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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
季常さんが机上空論から実践に飛び出しました。
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季常さんはてきぱきと動き始めました。

 金剛ダイヤモンド孟起もうきが流れるように部屋に連れていくのを、


「ちょっと待って下さい‼怪我人、配給すべきものを考えずにいれてどうするんです‼」


季常きじょうの一言に、あれ?と親子は振り返った。

 小さい体でよろける怪我人を支え、親子に言い放つ。


「多少の疲労のみで、すぐに回復できる者と、怪我や長期の疲労で参っている人間と一緒はいけません‼病人は奥‼手前は動ける者です‼」

「奥?」

「手前は非常時に対処する為です。起こることはないでしょうが、病に眠る者の周囲をうろうろされては困るんですよ。皆さん‼動ける人は、疲れている仲間に手を貸してあげて下さい‼私は、姉や孔明こうめい参謀、きんどの程ではありませんが、ある程度……」

「季常‼……じゃない、参謀。医師をお願いしておいたよ。皆、結束は強い。いいかい?旅の間に不調を隠していた者がいるのも解っている。まずは重い荷物を下ろす。傷の化膿などを確認するから、兵舎の前で簡単な診察をして、参謀、書簡に記載。そして、兵舎のどの部屋に移動すればいいか、確認を。で、金剛とおっさんは連れていくのを担当。行け。これは一応二人の参謀の命令です」


 均の言葉に、


「凄い‼」

「感心しない‼これは残しておくことで、後で治っていく様子も、悪化しないように様子も見られる。行くよ」


均に着いていく季常に、


「立場関係良く解るな」


呟く孟起に、


「父さんと、孔明お父さんみたいなもんだよ」

「何だってぇぇ‼」

「うるさい‼早く行けっての‼」


背後から蹴る均に、よろめく。


「て、てめぇ……最近、本気で表の顔消しやがったな」

「そんなの言ってられるかっていうの‼これでも、本気で職務放棄、勝手にこっちに来てるんだ‼家族は大丈夫だと思うけど、バレたらどうなると思ってんの‼それだけ命かけてんだ‼あんたもそれ位やれよ‼」


 均は、怒鳴り付ける。


「父親失格、夫失格でも、それでも可愛いと思ってるんだよ‼これも一緒‼」


 均は動けなくなった一人の兵士に肩を貸し、季常を示す。


「これは、あの劉備りゅうびに出仕前に嫁を実家に預けたものの、実の母親に離縁させられて、実家に返されたんだよ。で、嫁は行方不明。自分の愚かさを今更思い知って、嫁を探したら自分の子供を一人で生んで育ててた」

「……っ‼」


 季常は目を伏せる。


「情けない……情け知らずです。でも、均や敬兄けいけい、義兄の言葉で、落ち込む前に動くことを決めました。ですから用いうる限りの能力を最大限に。そう思っています。それで、再び会えたら……抱き締めて名前を呼びたいです……まだ恥ずかしくて、呼べないので……」


 照れ臭そうに告げる。


「息子?」

「娘です‼り、りり……」

「りり?」

亮花リィアンファだよ。ホラホラ、可愛い娘に会いたいんでしょ?行くよ」


 均と共に歩いているが、余りにもよろよろとし、途中やって来た大柄な武将が支えて連れていく。


「あの男は?」

「皆。動ける者は無理をせず、数人で手助けを‼、動けない者は休んでいてくれ‼親父っ‼手伝え‼」

「……息子にまで……」


 ショックを受けつつ、二人を抱え歩き出す。


「ありがとうございます……本当にありがとうございます」


 小さい声で何度も礼を言う兵士たちに、


「気にするな。お互い様だ。昔、孔明……参謀に家を助けられた……その礼だ。安心してくれ。それに、飯を食わねぇと力がでねぇぞ」

「ありがとうございます……」

「本当に……あの方は、趙子龍ちょうしりゅう将軍です」

「趙子龍将軍な……凄いな」


筋骨隆々とした人物……あの背中を見ると、何故か幼い頃の記憶を思い出す。

 4年前に許都で逝った父は、昔は……あんな感じだった気がする。

 強く、力も自信も覇気もあり、瞳は遠くを見つめていた。

 その遠くと言うのは、家族であり将来であり、自分の力を確かめたいと東の混乱をこの時と思っていたような気がする……。


 もういない父と二人の弟は、血にまみれ、地に埋もれている。

 もう目を醒まさず、ただ白骨は地に戻り(はく)、天に昇ったのはこん

 もう二度と会うことはないが……今更だが……、


「話をすれば良かったかな……」


呟く。

 振り返り首を傾げるのは、妻に似ている長男。


「ん?何?父さん?」


 その表情は、穏やかで温かい……もしかしたら、父を選んでいたら失われていたかもしれない息子。

 苦笑し、


「いや。お前に会えて良かった。成長したと思ったんだ」

「ふふっ。俺は、父さんは変わんないなって思ったよ。孔明父さんがめちゃくちゃだし……でも、孔明父さんは優しすぎるし……心配だよ」

「そう……って、お前……‼孔明んとこに……」


複雑そうに首をすくめる。


「……きょうが……身体が弱ってるんだ。父さん。じゅん孫公祐そんこうゆうさまの息子で、とうこうもまだ12で10……。心配で堪らないんだ」

「……あの、ちっこいのか?」

「良く寝込んでる……熱を出しては、食欲も失せて真っ赤な顔で……それでも、必死に戦いを終わらせるんだって……」


 唇を噛む。


「……俺にもっと力があれば……いつもそう思うよ。孔明父さんは、もの凄いから無理だと思うけど、父さん位はなりたいと思ってる……」

「俺位って……」

「父さん位、武力だけじゃなく、周囲に恐れられるような権力……と言うか、周囲をひれ伏させるような実力。才能。もっと努力したいと思うよ」


 苦しげに告げると、すぐに周囲に笑いかけ、


「皆。順番に診て貰って休もう。食事もある。大丈夫だよ」


金剛が言いながら歩いていくのを見送り、


「……金剛の急激な成長が……嬉しい反面、寂しいもんだな……」

「若君は……普段は穏やかですよ。お優しいです、とても」

「そうです。戦いの時には勇ましく、強く……お若いですが、尊敬する方です」


周囲の声に、にっと笑い返し、


「ありがとう。孔明どのや皆が、愚息をあんなにも大きく成長させてくれたのだと感謝する。そして、これからは、私も貴方方と共にさせて頂く。よろしく頼む」


大らかな親獅子の言葉に、周囲はホッとするのだった。

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