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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
進む道は楽なものではないと誰もが知っているのです。
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少年たちの成長と父親たち

「あの、お父さん……」


 天藍てんらんは、モジモジと問いかける。


「あの、あのね。金剛ダイヤモンドに聞いたんだけど、兄妹……いるって本当?」

「あぁ、そうだよ。名前を覚えておこうか?一緒にお父さんたちも、皆に天藍の事を伝えたいからね」


 孔明こうめいは紙を用意すると、


「じゃぁ、私の奥さんで、天藍のお母さんは黄琉璃こうりゅうり。長男が金剛。いみなしゅうと呼ばれていたけれど、金剛は好きじゃないと言って金剛のままだよ」

「お母さんは黄琉璃……えっと、姓が黄で、名前が琉璃お母さん?」

「そう。で、次男が天藍とじゅんだね。循の姓はそん。隣の家にご両親と双子のお姉さん、そして4人の妹がいるんだ」

「ご両親と……仲が悪いんですか?」


恐る恐る聞くと、苦笑する。


「ご両親は本当に可愛がっているよ。元々、循と双子の姉の玉蘭ぎょくらんは、お母さんである木蘭もくらんさまと江東こうとうに住んでいてお父さんと出会ったの。で、実の父親が循を殴る蹴る、怒鳴り付ける……怯えて萎縮していたのを見かねて、双子を家の子として預かったの。そうすると、循の父親が命を絶ってね……」

「えっ?」

「当時の君主を裏切ったと言う罪でね……丁度、今のお父さんは私の上司でね?私の事を心配してくれて江東に。そうしたら木蘭さまに一目惚れ。子供がいるから……と言うのを『貴方の子供は私の子供です‼』と、自分の子供として育てているんだけど、もう、のびのびと言うか、悪戯好きで、如何に武術の稽古をサボるかで、公祐こうゆうどのが頭抱えているよ」

「武術の稽古……俺は好きだけど……と言うか、ちゃんと習ってない。それに勉強もまだまだ……」

「大丈夫大丈夫」


 頭を撫でる。


「で、弟は、まず一つ下のきょう。小さい子でね。だけど賢い子だよ。循は軍略に長けてる方だけど、どこか抜けてる。でも、喬は軍略に内政にと勉強をしていてね、でも体が余り丈夫じゃないんだ。昔は元気だったんだけど……」


 心配そうに目を伏せるがすぐに、


「そして、その一つ下がとう。統はその二つ下のこうと二人で、常山郡真定県じょうざんぐんしんていけんから荊州けいしゅうまで家族を探しに、途中でさくと言う少年と3人でやって来た。統はお父さんたちに会った時は5才で、家族が亡くなってると聞くと、もうボロボロ泣きながら倒れて……3才の弟の手を引いて、見つけた食べ物も弟に与えて、自分は空腹を水でしのいで……ようやくたどり着いた時に、探していた家族はもういないって聞いて、餓死寸前で疲れも溜まっていたんだろうね、熱を出して……」

「……」


天藍は思う。

 自分はまだ恵まれていたのかもしれない……。

 それを察知したのか、孔明は息子の頭を撫でる。


「統が幸せか、不幸せか……その時は本当にもう思い出したくないと、記憶を閉ざしてしまったから解らないよ。でも統は今は元気。ずっと『お兄ちゃん』をしていて、うなされて『お兄ちゃん、もう嫌だ~‼何で誰も助けてくれないの?おじいちゃんはどこ?』って泣きじゃくってね。お父さんは統をだっこに、ぐずる広をおんぶして寝かしつけてたよ。広は統よりも2才下だから、記憶にないんだろうね。それに男兄弟の末っ子だから天真爛漫に育ってやんちゃ坊主だよ。あ、統は口数は少ないけれど、もう……喬が甘やかすから、お兄ちゃんっ子。時間が空いてると『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って……」

「じゃぁ、5人……俺……」

「まだいるよ?7才の長女の滄珠そうしゅ、1才の末っ子が桃花タオファ。滄珠は琉璃に似ていてね?金色の髪で瞳は青。桃花はどうしてかお父さんに似ちゃってね……もう……悲しい」

