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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
成長した子供達のそれぞれの日々(*´-`)
25/84

孔明さんは、夢の中で楽しそうです。

 周囲が心配する中、孔明こうめいはのんびりと実はしていた。


 いや、考えていた。

 彼にしては真剣に熱心に……後で目が覚めた時には、きん金剛ダイヤモンド子龍しりゅう達が呆れる程に。


 考えていたのは、まず最初は琉璃りゅうりと子供たち、家族。

 その後はもちろん、国や周囲の人々のこと。

 特に投降した張任ちょうじんの身の安全の確保は急務かもしれない……ちなみに、孔明は張任が名前を捨て、趙子龍を名乗っていることを知らない。


 だが、本当に考えていたのは未来……。

 しかし、何時もなら暗く重苦しい行く手が、もやのかかったような道の先が、スッキリとしている。


「うーん。金剛が梅花メイファどのをお嫁に貰うなら、家の増築した方がいいかもしれないな……それとも、じゅん公祐こうゆう殿の邸で、きょう玉蘭ぎょくらんどのを迎えて、あ、とうは……あの子はねぇ……本当に甘えん坊だから、喬と一緒‼って絶対言うし……」


 ブツブツ呟く。

 しかし……、


こうも来年、もう11か……大きくなったなぁ」


フフフッと笑う。


「皆、皆……成長してるんだよね。悲しいと言うか、寂しい……のかな?」


 少し考え、


「違うね……嬉しい……嬉しいことなんだ。早く滄珠そうしゅを取り戻して、そして……見届けて送り出す。桃花タオファも大きくなるし、うん。父親として……見守って……送り出す。いつものこと」


何時もなら、孔明はこの時に苦しく空しくなるのだが、今は違う。


「でも、琉璃は傍にいてくれる。今は離れているけれど、ずっと一緒にと約束したんだ。手を繋いで歩こうって……昔は、私が道を切り開くからって言ってたけど、あれでいて琉璃も頑固だもんね。誰の影響だろう……一緒に行くって……」


 自分の手をふと、見つめた。


 血に染まった両手……。

 昔は、この手を憎んだけれど、苦しみ抜いたけれど……。

 それでも家族は、琉璃も子供たちも、血に染まった孔明から後ずさることなく、逆に、


「旦那様‼」

「お父さん‼」

「わぁぁん‼お父さんだぁぁ‼」


と抱きついて、


「怪我は?」

「お父さん、痛くない?」

「あ、お父さん。一緒に井戸に行こう‼広も水浴びする~‼」


それぞれが口々に話しかけ、それはそれは元気一杯‼のやんちゃぶりだったのだが、最近は成長と共に悩むことも、我慢して言い出せないと言いたげに、声を殺して泣くようになった。

 時々は口喧嘩が高じて殴り合いの喧嘩もあり、心配で……しかし、逆に口を挟むのは良くないと琉璃や特に循の父、公祐と話していたのだが……。


「金剛は……本当に強い子に育ったなぁ……おっとりしてると思ったけれどしっかりしてきて、武器も用いるけれど、ちゃんと勉強も怠らない」


 成長と共に実力はぐんぐん延びていき、最近は『金の若獅子』と言う風に呼ばれていることを本人は知らない。


「循はもうちょっと落ち着いて、悪巧みを考えているのを表情に出さないようにならないとね……あれじゃ、公祐どのに『特訓‼』って言われるよね。だけど、表情がくるくる変わってうん。良い子に育った」


 昔は、暗くてオドオドとしていた。

 躊躇いがちにおずおずと発言し、どうしようどうしよう‼と混乱していた。

 その為孔明も公祐も循の話を聞く、そして聞いた話を丁寧に返すことを心がけた。

 問いかけるのも恐れていた息子に、話してごらん?と促して、誉めてあげる。

 そう心がけ、安心しなさい、ちゃんと聞いているよ?と伝えることで、嬉しいことなんだと理解させたのだ。


「喬は優しい子になったなぁ……本当に可愛い。でも、最近よく熱を出すんだよね……それが心配だよ。無茶だけはして欲しくないんだけど……平和になったら、昔のように笑ってくれると嬉しいな」


