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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
成長した子供達のそれぞれの日々(*´-`)
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月の欠片……星の瞬き。

 きょとーん?


 何故そう愛くるしい瞳で自分を見るのか?

 きつい瞳をとてもとても気にしている玉蘭ぎょくらんは、年下の恋人を見る。

 手を握り、隣に並ぶきょうは、にこっと笑う。


「可愛いなぁ……って思って。いっつも可愛い」

「はぁぁ!?」


 喬の父、孔明こうめいに瓜二つだが、きりっとした……と言うよりも、死に物狂いで戦い抜いてきた地獄を知っている瞳よりも優しく甘い瞳は丸く、可愛い母の琉璃りゅうりに似ている。

 その可愛い恋人の一言に、


「な、何でよ?私は、かわいくな……」

「何で?可愛いよ?玉蘭はとてもとっても可愛いもん」


 えへへ……っと笑うその顔に堕ちている……。


 毎回毎回、義兄弟を次々にたらしこむのか、知りたい。

 あの隙のないとうですら、茫然とする……これはすごいと本気で思う。

 しかし、喬は、将来自分の夫である。


「喬くんはとっても、かっこいいわよ。大好き!!」


と抱きついて、舌を出した。

 周囲に、特に双子の弟に向けて……と、今度は玉蘭が目を丸くする。


「じゅ、じゅん!?どうしたの!?それ!!」

「な、何!?」

「変よ!!変!!目付き悪いわ!!それに本性丸出し!!うっわぁ~!!最悪!!それ私より悪くない?酷いわ!!御母様や御父様が嘆くわよ!!」


 その一言に、循は唖然とし、喬は、


「ど、どうしたの!?玉蘭?兄上と喧嘩駄目だよ~!?」

「違う違う」


笑いをこらえていた孔明こうめい公祐こうゆうが吹き出した。


「あのね?喬?玉蘭は自分が見えていないんだよ?」

「私の娘は皆こんなに可愛いのに、息子だけ……誰に何で似たのでしょう?」


 嘘泣きをする義父に、循は顔をひきつらせつつ、


「目の前の父上ですよ。見てて解りませんか?」

「さーて、孔明どの。どうします?言われていますよ?」


振られた孔明は、えぇっとした顔を作り、


「それは父ですが、いえ、私は喬に……喬は瓜二つと言われるだけ私に似てますけど……」


その言葉に、項垂れるのは、統である。

 薄れてしまった故郷、家族……そして……記憶……。

 唇を噛んでいたのを、


「統ちゃん?駄目でしょう?お祖父様に似た綺麗なお顔が台無しよ?」


と言う母、琉璃りゅうりの優しい声に、公祐が、


「そうですね。統は、子竜しりゅうどのに似ているね。体つきはしなやかで、顔立ちもそうだけれど、本当のところ、黒いですよ~」

「……はぁ?」


顔をあげた統に、公祐は珍しく嬉しそうに笑う。


「そうそう。その顔。その一瞬気を抜いてそのあと甘く笑うんですよ。あれが本当にたらしこむ、ですね」

「た、たらしこむ……って」


 想像していた祖父はどこにいる?


「私より黒かったですよ~!!何せ、戦乱をあの長身でも筋肉は無駄なくそれで痩せていたのに、正直、益徳えきとくどのよりも馬鹿だとあなどっていたらあの声で……」

「そうそうあれだあれ」


 益徳も遠い目をする。


「俺はぼこぼこにされたぜ、何回やっても勝てねぇ!!一回やったらあの髭は無視だったが、髭よりも強い人だった。その上、公祐兄貴の破壊力以上で落としていたが……無邪気にたらす喬と、どっちがすげぇのかと思うぜ……」

「それにこうは似ていますよ」


 公祐は、孔明から視線をそらす。


「な、何ですか!?それは?」


 益徳があっさり告げる。


「琉璃をあやしてオタオタしてるのと、あやし疲れて寝てたときの顔、素だなあれ」

「そうそう、それはそれは面白くて、笑うのをこらえているのに気がついたあの方から逃げるのに、憲和けんわを餌に逃げました」

「あれは……ひでぇと思うぜ?」


 顔をひきつらせる益徳に、


「良いんですよ。憲和の蒼白な顔が面白かったので」


と言い切った公祐を見、循を見る兄弟に、


「大丈夫!!統以外の二人を出して逃げるよ。私!!」

「えっ!!どうしよう!!ぼ、僕トロくさくて、置いていかれたら……」


ふにゃっと、悲しげに歪む喬の言葉に、循は慌てて、


「兄上と広だよ!!喬は大丈夫!!私と……」

「違うでしょう?私が一緒よ?ね?」


と、笑った顔に循が今度は首をかしげる。


 あれ?

 玉蘭はあんなに丸い目で優しく笑っていた?

 あの瞳は……母の瞳に似ている?

 何で……?


 考え込む息子に、今度こそ公祐は笑いだし、


「あはははは……!!あれ、みてください!!面白いよりも、あれ、なんです?気が抜けて……」

「兄貴も、そうだろ?」

「えっ?」


公祐は益徳を見つめる。


「わかんねぇの?兄貴はあぁ言う顔で、奥方どのや子供たちをみているだろう?」






「ですって、酷いと思いません?家の循が!!私に似ているなんて!!」


 どうしましょうか!!


 嘆きつつ訴える夫に、木蘭もくらんはコロコロ笑う。


『年寄りですから、すみません』


と笑ったり、公私こうしは全く違う姿で、おおやけでは隙を見せないように微笑んでいるがその眼差しは鋭く、わたくしでは、甘く甘くとろけそうな程子供たちだけでなく自分まで甘やかせて、まさしくデレデレ亭主である。


 しかし今日ほど……。


「も、木蘭!?ど、どうして笑うんですか!?私たちの息子が、この父に似たら困るって!!」

「貴方は、その言葉にしては、とってもとっても嬉しそうですわ」

「えっ!?そんなわけはありませんよ~!!嬉しいなんて、私に似たら……」


 常に隙を見せないのに、ふわふわとした甘い甘い顔をしている夫。


 彼は、他の娘たちよりも、双子を自分の子として本当に甘やかして育てた。

 哀しい傷ついた眼差しをしていた双子は本当に父を慕い、甘えるようになった。

 しかし、双子には遠慮があったのか、特に循は傷つきやすい子供で、優しく言い聞かせて、話を聞き入っていた父を本当の父と思うようになり、笑うようになった。

 その上、夫の趣味が書簡を読むのではなく、家族について日々、どれ程かわいいか、どんなところが気になったからもっと父として子供たちに向き合わなければ!!と決意表明を書いている……日々の日課を嬉しそうに読み返すのにはビックリし、そして、笑って泣いた……。


 こんな優しい夫に伝えられる言葉はたくさんある。

 でも、まずはひとつ……。

 木蘭は夫の耳元に囁いた。


「『貴方に似たから、私たちの子供たちは可愛いんですよ?』貴方?」


 いつもいつも囁いてくれる言葉を返した木蘭の甘い声に、公祐は真っ赤にして顔を覆った。


「……ま、また、貴方に敵いませんでした……」

「あら?旦那様は強いのに……どうしましょう?私は武器は持てませんのに!!」


 こちらは本当に素の妻に参った公祐だった。

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