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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
少し成長してきたでしょうか?刹那が幼いので、年相応であるか不安ですf(^_^)
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季常さんは関平さんと結婚していたようです。

 わいわいと騒いでいると、


「あ、あの……」


小声がして振り返ると、益徳えきとくの巨体の前に、息子のほうしょうと手を繋いでいる小さい子供がいる。


「あぁ、ようこそ。益徳どのに苞くん、紹くん、そして……お帰り。滄珠そうしゅ


 孔明こうめいが、息子たちを下ろすと微笑む。

 その言葉に、ぱぁぁっと顔を赤くして、てててっと駆け寄る。


「おとーしゃま!」

「滄珠! 元気そうでよかった。お利口にしていた?」


 抱き上げた孔明は微笑む。


「あい、おとーしゃま。しょうしゅはおいこうしゃんでしゅよ」


 えへへ、とはにかむように笑う姿は、母親そっくりである。


「そうだねぇ。お利口だね~……でも、この傷は?」


 滄珠の可愛いポッチャリとした頬に、唇の端の傷に気がつき、眉を寄せる。


「……あ、だいじょうぶでしゅよ。しょうしゅはちゅよいこなのれしゅ」

「孔明師匠! 大丈夫だぞ! あの、関平かんぺいが殴ってたから、俺と紹でぶん投げといた」

「ついでに、季常きじょうどのをお父さんが殴ってました」


 苞と紹の一言に、父の腕から滄珠をだっこした金剛は、


「二人とも、ありがとうな! 俺が、もっと滄珠に近いところに配属されれば……」

「僕も同じ」

「僕も」


じゅんきょうも唇を噛むと、とうが、


「僕、公祐こうゆうさまのつてを頼って、滄珠の警護に任命されました。それに、玉蘭ぎょくらんお姉ちゃんと月季げつきお姉ちゃんも同じです」

「はぁぁ? いつの間に?」


金剛の問いかけに、統は、


趙子竜ちょうしりゅうの孫と言うことが強いんでしょう。それに、関平どのはあれだし、苞はまだだと思う」

「何でだよ!」


 むかー!


食って掛かる苞に、統は穏やかに、滄珠の頭を撫でながら答える。


「冷静沈着、かっとなっては前が見えないよ」

「うっ……」

「それに、武力だけじゃなく、ある程度知略を持たなくちゃ。金剛お兄ちゃんはその点優秀だから、だから、黄漢升こうかんしょうさまに着かれているものね。漢升さまは本当に強弓ごうきゅうを扱うだけあって膂力りょりょくもお強いし、羨ましいよ」


 統の言葉に金剛は、


「まぁなぁ……お前、運が悪いよなぁ……上司があの叔父上と関平どのだろう?……って、うわっ?」


口を押さえる金剛。

 益徳の後ろから現れたのは、馬季常ばきじょう本人である。


「お久しぶりです。敬兄けいけい、そして琉璃りゅうりどの。そして皆……元気そうですね」

「交渉は?」


 庇うように金剛から娘を抱き取り、表情を消したまま孔明は問いかける。

 それを寂しく思いつつ、自らの過ちの為に作り出した溝を無くすことの出来ない、才能のない自分を心の奥で嘲笑あざわらいつつ……。


「上手く……出来ました。これから効力を産み出す為に、さらに動くつもりですので、しばし、お会いできない旨をお伝えしに参りました」

「遅い! それに、これは何?」


 冷たい口調で、孔明は滄珠の頬を示す。

 季常は顔を歪め、


「申し訳ありません。わが妻女が目を離した隙に……。あれを連れていくと問題多発で、連れていかないと倍増で……」

「でも、めとったからには、責任は夫である季常にある。上司である私が命ずる。このようなことが次あれば、杖刑じょうけいに処すと。信賞必罰しんしょうひつばつを徹底しなくては、乱れるのが政治であり、軍であり、全て! 今回は罪に咎めない。しかし次はない!解ったね?」

「は、はい! では、行って参ります!」


帰っていった季常の背を見送った後、


「滄珠?お母さんと一緒に、赤ちゃんの桃花タオファと遊んでおいで」

「良いのでしゅか? 阿斗あと……」

「滄珠? ここのお家では、お父さんとお母さんとお兄ちゃんたちと、お姉ちゃんと家族だよって言ったでしょう? お兄ちゃん。特に、はーい、喬? 統お兄ちゃんと手を繋いで行っておいで」


