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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
進む道は楽なものではないと誰もが知っているのです。
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運命は出会いをもたらすものです。

 大人……男たちは、奥でお酒を酌み交わすが、女性や子供たちは共に喋ったり食事をしたりする。


「ねぇ?亮花(リィアンファ)!」

「はい!」


 父親に贈られたかんざしをつけて、広(こう)に近づく。


「ねぇねぇ、亮花。はい」

「こら!広。好き嫌いしない!」


 統(とう)はたしなめる。


「違うよ。ちゃんと食べるよ!兄ちゃん。好き嫌いなんかしたら、父さんに怒られる」

「それなら良し」

「……最近、兄ちゃんがますます口うるさくなってきた……」


 広はぼやく。

 その横で、喬(きょう)はもぐもぐと美味しそうに食べている。


「喬……は美味しそうに食べるんだね」

「うん。お父さんとお母さんに小さい頃から言われてきたからね。それに、幾つも戦場を点々としてきたから、大事な食事は綺麗に食べる。楽しく美味しく食べるんだよ。でも、お父さんとお母さんは料理上手なのに、僕は下手で……狩もろくに出来なくて……食べるしか出来なくて……」

「で、でも、美味しいよって食べてくれる方が、父さんもお母さんも嬉しいんじゃないかな。俺……向こうで食べさせて貰った料理が美味しくて好き」

「へぇ、どんな料理?」


 循(じゅん)が声をかける。


「えっと、小麦の粉を練って、広げた中に、野草や肉を味付けした餡を包んで、お湯でグラグラって。小麦がもちもちしてて、美味しかった」

「あぁ。張仲景(ちょうちゅうけい)老師の書簡の料理だよ」


 近くで兄の子供たちの様子を見ていた均(きん)が笑う。


「大物を仕留めたから、それに時間もあって作ったんだよ、ね?」

「えー良いなぁ。俺も食べたい」


 広がブーブーと言うが、統が、


「じゃぁ、広の怪我が治ったら、循兄さんと狩りに行っといで。私とお兄ちゃんはそれ以外の準備しておくから」

「ず、るーっ!兄ちゃん!喬兄ちゃんと一緒ばっかじゃないか!それに、循兄ちゃんと行くのは嫌だ!それなら、天藍兄ちゃんと行く!」

「へぇ〜?広。兄に向かってよく言った」

「兄ちゃん、すぐ逃げるじゃん!結局俺1人で退治するんだからな!」

「広が大物を狙いすぎるんだ!」


循と広が言い争う。

 オロオロと、天藍は、


「俺でよければ……狩りにも行くし、荷物運びとか手伝うから……」

「よっしゃ!兄ちゃん。俺が元気になったら行こうな!」

「よっし!狩り班脱出!」

「それは無理ですよ。循兄さん。金剛(ダイヤモンド)兄さんいないから、仕方ないので私と行きましょう」

「仕方ないって何だよ、統!」


不満げな循に統は真顔で、


「兄さん弱すぎ、狩りには向いてません。でも、荷物持ち位はして下さい」

「くぅぅぅ……!ムカつく!」

「僕も行こうか?循お兄ちゃん」


 喬の言葉に、循は真っ青になる。


「い、いい!喬は、母さんと一緒にいること!」

「僕も行きたいのになぁ……」

「あ、しょうしゅも行きたいのでしゅ」


 目をキラキラさせる滄珠(そうしゅ)に、天藍が微笑む。


「滄珠は、喬と一緒にいてね?お兄ちゃんが捕まえてくるから」

「あい、いましゅ」


 滄珠は大きく頷く。


「偉いね。滄珠は」

「えへへ……」


 天藍にすぐに懐いた妹に、循は特に驚く。


「滄珠が、天藍に懐いた!」

「えっ?変なの?」

「人見知りなんだよ。滄珠」

「そうなんだ……あっ」


 父親と姉に手を引かれ、近づいてくるのは舜花(しゅんか)である。


「お久しぶりです。琉璃(りゅうり)お姉様、循くん、喬くん、統くん、広くん、滄珠ちゃん。亮花ちゃんそしてこんばんは、均お兄さま、天藍」

「梅花(メイファ)どの、こんばんは。そして、舜花もこんばんは」

「こ、こん……こんば、は……の」


 父親の後ろに隠れる少女に、子仲(しちゅう)は微笑む。


「天藍は知っていると思うけれど、紹介するよ。私の娘の舜花。年は幾つだった?舜花?」

「や、やっちゅ……なの」

「8歳。偉いね。数が数えられるんだ。勉強したんだね」


 喬はにっこりと笑う。

 拾われてからずっと旅をしてきた孔明(こうめい)にそっくりな喬を見て、舜花は顔を覗かせる。


「こんばんは、舜花。僕たちは諸葛孔明(しょかつこうめい)の息子です。僕は喬。そして統と広、天藍お兄ちゃんは知ってるよね?こちらが循お兄ちゃん。金剛お兄ちゃんが一番上。で、妹の滄珠、7歳だよ。広の隣は亮花」

