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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
少年たちの成長と恋……。
39/84

『枯れ女』咲蘭ちゃんと索ちゃんの六礼が決まりました。

 次々と集まってきていた人々は、まずは台所の巨大な生き物の残骸をみて、


「これを、とうが仕留めたのか?」

「はい。一人では持って帰られないので、途中で索兄さんにお願いして、一頭ずつ」

「それにしても……こいつらか……この辺りの畑を荒らしていたのは……」


感心する益徳えきとく


「そうみたいです。これだけありますから、お酒は無理ですが、一杯騒いで下さいね?」


 部屋に案内していると、孔明こうめいの姉の紅瑩こうえいが、姪の滄珠そうしゅの手を引いて歩いてくる。

 そしてその後ろには、未婚の女性の衣装の少女の手をひいた索が……。


「あ、紅瑩どの」

「まぁ、皆様。ようこそお越し下さいました。私は何もしておりませんが……お会いできて嬉しいですわ」

「それと……」

「私の住まいの近くに住む子ですの。後でご紹介させて下さいませ」


と言う横をすり抜け、


「うわぁぁぁ‼将軍様ですか?将軍様ですか‼わぁぁ~‼」

「ちょ、ちょっと待って、待って‼」


慌てて出てくる索に、手を捕まれるが、


「ご挨拶を‼何なら筋肉‼後で、勝負~‼」

「いや、勝負事じゃないでしょ‼ここは、諸葛家しょかつけです‼君のお家ではないです‼大人しくして下さい‼良いですか?」

「そう言えば、お裁きがあるのでした。うわぁぁん。ごめんなさい‼筋肉に萌えて、忘れてました‼」

「そんな暑苦しいものに燃えないで下さい」


 索は、疲労感がひしひしと背中にのし掛かる。


「そ、それに、何やってんですか‼」


 叫ぶ索の前で、襦裙じゅくんをからげている。


「いえ、隠しておく武器の場所確認と、さっき見えたので、隠した匕首ひしゅで攻撃してしまおうかと……」

「駄目だって‼ここにいるのは皆、君程度の腕じゃ、すぐに押さえ込まれる人ばかりだよ‼それに、その……」

「家に武器を持ち込んだり、攻撃したりしたら……追い出しますよ」


 統が冷たい声で告げる。


「私の家族に攻撃したら……」

「ふぅぅ……」


 咲蘭さくらは涙を浮かべる。


「ごめんなさい。ご家族には何もしません。したかったのは……私の姉夫婦です」

「お姉さん夫婦?」

「はい……」


 ボロボロと涙をこぼし、告げる。


「私の家は、元々しがない行商人だった祖父が、祖母とこつこつお金をためて、馬家のお屋敷の近くにお店を兼ねた家を買いました。父も堅実に働き、行商をしつつ品物を仕入れ、店でも小物や仕立て、売ると言う仕事を続けていました。父が行商で行った先で見初めた母と結婚して生まれたのが、姉二人と兄と私です」


 紅瑩がよしよしと背中を撫でる。


「姉二人は平凡な私とは違いとても美しくて、町でも評判でした。一番上の姉がある商人の方が跡取りの方と共に町を訪れて、見初められました。お相手は乗り気で格が違うと言っても、姉も乗り気でしたので結婚しました。それで、すめば良かったのですが……」

「ど、どうなったんだ?」


 益徳の問いかけに、


「姉がお金を散財するので身代が傾き、最初は仲の良かった姉夫婦が喧嘩ばかりするようになり……最後には、兄が仕入れに遠出をしている間に、兄の親友と浮気をして……離婚しました。そのつけがこちらにも当然来て……父は『済まない‼お父さんたちには、お前を嫁に出す余裕がないんだ‼』と言われました。でも、本当に両親も祖父母も兄も必死に行商して、私を育ててくれて、私も手伝おうと母に教わった仕立て等を……合間に、懇意にして頂いているお師匠様……馬家の紅瑩様のお手伝いと言う形で、最低限の読み書きと計算、将来行商に行けるようにと武器を学びました」


余りにも悲惨な話に息を飲む。


「そうしたら、下の姉も見初められました。馬家の幼常兄上の嫁にと。こちらは当然お断りしました。格が違う上にお金も……すると、馬家の紅瑩様がある程度整えて下さり、その上、兄が結婚を約束している相手がいると知って、こちらも……『家族だから』と……本当にありがたくて、それで、上の姉の借金は何とか返す目処がたったと言うのに、今度は恩のある馬家からの……それで祖父母が倒れ、父と兄が必死に金策に励んでおりまして、母は看病。兄嫁は幼い甥と姪の子育てで……とるものもとりあえず、駆けつけたのです‼」

「咲蘭ちゃんは悪くないのよ。でもね、額が額だったの‼けんを馬車一台分、他にも装飾だのを持ち出したのよ‼」

「ゲッ!」


 益徳たちは絶句する。

 関平達の使い込みも冗談ではないが、馬家の幼常の使い込みの額は半端じゃない。


 絹は最高級の褒美で、これを町に持っていくだけで、相当な食料と交換できる。

 冗談ではなく、家族数人が何ヵ月も食べられると言うのも本当なのである。


 その為、先日索は二反の絹を本当に喜んだのである。

 自分が努力して得たもので、母にと思ったのも本当に美談になる位である。

 それなのに……。


「お話を伺いました。納得しました。家では本当に上の姉の借金で苦しいんです。上の姉は自分勝手にしています。でも、下の姉の借金の額を払うまでは無理で……私がどこかの妾になるか、体を売るか……ですね。ご、ご挨拶をしたら帰ります。申し訳ありません。折角の衣装に化粧も台無しに……」

