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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
少し成長してきたでしょうか?刹那が幼いので、年相応であるか不安ですf(^_^)
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漢字がないです!!蒋琬さんの字に、費イさんの『い』がないです!!

 きょうは、妹を抱き締めたまま座り、微笑む。


滄珠そうしゅ? じゃぁ、じゅんお兄ちゃんに黒い石を渡そうね?」

「あい! じゅんおにーしゃま」

「あ、ありがとう」


 座る前に手を伸ばし、青ざめた顔のまま腰を下ろす。

 そして、叔父のきんが綺麗に精製している紙を持ち、とうが間に座る。


 当時、囲碁の本などもあり、自分達の盤上遊戯を神聖なものとして、譜面に残すことがあった。

 孫伯符そんはくふ(諱はさく)が打ったと言う譜面が残っているが、これが彼が打ったかは怪しいとされている。

 しかし、曹孟徳そうもうとく(諱はそう)は、有名な囲碁の名手であったと言う。


「じゃぁ、お兄ちゃん。僕が、滄珠の代わりに一目置かせて貰うよ」

「良いよ」


 表向きは焦っている様子もないが、統には解る。

 循は警戒しているのだ、喬の一目を。

 喬は、細い指でスッと白い石を滄珠に見せて、


「滄珠? 今日お兄ちゃんは、お父さんの囲碁の動かし方を教えるからね? 覚えて帰ろうね?」

「あ、あい!」

「偉いね。さぁ、まずはここからだよ?」


そっと置いた石を示し、


「滄珠? この囲碁は占いを兼ねているし、戦術も考えられるよ。いいかい? この盤を宇宙と言う。そして、石は天と地を示し、白と黒は陰と陽を示す。この盤上で行われるのは戦いだよ」

「戦い……? おおけがしましゅか?」

「違うよ」


黒い石を置いた循は微笑む。


「盤上で戦うのは知略。自分達が学んできた学問や技術、能力を最大限に用いるんだ。死者が出る訳ではないよ。それどころか、考えてご覧? お兄ちゃんは滄珠のことが大好きなのに、滄珠を泣かせたりしないよ?」

「その代わり、月季げつきお姉ちゃんは泣かせてるけどね?」

「喬! 言うなよ!」


 頬を膨らませる兄をみつつ、


「滄珠? この石をどこに置く? 置いてごらん?」

「あ、あい!……んーっと、えっと……ここでしゅ!」


妹が置いた場所に、3人の年子の兄たちは驚き顔を見合わせる。

 その配置は、父、孔明こうめいの戦略を練る際に置く場所である。

 統は問いかける。


「滄珠? そこでいいの?」

「んと、んと……見えるでしゅ」

「見える?」

「あい」


 滄珠は、立ち上がり循の石と、自分の石を次々動かし始める。

 組み上がっていく策略に喬は目をみはり、循は寒気を覚える。

 まだ幼い妹が作り上げていく宇宙に、その完成度に統は感動をする。


「……んと、おかしいでしゅが、ここまでは考えたでしゅ……でも、この後は、ダメでしゅ……向こうのおとうしゃまが怖い顔をしてぐーでバーンって……何時も。その時に、公祐こうゆうおじしゃまたちがいたらかばってくれるのでしゅ」

「何だって?」

「滄珠に!」


 3人は顔色を変え、互いを見つめ、頷く。

 滄珠の前では言えないが、心の中では諸葛家しょかつけの家訓を呟く。


『お礼は二倍、恨みは百倍返し!』


 喬はよしよしと、半泣きの妹を撫でて、


「じゃぁ、滄珠? お兄ちゃんたちがこの続きをするからね? 見てて?」

「あぁ、劣勢はかわりないか……でも、これをひっくり返したら、本当に天地逆転だね」

「循お兄ちゃん。芸術的な滄珠の作品を潰さないで下さいね」


統は突っ込み、兄弟は戦いを繰り広げる。


 余裕を見せているのは循。

 一手一手が早い。

 しかし、喬は長考だが、かなり優勢らしい。


 そして、兄の置いた一手に、喬は、


「お兄ちゃん負け! 滄珠の勝ち!」


と言いながら石を置いた。


「あぁぁ! やっぱり! どこに置いても返せないんだ。その上に次の一手に巻き込まれて追い詰められる。本当に喬と滄珠が組むと最強だよ!」

「でも、循お兄ちゃん。一度だけ本当は勝つ機会あったんだよ?」

「な、何? どこで? 統」


 弟の指摘に、


「滄珠が一回だけ『あっ!』って小さく声をあげたでしょ? ここ」


統が示す。


「ここがこうなっていた時に、こっちを指せばこう変わって、喬お兄ちゃんが劣勢になりかかったんだよ」

「……ガーン! こんな簡単なところを失敗するなんて……」

「……おやおや、循もお間抜けだね」


 その声に、循は顔をあげる。


「父上! 来られてたんですか?」

「えぇ、様子を見てましたよ」

「うそこけ! 余りのお間抜けぶりが面白いと、声と気配を殺して笑ってただろうが」


 公祐のやっていたことを暴露した憲和けんわに、孔明に疲れをとる薬湯を受け取った子仲しちゅうは一口飲み、


「ここに来ると本当にホッとする。ありがとう。孔明どの。薬湯は良いね」

「これは、金剛ダイヤモンドこうと薬草を取りに行った特別なものです。子仲どのには何時もお世話になっているからと、探したんですよ」

「そうなのか! ありがとう、二人とも。そして、多分そういう情報を公祐に聞いた循と、効能を調べてくれた喬に統もありがとう。本当に嬉しいよ。滄珠のお兄ちゃんたちは本当に優しい良い子だね。自慢のお兄ちゃんだね?」