「お兄しゃん……いっぱい」

「舜花。お姉様と一緒に、喬くんたちと一緒に食べましょうか。天藍くんもいるし」

「そうだね。後で迎えにくるから、食べていなさい」

「……くゆ?おとうしゃま」


 首を傾げ、父親を見上げる。


「あぁ、来るよ。だから、仲良くね?」

「あいっ」


 頭を撫でられ、嬉しそうに頷く。


「じゃぁ、梅花と舜花をよろしくね」


 子仲は、手を振り去っていった。


「梅花どの、舜花ちゃん……でいいかな?こっちにどうぞ」


 循は空いている席を勧める。


「ありがとうございます。じゃぁ、舜花どっちがいい?」

「……んっと……こっち」


 天藍に近い席を示す。


「そう。じゃぁ、並びましょうね」


 姉と並んで腰を下ろすと、渡された器に載せられた食べ物に目を輝かせる。


「あいがとうごじゃいましゅ。いただきましゅ」

「わぁ、偉いなぁ。挨拶できるんだ」


 広は目を丸くする。


「それに、その言葉、どこの辺りのかな?」

「ご、ごめんなしゃい……」

「えっ?何で?」


 俯く舜花に天藍が、


「舜花?違うよ?広はね、変だって言っているんじゃなくて、舜花の言葉を自分でも話せるようになれるかな?どこの方の言葉で、自分も教えて貰って話せるようになれるかなって言いたいんだよ、ね?」

「そ、そうだよ。実は俺も大分忘れてるけど、ここよりもっと遠い所の生まれなんだ」

「しょうなのでしゅか……あた……舜花は、テンリャンおにいしゃまのしゅんでいた、漢中のあたりでしゅ」

「俺と統兄ちゃんは常山郡……冀州常山国(きしゅうじょうざんこく)真定県(しんていけん)出身」

「俺は涼州天水郡冀県(りょうしゅうてんすいぐんきけん)」

「私と兄様は、徐州瑯琊郡陽都県(じょしゅうろうやぐんようとけん)出身」


 天藍と均が名乗ると、舜花はキョトンとする。


「一杯……おにゃまえ……どこでしゅか?」

「あぁ……」


 絹(けん)に描かれた地図を広げた均は、示す。


「ここが今いる辺り。で、天藍の出身地がここ。で、金剛の父親の出身地が司隷扶風郡茂陵県(しれいふふうぐんもりょうけん)。揚州蘆江郡舒県(ようしゅうろこうぐんじょけん)が、循の出身地。統と広はここ。私と兄様とはここだね。で、子仲さまは徐州東海郡(じょしゅうとうかいぐん)朐県。亮花の出身地は荊州南郡襄陽宜城県(けいしゅうなんぐんじょうようぎじょうけん)だね。琉璃は荊州南郡襄陽。琉璃のお父さんは河南郡(かなんぐん)出身だって聞いてるよ」

「一杯ですね。私は小さい時から許昌(きょしょう)に行っていたので……」


 亮花は地図を覗き込む。

 そして滄珠は声を上げる。


「おじしゃま。こんにゃに広いところから、おにいしゃまやおねえしゃまたちが一緒。しゅごいのでしゅ。ホントは会えにゃかったかもでしゅね」

「そうだね。本当は会わずに生きていたかもしれないね。滄珠はお利口」

「そしゅたら……舜花……おとうしゃまと、テンリャンおにいしゃまたちと会えにゃい……?」


 瞳を潤ませる舜花の頭を撫でて、天藍は微笑む。


「大丈夫だよ。今のようにでなくても、きっと会ってる。ね?喬」

「そうだよ。僕たちときっと会ってる。大丈夫だよ。泣かないで」

「……あい。おにいしゃま。あいがとう」


 子供たちは地図を見ながら話している。

 特に、天藍の生まれた地域のことや、統の生まれて逃げてきた道のりについてである。

 滄珠は思い出したように叔父を見る。


「おじしゃま。どうしておかあしゃまのいたこっちにきたのでしゅか?」

「えっ?えっと……うーん……逃げてきた!」

「逃げて?」


 循も首を傾げるが、ほろ苦く笑う。


「曹孟徳(そうもうとく)の父親が徐州州牧の部下に殺されて、怒った曹孟徳が民を無差別に虐殺し始めたんだ。長兄は義母と妹と揚州に逃げて、私たちは親族を頼って姉さんたちと4人で逃げたの。あちこち逃げて、荊州襄陽に落ち着いたんだよ」

「……!ごめんなしゃい……しりゃなかったでしゅ……」

「教えてなかったからね。それに滄珠たちのお父さんである兄様も教えたくなかったと思う。特に兄様は滄珠や喬……それに統、広、循、天藍に辛い世界を見せたくなかったと思うんだ。もっと幸せな世界を知って欲しいって……琉璃と、皆を幸せにしたいってずっと言っていたと思うから」


 子供たちの頭を撫でる。


「幸せになって……その為なら、私も兄様も戦えるから……」


 均の声はふわっと広がり消えた……。

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