「な、泣かないで‼」

「……えっ?」


しゃくりあげる少女に、索が告げる。


「そんなの、姉さん達が返せばいいんだ‼君が必死になることない‼」

「で、ですが……」

「君は悪くないんだから、泣かなくていい‼紅瑩様のことだから、多分家族には一応、知らせるってことで、後でお姉さんと、幼常どのに払わせるから気にしないでって伝えるつもりだよ、絶対。それに君は多分、紅瑩様に誘き出されたんじゃないの?」

「誘き……?どう言うことでしょうか?」


 素直な世間知らずの少女を、家から飛び出させた理由……それは、


「多分、紅瑩様のことだから、女の子がいないから自分の娘にして、嫁に出す‼……アダダダ‼すみません‼嘘つけなくてすみません‼」


つねられ悲鳴をあげる索に、オホホと笑う紅瑩。


「本当だけど、索君に言われると、ちょっとりょうの言い方に似ていて、ムカッとしたわぁ」

「でも、その通りじゃないですかぁぁ……あぁ、アザになった……」

「と言うことなの。咲蘭ちゃん。ちょっとお嫁にいっちゃいなさい」

「……はぁ?えっと嫁って、家では娘を出すと身代潰すって、父がお前は特に出せないって。まぁ、お金もないし、不細工ですから……」


 その一言に、紅瑩はがっくりし、周囲は、


「いやいや、嬢ちゃんは可愛いぞ?」

「益徳どのに同意しますよ。幼常どのの奥方の妹さんとは思えない程、可愛らしいお嬢さんで……」

「そうじゃ!」


索は、父の声に振り返る。


「どうしました?父上」

「のう。紅瑩どの。わしの息子は若輩とはいえ、先日位が上がり、ある程度の収入があるのじゃが、息子の嫁にお願いできんかの?」

「はぁぁぁ~‼父上‼何をおっしゃって‼」


 索は訴えようとするが、


「わしは、孫の顔が見たい‼嫁も喜ぶぞ?」

「……っ‼」


索の母親大好きを知り尽くしている漢升かんしょうは、


「もう数年もすれば。こうも出歩くであろうし……、蕾果らいかはお前の嫁に喜ぶであろうなぁ……」

「うぅっ‼」

「想像してみよ。母が嬉しそうに嫁と二人、嬉しそうに話す姿を。男ばかりでむさ苦しい、暑苦しいのを続けてどうする‼可愛いこのお嬢さんを嫁に貰え‼」

「あの、可愛くないのですが、大丈夫ですか?」


咲蘭の言葉は無視し、漢升は告げる。


「わしは、可愛い嫁が欲しい‼お前のことじゃ、むさ苦しさは倍増じゃし、幼馴染み運に健康運、仕事運はあるが、絶対に恋愛の縁はない‼父として……頼むから早めに結婚せい‼」

「……あの、父上は私がむさ苦しいと?」

「そこにおる統とお前を見てみよ。整った美貌の少年と、お前はわしに似ているはずじゃのに、むさ苦しさ倍増じゃ‼父に可愛い嫁を‼見せてくれ‼いつまでもこの家の5人兄弟とじゃれあっとったら、嫁が来んわ‼」

「何言っているんですか‼私は、こちらに勉強と特訓をお願いに来てるんです‼それに、じゃれあうって幼馴染みですから‼何かおかしいんですか?」


 憲和けんわが示す。


「そこの統の顔は?」

「統の顔です。5人兄弟全員違う顔ですけど、何か?」

「美貌とか……」

「はぁ?美貌?普通ですよ?な?統」


 索の一言に唖然とする。


「お前の美貌の基準って誰だ?」


 憲和の言葉に、


「母上と琉璃りゅうり姉上と、循達の母上の木蘭様です‼」


美的感覚と、今で言うマザコンである。

 頭を押さえながら、


「じゃぁ、可愛いのは?」

「滄珠‼それに、統と一緒の祐蘭ゆうらんも可愛いと思います‼」

「で、お前的には、この嬢ちゃんはどうなんだ?」

「へっ?」


索はまじまじと見る。

 そして、自分がずっと少女の手を握っていたことに、改めて気がつく。

 その行為を思い至った時、顔を真っ赤にした。

 そしてたどたどしく、告げた。


「え、えっと、えっと……き、綺麗で、可愛い……です」

「ではどうする?父は、縁談を無理に推し勧めはせんぞ?お前の意思に任せるが?」


 混乱する中で思い至ったのはただ一つ。


「自分は構いませんが、彼女の意思を尊重して下さい。よろしくお願いします」


だった。


「よし。解った。と言うことで、馬家の方にご挨拶せねばの。六礼りくれいの準備をせねば‼盛大なものにしたいのぉ。では、紅瑩どの」

「えぇ、漢升将軍と縁続き、本当に嬉しゅうございますわ。ホホホ」


と、滄珠の手を引いて去っていく父と紅瑩を見送る。


「索兄さん。おめでとう。咲蘭様もよろしくお願いします」


と言う統の言葉も耳から抜けていったのだった。

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