子仲の言葉に、滄珠は嬉しそうに頬を赤くして、


「あい、しょうしゅは、おとうしゃまにおかあしゃま、おにいしゃまたちと桃花タオファちゃんがだいしゅきでしゅ! それに、子仲おじしゃまに公祐おじしゃま、憲和おじしゃまもだいしゅきでしゅ!」

「おぉ? おじちゃんもか?」


憲和に滄珠は頷く。


「しょうしゅは、みんなみんなだいしゅきでしゅ!……で、でも、おじしゃまたちがこられたのは……」

「違いますよ? 今日は、殿が髭親父と酒飲みをしてましたからね。ぐでんぐでんに酔わせて、こちらの言うことを了承して貰いましたよ」

「公祐は、余りあのやり方は……」


 言いかけた子仲に、公祐と憲和は、


「滄珠は可愛い孫同然! と言ったのはどなたでしたっけ?」

「それに、お前知ってるぞ? 一回、あの髭の大事なぜんを切ったんだって?」

「ふんっ!! あの気位の高いだけのアホの赤い顔を、一回真っ青にしたかっただけだ」


子仲はそっぽを向く。

 物凄く腹が立ったことがあったらしい。

 が、すぐに笑顔で滄珠に、


「滄珠? おじちゃまたちが、しばらくこのお家に居ても良いと許可を貰ってきたからね? 今日からここでいるんだよ? 良いね?」

「本当でしゅか?」

「本当だよ。ちゃんと面倒を見ない守役ほど邪魔なものはないね。孔明どの、しばらく出仕も良いから。良いね?」


その言葉に、


「構わないんですか?」

「内政は落ち着いているし、だいぶん若手が育っているからね」

「あぁ、蒋公琰しょうこうたん(諱はえん)どのですか?」


孔明の一言に、子仲は微笑む。

 小柄な孔明の10才下の青年は、書簡を読みながら部下に決済したものを渡し、あれこれ的確に命じる。

 その的確さのわりに、かなりのボケぶりに最初戸惑った。

 孔明は今でも書簡で交流のあるボケ体質の江東の陸伯言りくはくげん程、ボケ体質の天才気質かと思いきや……。


「……あいつってさぁ、本気でボケだよな」


 心底から呟く憲和に、孔明が、


「ボケと言うよりも、考え方が深いんだと思いますよ? 彼、本当に幾つものことを考えられる知識の深さもあるんでしょう。それに、考え込むと他の人間の問いかけが聞こえないんだと思いますよ?」

「……あのー。孔明どの」


姿を見せる小柄な……敬弟けいてい馬季常ばきじょうとさほど変わらない背丈の、童顔の少年にしかみえない彼は、


「僕は、夜寝るのが面倒なので、昼間寝てるんです~。お酒は取り上げられたので~」

「……荊州けいしゅうの人間は、酒好きばかりなのか!?」


突っ込みを入れる本人も酒豪の憲和に、公琰は、


「いえ~……私は、夢見なんです。私の祖母が東の蓬莱ほうらい出身だと言う人間で、そう言う才能があったらしくて。夢を見ると同じことを後日真実になります。見たくないんですよ。又戦乱なんて……嫌でしょう?」

「見えるのか?」

「……孔明どのも良く空を見つめていますよね? 有名ですよ。星読みですよね?」


首をすくめ、


「夢見……それも大変ですね」

「いいえ、費文偉ひぶんい(諱は)の方が酒飲みです!」

「いえいえ、そうじゃなく……」


どう突っ込んでいいのか解らない孔明の困り果てた顔に、公祐はブッと吹き出しアハハと笑い始める。


「こ、孔明どのもそんな顔をするんですか?」

「うーん。と、言うより……家の兄に似ているような気がして……ずれているところとか……」

「大丈夫です! 一応、季常どのや幼常ようじょうどのより危険度は低いです!」


 手をあげて、訴える少年に公祐は涙を流しながら笑い転げ、憲和は、


「今度、俺と士元しげん益徳えきとくと飲むか?」

「美味しいお酒でお願いします!」

「アハハハハ! し、子仲! お酒準備してあげたらどうです? それに、童顔で幼そうですけど、抜け目がなく、しかし才能を隠してますね? 逸材ですよ。味方に引き込みましょう」


公祐の提案に、子仲はにっこりと、


「じゃぁ、六礼りくれいをしようかな? いい日を選ぼうね」

「六礼? はぁ?」

「うちに娘がいるんだけど、何人嫁に欲しい?」


子仲の言葉に、


「嫁? ななな、何人って、普通一人でしょう?」

「あぁ、そう? じゃぁ、公祐は置いて帰るから、憲和。いくぞ」

「だな。琬。お前は取っ捕まったんだ。頑張れよ?」

「えっ?えぇぇ? 意味解りません! えっと、でも、孔明どのに子竜しりゅうどの、又明日よろしくお願い致します!」


ずりずりと引きずられつつ、挨拶をする。


「では、良く眠れるように祈ってるよ。公琰どの」


 手を振った孔明一家であった。

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