喬と統と手を繋いで貰い、共に母の元に向かう。


「お帰りなさい。滄珠」

「おかーしゃま、ただいまかえりましゅた。喬おにーしゃま、桃花ちゃんみたいでしゅ」

「いいよ。はい。桃花? お姉ちゃんが来たよ?」


 喬は抱っこして、赤ん坊を見せる。


「可愛いでしゅ! お目目、おかーしゃまとしょうしゅと同じでしゅ」

「そうね。桃花? お姉ちゃんよ?」


 にこにこと笑っていた赤ん坊は、滄珠を見るときゃっきゃっと小さな手を差し出す。


「滄珠が大好きなんだねぇ? 桃花は。滄珠? お手々握ってあげようね?」

「あい! 桃花ちゃん。おねーしゃまでしゅよ~。ぎゅってしましょうね」


 握手と言いたげに、すると、滄珠の指をぎゅっと握りきゃぁぁと喜ぶ。


「桃花は、滄珠が大好きなのね。お姉ちゃん大好きよって言ってるわね」

「又、阿斗さまを勝手に連れ去るのは、止めていただけないかしら!」


 キンキン声で入ってきたのは、だらしない格好で姿を見せた関平である。


「勝手にしないで頂戴! こっちが迷惑だわ!」


 つかつかと近づいてきた関平に、益徳が間に立ちふさがる。


「うるせぇ! 俺が阿斗さまの守役だ!お前ら夫婦が全く仕事をしねぇから、俺と美玲みれいが、面倒見ているんだろうが! 役目を果たさないのはお前らであり、職務放棄を責任転嫁するな!」

「阿斗さまを呼び捨てして、何考えている訳? 何してるのよ! 仕事もしないで!」

「申し訳ありませんが、職務放棄は関平どのの方が多いかと思いますが?」


 統がゆっくりと近づき、仮の上司を見上げる。


「武器の手入れ、訓練もせず、勝手に城内をフラフラするのは、仮にも上の立場としてあり得ないかと思いますが? 今日は、母……趙子竜ちょうしりゅう将軍は休暇、諸葛参謀しょかつさんぼうもです。私たちも休暇を頂いております。職務にお戻り下さい」


 丁寧と言うよりも慇懃無礼そのものの仕草で頭を下げる。

 統は基本的に5人兄弟の中で一番大人しく、基本おっとり型だが怒らせると厄介である。

 それなのに……。


「何ですって! この、今年入ったばかりの若造が!」

「じゃぁ、仕事そっちのけで遊んでいるただのおばさん、出ていって下さい。人の家に勝手に入ってこないで下さい。大迷惑です」

「お、お、おばさん……! この私を!」


 柳眉を吊り上げる関平に、異母弟のこうが、


さくお兄ちゃん! あのおばさん、こわい!」


とべそをかきながら、兄に抱きつく。

 本当に怖いらしく怯える弟を索は抱き上げ、よしよしとあやすと、


「おばさん。出ていけよ。ここは、孔明師匠の屋敷であり、益徳親父がちゃんと護衛として連れてきているんだ! 仕事をしないあんたを、誰が信用する? 出ていけよ! ちい姫の護衛とか言いながら、あんたは、又何をしてるんだ! 怯えてるじゃねぇか!」


 怯える滄珠を兄弟が、苞に紹がかばい睨み付ける。


「帰れ! あんたがこの家にいる理由はない! 早く帰って、自分の亭主や親父に泣きついたらどうだ!」

「くっ!……」


 悔しげに唇を噛むと、立ち去る。


「全く、いい加減にしやがれ! 迷惑だ!」


 舌打ちをした索は、はっとしたように、


「す、すみません……失礼な態度を……」


頭を下げる。


「索は良いよなぁ……お前のその厳しさ、強さは俺も尊敬するよ。見習わなきゃな」


 金剛の言葉に、索は苦しげに笑う。


「いや、俺は……余り出来た人間じゃ……」

「そうか? 普通、出来た人間っていないと思うぞ? そこまで考えることが出来るのは強いからだ。西涼せいりょうの親父なんて母上に甘えて、全くアホだぞ? 父さんやきん叔父さんやおばあさまにぶん殴られて、ようやく動いたからな」

「そうだったのか……」

「そうだよ。アホ。でも、自分を律するのは良いことだと俺は思うよ。前に話を聞いたけど、次しないぞと自分に言い聞かせて、努力できるのが良いところだと思う。もっと自信をもてよ」


 年の変わらない少年の言葉に、表情を緩ませると、喬が突っ込む。


「でも、気を抜くと失敗するからね。索兄さんは」

「そうだそうだ! 索にいは失敗する。金剛にい、あんまり喜ばせるなよ。図に乗るぞ!」


 広の一言に、


「広!」

「抜けてる索にいは、循にいの命令にちゃんと従うんだぞ! 幾ら黒くても、一応参謀見習いだからな」

「……ほーぉ。広は僕をそんな風に思ってるんだ~?」


循がにっこり笑う、その恐ろしさに喬の後ろに逃げ込む。


「喬にい! 助けて!」

「えっと……循お兄ちゃん怒らせると駄目だよ? 広」


 ちなみに喬は、糜子仲びしちゅうに着いて、内政の官僚を目指している。

 循は参謀見習いとして、勉強中である。


「はいはい。じゃぁ、中に入って、皆で遊ぼう」

囲碁いごしようよ! 循お兄ちゃん」


 喬はにこにこ笑う。


「そうだね。ぼくも喬とやりたいな」

「僕も僕も!」

「統は次ね?」

「うん!」


 暖かな一時……子供たちに囲まれ琉璃は入っていき、孔明は微笑みながら、


「益徳どのに士元しげんも、皆もどうぞ。休憩もいいでしょう?」


 主が客を招き入れる……ここは、暖かなお屋敷……。




 しかし、皆、戦いが始まることを理解していたのだった。

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