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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
進む道は楽なものではないと誰もが知っているのです。
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連れていかれた先で開かれる道

 スタスタと歩く父に置いていかれないように、せかせかとついていく。

 どんどん奥に入っていくのを、大丈夫かと思いつつ着いていくと、ピタッと止まり、


「兄さまー‼ただいまー!」


と扉を引いた。


「叔父さん。お帰りなさい‼」

「ただいま、金剛(ダイヤモンド)。あ、天藍(てんらん)、おいでおいで」


 手招きされ、おずおず姿を見せた少年は深々と頭を下げる。


「は、初めまして。て、天藍と申します」

「……天藍?膝ついて顔隠してどうするの。ほらほら立って」


 慌てて均は荷物を下ろさせ、立たせる。


「兄さま。この子、天の藍(あお)で天藍。年は15歳だよ。金剛より一つ下だね。天藍?牀(しょう)で、ごそごそしてるのが、兄さまの亮(りょう)。そして、この子が兄さまの息子の金剛。16歳だからお兄さんだね」

「あ、あのっ‼は、初めまして……」

「うっわぁ!循(じゅん)と同じ年なのに、背が高い‼よろしくな?俺は金剛‼」


 手を差し出され天藍はためらうが、金剛は手を握る。


「今日から兄弟だ。仲良くしような?」

「は、はい‼金剛さま」

「はいじゃなくて、うん‼だよ。天藍。それに呼び捨てでいいよ」

「えっと、じゃぁ、うん、金剛」

「あー‼良いなぁ。お父さんも‼」


 牀から細い優しげな声がする。


「金剛、天藍、兄さまが目を盗んで牀から逃げようとしてるよ?」

「あ、又、父さんは……俺たち兄弟で仲良くしてると、混ぜてって言うんだから」

「だって、だって‼わーい!家の子‼」


 金剛の視線をたどるように振り向くと、銀色の髪が光った。

 そして、痩せすぎているのかやつれ、目の下にくまをつくった年齢未詳の男性。

 不思議なのは、漆黒の瞳が澄み切っていること。

 その眼差しは若くもあり、年を経たようでもあり、益々年が解らない。

 しかし、にこにこと嬉しそうに、


「おいでおいで、天藍。お父さんだよー‼」

「兄さま。僕の息子だけど?」

「だって、均は31じゃないか。玉音(ぎょくおん)どのが今度こそ卒倒するよ?」

「それこそ、玉音が倒れたら凄いことじゃない。アハハ‼楽しみ‼」

「玉音どので遊ばない。もう、お前が今までしでかしてきたことで、お兄ちゃんは本当に胃が痛いです‼」


 均をにらむ。


「玉音どのと結婚したのに、ほったらかしで何やってたの‼技術者として独立するって、破壊活動に邁進しない‼」

「いいのいいの。玉音は太っ腹だから」

「太っ腹は意味が違うでしょ‼全く……金剛、天藍。こんな均みたいになっちゃダメだよ‼お父さん、まだ35なのに白髪だよ⁉均達のせいで‼」

「いいじゃん。ハゲよりましでしょ」

「やめて‼この年でハゲ‼怖すぎる……」


 肩を抱いて震える孔明(こうめい)は、近づいてきた二人を抱き締めると、


「お父さん達の大事な息子だよ。金剛は体調よくなった?それに天藍は痩せてるね。元気になるようにしっかり食べて、無理をしない程度に運動をしよう。勉強もしないとね。大丈夫。お父さんたちは、二人のお父さんだからね。安心しなさい」

「って、あぁぁ‼言ってる兄さまが、又残してるじゃないか‼」

「いや、だって、お腹すかないし……」

「食べなさい‼毒入れるよ‼」


均の一言に、天藍は硬直する。


 今、何と言った?


「だ、だだだ、金剛‼ち、父上、物騒なこと言ってるよ⁉大丈夫?大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。兄さまは、そんじょそこらの毒じゃ死にゃしないよ。頑丈だから、ね?兄さま」

「均。毒を入れてからかうのは私だけにすること。孟起(もうき)どのはいいけどね。どんどん入れてあげて」

「うん、そうするよ」


と、扉が開き、入ってくるのは大柄な男。


「おらぁ‼お前ら兄弟、俺で遊んでいるだろう?何考えてんだ‼」

「ん?」


 孔明と均は顔を見合わせ、


「孟起殿をぶん殴って叩きのめして……」

「可愛い金剛を家に連れて帰るんだよね?兄さま」

「そうそう。天藍も連れて帰ったら、皆喜ぶよ」

「天藍だと?」


 周囲を見回し天藍と視線が合うと、あれっと言いたげに、


「お前、姜維(きょうい)じゃねぇか‼あの教祖の……」

「私の息子ですが、文句ありますか?」

「あぁぁ‼兄さま、家の子にするつもりだったのに……」

「同じ敷地の隣の家で、家に入り浸っているのに、均の子供とか、私の子供とか意味はないだろうに、天藍、おいでおいで。ここに座って」


金剛と並ぶように腰を下ろすと、


「天藍。子供は親を選べない。親も子供を選べない……」


言いながら頭を撫でる。


「でも、親は親、子供は子供。それに親元から旅立つ、巣立つことも出来るように、今まで生きてきた苦しみから逃れることもできる。新しい生き方を示されることがある。天藍?お前のお父さんは誰?名字は?」


 恐る恐る孟起を見て、


「き、昨日までは姜維ですが、天藍と言います。よろしくお願いいたします‼……あの、父上」

「「なぁに?」」


 孔明と均は声が揃う。


「あの、せ、姓は何でしょうか?」

「え?均?教えてなかったの?」

「あ、忘れてた‼天藍。姓はね諸葛(しょかつ)だよ。諸葛。この人が兄の孔明」

「しょ、諸葛……?諸葛孔明さまと言うと⁉あのっ‼」


 立ち上がろうとした天藍は、均につんっと額を押され、そのままコロンと寝転がる。


「はい、寝不足の息子は寝てなさい。それと、おっさんは出てけー‼」

「おら‼おっさん言うな‼」


 追い出されていく孟起を押しながら出ていく均をボーッと見ていた天藍は、後ろから体を包み込む温もりに全身の力が抜けていき、そのまま目を閉じて眠ってしまったのだった。

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