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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
季常さんが机上空論から実践に飛び出しました。
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皆は、部下を休めることを優先させます。

 兵舎から出てきた兵士たちも手分けをして食料に、身を清める為の湯を沸かし、予備の衣を配っていく。

 身を清めた兵士に部屋を振り分け、


「良く無事で」

孔明こうめい参謀や、お子さん方には昔、救われた」

「本当に、良く来られた。食べて、ゆっくり休まれてくれ」


と声をかける。


「ありがとうございます」

「本当に……」

「何を言う。お互い様だ」


 手を握りあう。

 時間はかかったが、ある程度無傷で疲労が溜まっている兵士は兵舎で休ませたものの、怪我人の手当てに走り回る。


「布が足りない‼」

「湯だ‼」

「薬草を‼」


 その言葉に金剛こんごうは走り回る。

 叔父のきんにある程度教わっていた為、動けるのだ。

 令明れいめいも慣れた様子で動くが、子龍しりゅうは、


「運ぶ事しか出来んな……ある程度、薬草などを知っておれば……」

「その方が有り難いですわ。私にはこれ以上は難しいでしょうし」


 珊瑚さんごは、布を巻き付けた兵士に微笑むと、


「良く頑張られたわね。お疲れ様。案内させます。身綺麗にしてお休みなさい」

「ありがとうございます‼奥方さま手ずから……」

「おほほ……私は金剛の祖母なのよ。あれが愚息」


力仕事に従事する孟起もうきを示す。


「私は、孔明の妻になる琉璃りゅうりの実母の姉になるの。琉璃は元気か、聞くのを忘れていたわ……琉璃の姉の雲母きららは、孟起の妻なのだけれど……二人で心配していたのよ」

「しょ……いえ、奥方さまは、時々軍の訓練を見に来て下さり、時々、孔明参謀や士元しげん参謀のご家族と一緒に、我々の食事を作って下さったり……」

「お優しい奥さまです。お子さまも皆様それぞれお強く、賢く、可愛らしい……」

「ふふふ……良かったわ。可愛いのは金剛かしら?」


 楽しそうに笑う珊瑚に、


「おばあ様‼15になった孫に、可愛いはやめて下さい」


 湯を持ち込んだ金剛は空の器を持ち、頬を膨らませる。


「あら、可愛いわよ?金剛は」

「おばあ様‼」

「あら、孟起と孔明だったらどっちがいいの?」


 からかう口調にあっさりと、


「孔明父さんが、めちゃくちゃな位破壊的ですが、尊敬します」

「あらあら」


笑う珊瑚に、


「孔明父さんのようにと言うのは難しいですけど、もっと幅広い考え方が出来ればとも思います……と言うことで、行ってきます」


金剛は走っていく。


「では、参ろう」


 子龍が支えつつ入っていくのを見送り、


「次の人……?」


微笑む。




「均どの、その薬は?」

「あぁ~‼うるさい、邪魔‼」


 均は大胆に治療していく様子を見ている季常きじょうは、


「そんなに簡単に……いいの?」

「ある程度、今までで見ていたからだよ。重い人は見ていたから、症状の悪化を食い止める方法を取っていたから大丈夫。化膿と辛さを我慢さえしなければ構わない。後は良くなる。足りないのは休息と栄養。連れていって。次。季常。書き込んでおいて。彼の名前、傷の場所、傷の回復度。書けた?」

「う、うん‼」

「じゃぁ、次。本当なら書き込みつつ処置もするけど、人数が多いから頼むよ。それに、薬はこんなものを使っているってことは、後で教えるから書き込んでおくこと」


 均は手当てを続ける。


 季常は書くだけではなく、薬は無理にしても、布やお湯を指示したり手渡すことも始める。


「あぁ、助かる。書くのも忘れちゃダメだよ」

「解ってるよ‼」


 二人の言い合いに、怪我人も笑いあう。


「仲がよろしく……」

「いや、悪いから」

「同じです」


 二人は顔を見合わせる。


「不本意だけど意見があったねぇ、季常」

「本当に。昔から不本意ですけどねぇ……」

「季常を後で締めてやる」

「ほほぉ……私がいなくなったら、参謀いませんよ⁉均がします?それとも、義兄上たちに……」


 その言葉に、均は、


「チッ‼あぁ、そうだった。あぁ言えばこういう奴だったよ。仕事しろ~‼で、悪態着けなくなるまでこきつかってやる‼」


と呟き、その通り、体力差のある均に使われた季常は最後まで頑張ったものの、最後の怪我人を見送った途端ぶっ倒れ、均もそれを見つつ、


「あぁ、私も駄目だぁぁ……」

「お疲れ様でしたな。部屋に案内して頂こう」


と、子龍に送って貰い、ぐったりと眠ってしまったのだった。

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