 親馬鹿ではあるが、一番傍にいた喬には甘くなる孔明である。

 兄弟が増え『お兄ちゃん』を頑張っていたが、元々は甘えん坊である。

 夜泣きもあり、良く琉璃と二人をだっこにおんぶであやしたこともあった。

 最近は、統に甘えているようでいて甘やかしている。


 苦笑する。


「統はぐんぐん大きくなったけど、代わりに喬に甘えるようになって、お父さんは寂しいです。でも、あの子の笑顔が見られるようになって嬉しい」


 荒んだ瞳で、痩せこけたまま姿を見せた統は、本当に怯えて絶望感にさいなまれ泣きじゃくった。

 抱き寄せても逃げようとするのを、抱き上げてお湯に入れて体を洗う。

 そしてさっぱりした衣を着せて、お菓子を食べさせた。

 最初はビクビクしていたものの、弟の広はきゃっきゃとはしゃいでいて、


「おいしー!にーちゃ。おいしーよ‼」

「た、食べたの?あんなにお兄ちゃんが毒味するって‼」

「お姉ちゃんが、いっしょにたべよって、だいじょぶよーって」


琉璃を示す広に、統は一瞬泣きそうになった。

 自分達がどうなるのか、不安でたまらなかったのだろう。

 すると、一緒にいた喬が近づいて手を握った。


「統?僕がお兄ちゃんだからね‼大丈夫。お兄ちゃんが毒味するから、はんぶんこしよ‼それにね、お兄ちゃんもう一個持ってるから、それもはんぶんこだよ‼兄弟だもん‼一緒だよ‼」

「お、兄ちゃん……?」

「そうだよ。僕がお兄ちゃん‼統は僕の弟‼それにね?お父さんとお母さんはとっても優しいよ‼だっこして、高い高いしてくれるんだ‼遊ぼうね‼それにご飯も美味しいの‼」


 目の前ではんぶんこされた菓子を、パクンっと食べて見せた喬は、もぐもぐと口を動かす。

 統は不安げにそして、美味しそうな甘い香りのする菓子を見ると、思いきったように口に入れる。

 固いと思っていたのか、力一杯噛んだ統が、あれ?と言う顔になり、やがて目を輝かせる。

 小さい半分はすぐになくなり残念そうな統を見て、喬はニッコリと、


「はい。もう一つは統が食べて。お兄ちゃん、お腹一杯‼お兄ちゃんの分も」


手の上に乗せられた菓子を見て、統はボロボロ涙をこぼした。


「と、統?い、嫌だった?」


 おろおろする喬に、泣きながら笑う。


「あ、ありがとう、お兄ちゃん。嬉しい……」

「良かったぁ‼あのね‼そのお菓子は木の実を干したんだよ。お家で作ってたんだ‼一杯僕もお手伝いしてたの‼今度その木があったら一緒に作ろうね‼で、一杯食べよう‼」

「うん、うん……お兄ちゃん、おいしい……」


 喬は涙をぬぐい、必死に話しているが、喬には解らなかっただろう。

 統は、ずっと『お兄ちゃん』をしていた。

 それに幼い弟はやんちゃで手が離せず、その上一緒に行くと着いてきた4才上の少年も、統のように強い責任感はなく、自分勝手な所があり、統が我慢するしかない。

 ずっと旅を続けて、たどり着いた先では目的の祖父はおらず、信じて良いのか解らない夫婦。

 弟は懐いてしまったと言うのも衝撃で、どうすれば良いのか解らなかったのだ。


 動揺し警戒し固まった統に、喬はすんなりと入り込み、ニッコリと笑い、


「僕がお兄ちゃんだからね?一緒だよ‼」


と言い、いつもは毒味をしていたのに、先に味を確認してくれた。

 その上、いつも広に言っていたのだろう。

 お腹が空いていても、


「お兄ちゃんはお腹一杯‼全部食べて?」


そう言って差し出してきたのだ。


 抱き上げた時も、広は少し痩せてはいるが健康的だった。

 しかし、統は身長の割りには軽く、体を洗うとガリガリに痩せていた。

 飢えて死ぬ寸前に近い程、頬はこけて顔色も悪かったのだ。

 甘えることは許されない時の終わりに、祖父の代わりに手をさしのべてくれた『お兄ちゃん』に、統は『お兄ちゃん』から解放されたのだ。


 だから統は『お兄ちゃん』に執着する。

 甘える……けれど、本人も解っている。

 だから時々、部屋の外で声を殺して泣いているのだ。

 自分は離れなくてはいけないのだと……。

 統は賢い子なのだから、解るはずではあるのだが、あえて言わない。

 父親が言ってもきっと解らない。

 あの頃の『孔明』ならば伝えられただろうが……。


「まぁ、成長してるんだよね、統も。この間は循と殴り合いしたし。循は本当に本音を突くと言うのか……無意識に人の気に触るようなことを、しかもあの毒舌で言うものだから、普段は冷静さを装ってる統を怒らせちゃったんだよね……」


