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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
成長した子供達のそれぞれの日々(*´-`)
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金剛君がいつも思うのは、孔明さんのすごさです。

 金剛ダイヤモンドは先にと思う気持ちを押さえつつ、婚約者となる梅花メイファを守り進む。

 たとえ、周囲の者が信用に足るものとはいえ、女性を守れぬ男は男ではないと、祖母の珊瑚さんごにコンコンと言われ続けて育った人間である。

と、


「金剛‼無事だね‼」


背後からやって来るのは、父、孔明こうめいの弟のきんと、実父、孟起もうきの妹の瑪瑙めのうの夫で、ほう令明れいめい

 令明は、自分の父親代わりである。

 その後ろから手を振り、


「兄ちゃーん‼」

こう‼」

「行って‼俺が、姉ちゃん守るから‼」


その言葉に、


「頼んだ‼……えっ?均叔父さんも行くの‼」

「この私に勝てると思うな?」


長距離を走らせてもけろっとしている叔父が、文官とはいまだに到底信じられないが、金剛は、


「じゃぁ令明叔父さん……ではなくて、将軍‼広は頼りない‼将軍が上になり、指示をよろしくお願い致します‼」

「解った‼気を付けなさい‼」


猛将ではあるが冷静沈着で、年長の黄漢升こうかんしょうの側近として指示を与えている叔父に、にっこり笑い、


「はい‼」


と、速度を早め先を急ぐ。




 しばらくすると道が狭まり、上から矢が降り注ぐのを、楯の代わりに荷車を壊し、必死で移動している軍に迫る。


「ヒィィ‼背後から敵が‼」


と叫ぶ声に、


「私は、諸葛孔明しょかつこうめいの弟の均‼参謀の士元しげん兄上はおられるか‼急使である‼」


均は叫ぶ。

 そして、金剛も声をあげ、


「安心して下さい‼皆さん‼私は諸葛孔明の息子、金剛‼上司のほう令明将軍の命により、後から味方が追い付く旨、先触れとして告げに参りました‼父、孔明は‼」


近づき、矢をなぎ倒す均とは違い、強弓を構え次々と上に射返していく。


「こ、孔明は……多分、あっちだ……」


 細い声に、馬から飛び降りた均が安全な陰に置き、走り込む。

 数本の矢が刺さった士元が、庇う部下の仮の楯の隙間から這うように手をうごめかせる。


「士元兄さん‼」


 均が、腕をつかみ引きずり出す。


「……わ、りぃ……しくじっちまった……。目を……やられたぜ」

「目を‼見えないの⁉」

「……あはは……あの、髭が、俺の目を斬ったんだ。『裏切り者だ』とな。で、捨てられた。だが……」


 血を流す顔で見回し、


「皆が……俺を助けてくれた‼それに、孔明が‼」

「まずは、兄さん‼この後ろに馬車がある‼引き返そう‼」

「駄目だ‼俺の命を救ってくれた皆を、孔明を置いていけない‼俺は……‼」


仮の手当てを受け、顔を覆った布を剥がそうとする士元に、


「士元さま‼」

「参謀‼お止め下さい‼」


自らも怪我をした兵士たちが泣きながら叫ぶ。


「捨てられた私たちを何度も庇ってくれた、守ってくれたのは、士元さまです‼」

「そうです‼士元さまと孔明さま‼皆様が私たちを‼」

「お願いです‼諸葛さま‼士元さまを‼」


 均は頷く……が、


「均叔父さん‼皆さん‼後続が着ました‼味方です‼」


金剛の声に、令明の、


「この、ほう令明‼お前たちのやわな矢に負けると思うな‼皆も安心しろ‼後続に援軍がある‼黄漢升将軍が援護に来られるぞ‼行くぞ‼」


の声に、


「おぉ‼令明将軍が‼」

「漢升将軍も来られるとは‼」

「まさに、天の助け‼」


泣きくれて、士気の落ちかけていた傷だらけの軍が奮起する。


「行くぞ‼金剛……諸葛士官‼脇を固めよ‼」

「はっ!将軍‼」


 弓を構え、敵を射ようと崖を見て、金剛は愕然とする。


「と……」

「何やってんの‼兄ちゃん‼弓を射ないと‼」

「広……あ、あれ……」


 顎で方向を示すと、広も真っ青になる。


「ととと、叔父さん……」

「何‼ほら、広‼士元兄さんを馬車に‼」

「わ、解ってるけど、あれ‼ギャァァ‼」


 指を指し悲鳴をあげる。

 士元を押し付け馬を引きずって、方向を変え蹴り飛ばした均は、指差していた場所を見て、


「……あぁぁ……やると思ったよ‼金剛‼弓兵に命じて、私と兄様を射ぬかないように、矢を放ち続けよと命令を‼足りなかったら、そこらの板に刺さってるの抜いて射返せ‼」

「はっ……って、叔父さん‼何やってんの~‼」

「叫んでる間にやれ‼」


 均は、崖をスルスルと登っていく。

 そしてその反対の崖の上には、矢を何本も受けているというのに、敵から奪ったらしい矛を振るい、暴れている巨漢……ではなく、自分達よりも身軽な格好で……途中で邪魔で防御用の武具を脱いだらしい……細身の父。

 遠い目をなりそうになりつつ、一応、応援がわりに、


「皆‼あちらの崖の上には諸葛参謀が、自ら武器をもって戦っている‼皆を守る為に‼気持ちだけで良い‼強く持て‼参謀が我らにはいる‼我らを守るのは諸葛参謀、士元参謀‼まさしく竜と鳳凰‼負ける訳がない‼」


と叫び、示された崖を見上げた兵士が、目を輝かせる。


「おぉ‼参謀が‼あのように我らを‼」

「共に戦ってくれているとは‼」


 甥と共に遠い目をしつつ、令明は何とか立ち直り、


「そ、そうだ!我らには、敗けはない‼生きて生きて、二人の参謀と共に進むのだ‼死にに行くのではない‼生きるのだ‼見よ‼竜の軍師が着いている‼」


と鼓舞し、ますます士気は高まり、そして、反対側を攻撃していた弓兵たちが、


「あぁぁ‼あの細身は、諸葛参謀の弟の、諸葛文官‼あの方も‼」


そちらを見た甥と叔父は悟る。


『あの兄弟二人で、敵は壊滅間違いない。自分達は、矢を避けつつ落ちてくる兵士を捕獲するか、怪我人収容のみに力を注ごう……』

『じゃぁ、俺は一応弓兵を指揮し、叔父上は前後を注意しつつ‼お願いします‼』

『解っている‼行くぞ‼……私たちは、あそこまでの破壊力はない‼』

『そうだね、叔父さん……今さら思うよ……』


 視線で会話した二人は、それぞれの仕事に移ったのだった。


 ちなみに、梅花に士元を預け戻ってきた広は、ワクワクと、


「父ちゃんに叔父さんができるんだ‼俺も~‼」


と登り始めたのを、金剛が捕獲し、叔父に投げ飛ばし、


「広……怪我人の手当て……出来るな?いや、やれ‼」


と、令明に低い声で命じられたのは言うまでもなかったのだった。

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