住する手配をしなければならない」


 と、忠告していた。


 予言はそれを実行させるためのものにすぎなかったのだ。


 人類はとうとう彼の忠告を受け入れた。


 急激な環境の変化による間引き、宗教・民族間による幾度重なる戦争で人類の人口は一時期指数関数的に減少した。

 移住までに滅亡することまで考えられたが、彼の同志達の導きもあり、なんとか防ぐことに成功した。



 そして彼からの忠告があってから百四十九年後、無事に全人類やその他数多くの種を月に移住させることに成功した。

 移住できた人類はおよそ十万人だった。


 月へ移住して初めて、言語、文化、宗教が統一され、地球人として一つの纏まりをみせたのはかなり皮肉な話だった。



 そしてその翌年、

 悪魔の様な黒い塊が赤い尾を残しながら地球に衝突した。


 月の十分の一程度の大きさの小惑星だった。


 目と鼻の先で大事故が起こったのに、月に全く被害がなかったのは、奇跡と言っていいだろう。



 そうして、かつて宇宙の宝石とまで言われていた姿は損なわれ、今や地球は錆び、欠けてしまった鉄球に成り果てた。


 過去、多くの人類が眺めることを夢見た地球の姿はもうそこにはなかった。

 人類は悲しみに言葉もなく、涙を流した。


 もう自分たちの帰るべき故郷はなくなってしまったのだ……と。



 地球は月に、月は地球になった。



 しかし、「彼」は、百七十年を越える人生を終えるときに、

 人類に希望とも呼ぶべき予言を残している。


「地球は約二千五百年後、生物の棲むことができる環境に戻る」

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