 あの時は琉璃が駆け込んできて、行ってみると、喧嘩した二人だけでなく、喬が傷だらけでしかも倒れていた。


「お兄ちゃん‼」

「統‼揺するな‼」


 金剛は怒鳴り、そしてまず、循に近づき平手打ちをした。


 パーン、と良い音がして、


「循‼お前は兄貴だろ‼弟いじめてからかうんじゃない‼自分が失敗して癪に触ったからって、統に八つ当たりするな‼」

「……ッ!」

「統に謝れ‼それと、失敗するってことは、次は失敗しないと思え‼必死で人間はやればできる‼それ位生きてきて解ってるだろ‼」


 うなだれた循は、弟を見て、


「ごめん……統。宮廷で……上手くいかなくて。怒られてるのは良いんだ……父さんと母さん、父上と母上の事を……ねちねち言われて、ムカついたんだ。殴れないし……」

「殴れない?上司?」

「……お前の馬鹿上司。関平かんぺい殿‼ムカついた……アイツ、自分は何にも出来ないのに‼母さんと母上を侮辱した‼父さんと父上も‼男だったらアイツ殴ってた……敵だったら、殺してやったのに‼」


 キョトン?


統は首を傾げ、


「あのオバさん一応武将だから、そのまま訓練場に引きずっていって、叩きのめしたら良いんですよ?兄さん」

「はぁ?だ、だって父さんと約束……」

「え?父さんと約束したのは普通の、華奢で小さな女性でしょう?でもあのオバさん、普通じゃないし、可愛くないしブサイク‼女性じゃないです‼私は嫌いなので、お兄ちゃんと父さんとお母さんの事を言ったので5、6回殴り飛ばしましたよ?」

「……そ、そんなに⁉」


 ア然とする気絶した喬以外の3兄弟と、それを窺っていた孔明と琉璃である。


「えぇ。兄さんでも一撃で伸せる、余り気にならないやり方教えますよ?それに、お願いして訓練場で訓練してましたー‼で、ある程度融通利くんですよ?ね?金剛兄上?」

「あ、うん……まぁ、俺の上司は強いから無理だろうが、何だかんだ言うのなら、お前を見くびっている証拠。訓練しましょうでよし‼」

「ほら、ね?兄さん。悪賢いのに、何でその点は融通効かないんでしょうね?それは、月季げつき姉上にしてあげて下さい」

「ぐぅぅ……やっぱり統は、私を馬鹿にしてる‼」


 悔しがる循の横に統は立って、長兄を見上げる。


「兄上、喧嘩は駄目って約束したのに破ったので、私も……」

「ダメェェェ‼」


 気絶していたはずの喬が起き上がって、統の前に両手を広げて立ちふさがる。


「統を叩くなら僕を叩いて‼僕がもっともっと強かったら、統を馬鹿にしない‼僕は統のお兄ちゃん‼仕返しは今度するから‼それで、僕が統に叱るから‼統は叩かないで‼」


 その時、孔明は頭を抱えた事は言うまでもなく、仕方なく慌てて出てきた振りをして、


「喧嘩をした理由を説明して。で、ある程度内容によっては反省会‼もしくは父さんの書簡を写す作業の手伝い‼」


に、5人は……特に金剛と循はホッとした。

 ちなみに、一番弱い頭脳派の喬が、兄弟の中で一番愛されていて、叩くのは絶対に困る‼らしい。


 が孔明は、喬の頬が腫れ唇が切れているのを見て、


「……その前に、この喬の頬の傷は誰がやったの?」


怒る父に、金剛と統と広は犯人を差し出した。


「循‼おいで‼喬と統の手当ては頼んだよ‼」

「「「はい‼」」」


と言う風に引っ張っていき、手当てをしながら、


「循?父さんと公祐殿、それに琉璃を見くびらないで欲しいね?」

「えっ?な、何かなぁ?」


視線をそらそうとした息子に、爆弾を投下する。


「父さん。益徳えきとく殿に言われてるんだけど、あの髭親父より強いんだけど?」

「えっ‼ひ、髭って……」

漢升かんしょう殿とは、引き分けたって言うけれど、実際は漢升殿が手を抜いたんだよ?あの程度で将軍名乗るなって笑ってるんだけど?」

「……ごめんなさい。次からは相談して、そしてもっと力をつけたら自力で……」


 半べそにしかみえない、しょげぎみの息子に、


「そうしなさい。出仕してから5年は半人前だよ。まだまだ」


そう言ったことを、思いだし孔明はクスクス笑ったのだった。

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