「良いなぁ……俺も、似たかった……」

「何いってるの。髪の色は金剛と同じ。瞳は琉璃と同じ。それに良いなぁ……その彫りの深い顔立ち。お父さんが、天藍になりたかったよ」


 もう一度くしゃくしゃと撫でる。


「あぁ、天藍は髪の柔らかさはお父さんと一緒だ。お父さんは昔は黒かったんだけど、色が抜けちゃったんだ」

「えっ?お父さんは銀色じゃないの?」

「えっと……確か、天藍位の年には結構白髪があったんだよ。琉璃と出会った時は半分は白かったね。で、27の時に真っ白になっちゃってね。そうすると艶が出てこんな色になったんだ」

「で、でも、とっても似合ってるよ。お父さん‼」

「ありがとう。天藍も綺麗な色だよ」


 微笑む。


「心配しないで。お母さんと兄弟たちにも連絡してるからね?あ、そうだ。天藍はきんの息子でもあるから、均の家族は隣にいるから、いつも会えるよ」

「えっ?えっと、循……の家が隣で……」

「あぁ、家の屋敷は中央が広大な畑に木々が生えていて、その回りに8軒の屋敷があって、行き来しているんだよ。畑には食べられる植物だけじゃなく、薬草も育てていてね?均の奥さん……天藍のもう一人のお母さんは医師だよ」

「えぇ‼凄い‼お父さん。俺もお手伝いしたい‼」

「言うと思った。天藍と同じ年の従兄が、今、医術を学びに遊学しているよ。桂月けいげつと言うんだよ」


 目を見開く。


「凄い……勉強してるんだ。俺と同じ年なのに……」

「勉強はいつでも始められる。天藍は今、頑張っているでしょう?負けたとかじゃなく、じゃぁ、自分も努力しよう‼って思うこと。そうすれば、もっと覚えようって思えるよ」

「はい‼」


 その後、天藍は均の元に行き家族のことを聞きたいと訊ねたらしく、均が翌日、


「ぎゃぁぁ‼兄さま~‼天藍が‼」

「何?天藍が何かしたの?」

「死ぬ……何、この恥ずかしい思い。兄さま‼天藍に何教えたの‼」

「何って、兄弟の名前が聞きたいって言うから、名前と年を教えただけだよ?」

「そこから、どうやったら『父さんはお母さんとどうやって結婚できたんですか?』とか『お母さんを何て呼んでいるんですか?』になるの~‼」


珍しく顔を赤くして、均は兄に訴える。


「何か教えたんでしょ?」

「教えてないよ」

「オホホホ……」


 現れたのは、金剛の祖母の珊瑚さんごである。


「孔明はいつも琉璃や家族のことを話すけれど、均は話してくれないでしょ?天藍に聞いて頂戴って頼んだのよ」

「えぇぇ~‼お母さん‼」

「オホホ。均の奥さんは玉音ぎょくおんどのと言われるのね。でも、均の性格だから苦労してそうだわ。浮気とかはないけれど……」

「知られたくなかった~‼」

「気を付けないと棄てられるわよ?これは母親としてではなく、妻として言うけれど」


 楽しげではあるものの、どこか苦しげな珊瑚の一言に、孔明は、


「お母さんも解ります?玉音と子供たちは、『もう諦めました……』とか『私たちのお父さんは孔明お父さんだもん‼』『大丈夫。老後の面倒は見てあげるからね?』って言われているんですよ……もう、兄として申し訳なくて……」


と泣き真似をする。


「本当ね。会ったら『家の愚息が本当にごめんなさいね』って、謝らないと……」

「本当にすみません。お母さん」

「もう、やめてよ~‼ここでも僕を追い詰めないでよ~‼お母さん、兄さま‼帰ったらちゃんと‼玉音と子供たちを大事にします‼だからもうやめて~‼」


 情けない顔をした均の声に周囲は笑い出したのだった。




 ちなみに、季常きじょうも笑った為に、均に後でどつかれたのだった。

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