皆は、部下を休めることを優先させます。
兵舎から出てきた兵士たちも手分けをして食料に、身を清める為の湯を沸かし、予備の衣を配っていく。
身を清めた兵士に部屋を振り分け、
「良く無事で」
「孔明参謀や、お子さん方には昔、救われた」
「本当に、良く来られた。食べて、ゆっくり休まれてくれ」
と声をかける。
「ありがとうございます」
「本当に……」
「何を言う。お互い様だ」
手を握りあう。
時間はかかったが、ある程度無傷で疲労が溜まっている兵士は兵舎で休ませたものの、怪我人の手当てに走り回る。
「布が足りない‼」
「湯だ‼」
「薬草を‼」
その言葉に金剛は走り回る。
叔父の均にある程度教わっていた為、動けるのだ。
令明も慣れた様子で動くが、子龍は、
「運ぶ事しか出来んな……ある程度、薬草などを知っておれば……」
「その方が有り難いですわ。私にはこれ以上は難しいでしょうし」
珊瑚は、布を巻き付けた兵士に微笑むと、
「良く頑張られたわね。お疲れ様。案内させます。身綺麗にしてお休みなさい」
「ありがとうございます‼奥方さま手ずから……」
「おほほ……私は金剛の祖母なのよ。あれが愚息」
力仕事に従事する孟起を示す。
「私は、孔明の妻になる琉璃の実母の姉になるの。琉璃は元気か、聞くのを忘れていたわ……琉璃の姉の雲母は、孟起の妻なのだけれど……二人で心配していたのよ」
「しょ……いえ、奥方さまは、時々軍の訓練を見に来て下さり、時々、孔明参謀や士元参謀のご家族と一緒に、我々の食事を作って下さったり……」
「お優しい奥さまです。お子さまも皆様それぞれお強く、賢く、可愛らしい……」
「ふふふ……良かったわ。可愛いのは金剛かしら?」
楽しそうに笑う珊瑚に、
「おばあ様‼15になった孫に、可愛いはやめて下さい」
湯を持ち込んだ金剛は空の器を持ち、頬を膨らませる。
「あら、可愛いわよ?金剛は」
「おばあ様‼」
「あら、孟起と孔明だったらどっちがいいの?」
からかう口調にあっさりと、
「孔明父さんが、めちゃくちゃな位破壊的ですが、尊敬します」
「あらあら」
笑う珊瑚に、
「孔明父さんのようにと言うのは難しいですけど、もっと幅広い考え方が出来ればとも思います……と言うことで、行ってきます」
金剛は走っていく。
「では、参ろう」
子龍が支えつつ入っていくのを見送り、
「次の人……?」
微笑む。
「均どの、その薬は?」
「あぁ~‼うるさい、邪魔‼」
均は大胆に治療していく様子を見ている季常は、
「そんなに簡単に……いいの?」
「ある程度、今までで見ていたからだよ。重い人は見ていたから、症状の悪化を食い止める方法を取っていたから大丈夫。化膿と辛さを我慢さえしなければ構わない。後は良くなる。足りないのは休息と栄養。連れていって。次。季常。書き込んでおいて。彼の名前、傷の場所、傷の回復度。書けた?」
「う、うん‼」
「じゃぁ、次。本当なら書き込みつつ処置もするけど、人数が多いから頼むよ。それに、薬はこんなものを使っているってことは、後で教えるから書き込んでおくこと」
均は手当てを続ける。
季常は書くだけではなく、薬は無理にしても、布やお湯を指示したり手渡すことも始める。
「あぁ、助かる。書くのも忘れちゃダメだよ」
「解ってるよ‼」
二人の言い合いに、怪我人も笑いあう。
「仲がよろしく……」
「いや、悪いから」
「同じです」
二人は顔を見合わせる。
「不本意だけど意見があったねぇ、季常」
「本当に。昔から不本意ですけどねぇ……」
「季常を後で締めてやる」
「ほほぉ……私がいなくなったら、参謀いませんよ⁉均がします?それとも、義兄上たちに……」
その言葉に、均は、
「チッ‼あぁ、そうだった。あぁ言えばこういう奴だったよ。仕事しろ~‼で、悪態着けなくなるまでこきつかってやる‼」
と呟き、その通り、体力差のある均に使われた季常は最後まで頑張ったものの、最後の怪我人を見送った途端ぶっ倒れ、均もそれを見つつ、
「あぁ、私も駄目だぁぁ……」
「お疲れ様でしたな。部屋に案内して頂こう」
と、子龍に送って貰い、ぐったりと眠ってしまったのだった。




