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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
少し成長してきたでしょうか?刹那が幼いので、年相応であるか不安ですf(^_^)
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囲碁はこの時代にはほぼ完成されていたゲームです。

 屋敷にはいると、質素だが暖かな雰囲気をまとった雰囲気が漂う。


「あ、そうだ! そーしゅ!」


 てててっと奥から何かを持ってきたこうは、妹に差し出す。


「はい! 僕たちがね、選んだんだよ。皆で遊ぼうと思っているんだ!」

「これはなぁに?」

「囲碁だよ」

「囲碁? んっと……」


 滄珠そうしゅは、戸惑うように言うと、


「これさぁ、今、僕がにーちゃんたちに教えて貰ってるんだ。この間、滄珠が出来ないとか馬鹿にしてたって言う、髭じじいがいたからな。僕もちゃんと習い始めてるんだ。一緒に習おうよ! 滄珠と広兄ちゃん、どっちが強くなるか頑張ろう!」

「しょうしゅ……ちゅよくなれましゅか?」

「「「「「なれるよ!」」」」」


 兄弟の声が揃う。


「滄珠はお利口だから、絶対に上手くなるよ」


 長兄の金剛ダイヤモンドは自分と同じふわふわの髪の妹の頭を撫で、次兄のじゅんは頬に唇を寄せる様に、真顔で4兄のとうが、


「循お兄ちゃん。それ以上やったら、僕たちと月季げつきお姉ちゃんに滅多うち」

「……月季にだけは言わないで! 浮気じゃないよ! 滄珠は妹だから!」

「滄珠! お兄ちゃんと遊ぼう? お兄ちゃんが、滄珠に教えてあげる。お父さんにも教えて貰おうね?」


きょうは父親に瓜二つの顔でにこにこ笑う。


「きょうおにいしゃま。そーしゅ、おにいしゃまだいしゅきでしゅ!」

「僕もだよ! 滄珠が大好きだよ! 仲良し兄弟だね? お兄ちゃんと滄珠は」

「あぁ! お父さんも仲間に入れて! ひどいよ! お父さんを忘れるなんて!」


 孔明こうめいは訴える。

 公式では、銀色の髪を結い上げた、スッとした年よりも落ち着いた印象の参謀兼内政担当の孔明は、物静かで言葉をほとんど発しない。

 それなのに、お家ではコロコロと表情を変えて、笑顔や今のように拗ねた顔になるのに、滄珠はクスクス笑い出す。


「ガーン……お父さん笑われちゃったよ~!」

「ちがうでしゅよ! おとうしゃまのお顔、しゅごくだいしゅきでしゅ! おとうしゃまの笑っているお顔、しょうしゅだいしゅきでしゅ! しょうしゅは、おとうしゃまとおかあしゃま、おにいしゃまたちと桃花たおふぁちゃんがだいしゅきでしゅ!」


 必死に訴える娘を抱き締め、孔明は、


「解っているよ。滄珠はお父さんとお母さんの可愛い可愛い娘で、金剛たちの妹で、桃花のお姉ちゃんだからね?」

「おとうしゃま……だいしゅきでしゅ。だから……ここのお家に戻りたいでしゅ……」


滄珠の声が鼻声になる。


「おとうしゃまといたいでしゅ……おかあしゃまとお話ししたいでしゅ。あっちのお屋敷、いやでしゅ……ふわぁぁぁん!」


 泣きじゃくる滄珠の髪に頬を寄せ、こちらも瞳が潤みそうになるのを堪える。


「ごめんね……ごめんね! お父さんが悪いんだ……ごめんね……ごめんね!」

「違うぞ! 滄珠! 兄ちゃんは悪くないぞ! 悪いのは髭おっさんと、関平かんぺいっておばさんだ! それと……殿もだ!!」


 ほうの一言に、何かを言いかけたさく鳩尾みぞおちに蹴りをかまして悶絶させた弟のこうが、苞の弟のしょうと共に、


「姉ちゃん! 滄珠姉ちゃんは将来苞兄ちゃんのお嫁さんだぞ! だから泣いてると、あの美玲みれいおばちゃんに頭突きかまされるぞ! 俺と苞兄ちゃんはいっつもゴーンだぞ!」

「それにお姉ちゃんは、可愛い女の子なんだから笑ってないと駄目だよ? 母さん言ってたよ? 琉璃りゅうりお姉ちゃんと、滄珠姉ちゃんが笑うと本当に美人母娘びじんおやこ。桃花もいると本当に眼福! あの可愛さをうちの娘に身に付けさせたいのに! 何で? 何で二人共お転婆に育ったのかしら! 貴方ね? って、とーちゃん殴り飛ばしてたよ」


 その言葉に、孔明は娘を抱き締め、頬を寄せながらクスクス笑う。

 その姿が容易に思い浮かんだのである。


「まぁ、あの二人ははっきりいって、循お兄ちゃんみたいに美人になりたいだって! なれる訳ないのにね。あ、根性だけはなったら困る!」


 興の一言に、ピキンっと表情を強ばらせる循に、


「わぁぁ! 索! あれ、何とかしてくれ! お前の弟だろう! 循が自分の顔に嫌だって言ってるのは知ってるだろう! 美人顔で女装させたいとか、変態男に襲われかけたとか……いうな!」


金剛の言葉に、循の表情が強ばっていくのだが、当人は、


「索! 自分の弟だろう? 一言多いんだと説教しろ!」

「い、いや……興も一言多いが、お前も一言多いと思うんだが……」


顔をひきつらせる索に、


「そうなのか? 余計なことを言ったか? 循」

「……そうですねぇ……」

「いつもの顔だ。気にしてないぞ」


金剛の笑顔に腕を組み、冷たい笑みで循は、


「兄さんも! 索兄さんも、興も、特別訓練を後でさせてあげるから……待ってろ!」

「笑ってる……お父さん! 循お兄ちゃんが、怖いよ~!」

「循。滄珠の前ではやめなさい。じゃぁ、囲碁の名手の喬に教えて貰いながら、循とやってご覧? 滄珠? 勝ったら、お父さんから贈り物。負けた循は兵士部隊に入って特訓!」


父の言葉に慌てる循。


「お父さん! 僕が負けるとでも言いたいんですか?」


 食って掛かろうとする少年に、孔明は統にこそっと囁き、クスクス笑った統は、次兄に耳打ちする。

 妹の顔をちらっと見て、目をそらせた循は見る間に青ざめる……。

 その様子に、


「おとうしゃま? 循おにいしゃまはどうしたのでしゅか?」


滄珠の言葉ににっこり笑った孔明は、


「元々ね? 循は喬と囲碁をするのは苦手なんだよ。だから、負けちゃったら兵士と同じ訓練は嫌だなぁ……だって」

「循おにいしゃまは、しょう言えば、剣の稽古いないでしゅ」

「喬も苦手だけど頑張っているのにね? だから、負けちゃったら統たちと同じ訓練! 滄珠を守る為なら頑張るよ! だって。ね?循」

「……お、お父さん! い、い、意地悪だぁぁ!」


循は叫ぶ。


 正統な囲碁を得意とするのは喬であり、策略を巡らすのは循が得意である。

 それなのに、可愛い妹の前でそんなことができる訳がない。


「さて、行こうかなぁ? お父さんは楽しみだよ」

「……あぁぁ! 地獄だ……」


 嬉しそうな父に、泣きそうな息子が追いかけていくのだった。

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