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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
成長した子供達のそれぞれの日々(*´-`)
16/84

梅花ちゃんの視点から見ると?そして、統くんの黒さは?

 糜子仲びしちゅうの娘、梅花めいふぁから見た金剛ダイヤモンドは、


「何で皆さん、ビックリするんでしょう?変です?ちゃんと綺麗な身のこなしに、丁寧で優しい言葉、目もあるしお鼻も耳も。なのに?」


と首をかしげる人だったと言うか、普通の少年だった。

 梅花より一つ年上で背の高い少年を、大きいなぁ、羨ましいなぁ、あんなに大きければ益徳えきとく叔父上と遊ぶ時に楽しいだろうなぁとまじまじと見上げるのだが、


「そんなに見ちゃダメだよ!失礼だよ」


と兄たちに叱られると、


「何でですか?」

「女の子だから、ちゃんと礼儀正しく」

「してます。でも、何で、皆変なんですか?あのお兄さんのこと……」


兄たちは平然として普通だが、何故か周囲は離れ遠巻きにしている5人兄弟を示す。


「ん?あぁ、馬鹿の偏見だね」


 娘の頭を撫で、そっと引き寄せ父は告げる。


「偏見?」

「そう。金剛は趙子竜ちょうしりゅうどのの伯母上の嫡孫。だからあの瞳と髪をしている。珍しい自分達は黒い髪と瞳、でも彼は違うからおかしいと思い込んでいるんだ。愚かだね」

「そうですねぇ?お父様。梅花はお兄様とお話したいです。ダメですか?」

「おや、珍しいね?」


 子仲は頬笑む。

 子沢山で孫もいるが、子仲にとっては賢く、可愛い娘は特に自慢である。


「今日は、孔明こうめい殿達を招待しているんだよ。皆も来るそうだから、お話ししてごらん?」


 その言葉に目を輝かせる。


「わぁ‼じゃぁ、じゅんさんときょうくんと、とうくんとこうくんと遊んでいいですか‼特に、統くんと勝負‼」

「それはダメ。危険だから」


 真っ青になる。


 子仲が心配しているのは、一度暴走した梅花が突進して胸元を掴んで、1つ下の喬に勉強を教えてくれ‼と力の余りに投げ飛ばし、統と喧嘩になったのである。

 いや、周囲は破壊的、壊滅的被害になったのだが、梅花は統が怒っていると言う意味が解らず、遊んでいるつもりだったらしい。

 先に仲良くなっていた喬が慌てて統を止めて理由を説明し、仲直りさせてくれたお陰で、被害は運良く子仲の邸ではなく、統が嫌っている主君の仮の邸の半壊ですんだのだが、そこに居候している雲長うんちょうは散々な目に遭ったらしく、食って掛かってきたのだ。

が、


「子どもの喧嘩に文句を言わないで欲しいですね。良いじゃないですか、子ども同士、仲直りできたんですから」

「あはは、てめえは仲直りもできねぇけどな」


公祐こうゆうは穏やかに、憲和けんわは皮肉たっぷりに斬って捨ててくれた。


 そして、子仲が統に娘の暴走行為の悪気は全くないことを説明し、謝罪した所、


「子仲叔父上。お姉さん……梅花お姉ちゃんは多分、思い込んだら一直線です。周囲を見られないんだと思います。集中力があるお姉ちゃんには、暴走よりも集中力を高めることを、教えてあげたらどうでしょうか?」


と、言ってくれた。


「集中力を?あの子は突進して……」

「行かないように、武器はきゅうを。一ヶ所にとどまり後方支援を。そうすると、今回のように僕の嫌がらせの仕返しに、巻き込まれないと思います。ごめんなさい」

「は?」


 子仲が呆気に取られると、頭を下げた統は表情を陰らせた。


「僕は、おじいちゃんやお父さん、お母さんが仕えている意味が解りません。あの主君に仕えたりしたくない。僕なら、お母さんを苦しめる人間は消し去りたいです。で、叔父上も最初は同じだって思っていました。だからついかっとなって、お姉ちゃんに。でも、お姉ちゃんは全然変わりませんでした。にこにこして、僕が怒っているのに笑って……そうしていたら、叔父上の心配そうな顔が、お姉ちゃんとお兄ちゃんに……そうしたら、あぁ、叔父上達は違うんだって解って」


 子仲は目を見開く。

 まだ幼いこの少年は、すでに自分達のことを『』ていたのだ……敵か味方を。

 子仲は告げる。


「私は……すでに、劉玄徳りゅうげんとくを主と思っていない。公祐、憲和もだよ」

「えっ?あ、あの……公祐叔父上も?憲和叔父上は確か同郷の幼馴染みって……」

「幼馴染みと言えど、家族と言えど、赦せない……許してはいけないことがあるんだ。憲和の奥方は知ってる?」

「はい。とても優しい人ですよね?僕達のことを見てくれて、遊んでくれます」

「あの人は、劉玄徳の狂った感情に翻弄された被害者だよ。あの子は」


 子仲は頭を撫でる。


「姫……『破鏡はきょう』と呼ばれた女の子の昔の名前は、呼べない。劉玄徳によって名前を穢されたから呼ばない。私たちは『琉璃りゅうり』と呼んではいけないと思っていたよ。……でもあの子は、呼んでくださいねと孔明どのに抱き締められ笑ってくれた。再会した時……一人で現れた琉璃に私たちは絶望したよ……見つかって欲しくなかった。会ってはならなかった……でも会えたのが嬉しいと心で思ってしまう自分達に……益徳どのは『すまない』と何度も……」

「お母さんの最初の名前は……そんなに?」


 躊躇い、子仲は告げる。


「『亮月りょうげつ』。姫の母上が『麗月れいげつ』殿と言う名前で、同じ『月』をとって、明るい月、満月と言う意味の『亮月』と付けられたんだよ」

「『亮月』?お父さんと……あっ‼」


 口を押さえる。


 現在では有名だが、当時では名前を隠すことが当然で、孔明の場合は名前の亮はいみなであり日本では『み名』となる。

 避けるべき、告げたりしてはならない本質、本人の魂を束縛すると言うこともある。




 ちなみに、ヨーロッパ等での悪魔調伏も、エクソシストと呼ばれる専任の悪魔調伏者が、悪魔にとりつかれた人から追い払う際には、悪魔の名前を問い質し名前で存在を束縛し、とりつかれた人から離れるように促し、それがダメならば、引きずり出すか消し去ることもある。

 その為、強い意思と力がないと、逆に命を奪われたりすることもあると言う。

 エクソシストは、本当に力を磨き身を清め、その悪魔調伏の時以外には出ていくこともない、ほぼ最近まで存在を秘密にされてきた所以でもあると言う。




 どうしよう……と言いたげに口を覆い、おそるおそる子仲を見上げるさまは、本当に幼く泣きそうな顔で、子供が本当に愛おしい父親である子仲はそっと抱き締める。


「統。私の名前は『じく』と言う。子仲は、父親の次男と言う意味だね。そして、大丈夫。孔明どのの諱は、すでにご本人から伺っているんだよ。と言うか、あの方は本当に大らかな優しい人だ。でもそれが危うい」

「えっ!」

「私たちはすでにご本人は知らなくとも、姫の夫であり主として仕えたいと思っていたけれど、安易に伝えてはいけないと念を押した。するとね?」


 子仲は、やれやれとため息をついた。


「さすがは親子だね?統のお父さんは『琉璃に聞きました。優しい叔父上だと。ですので、琉璃の夫として、きちんと叔父上にご挨拶をしておかなければ、失礼ですから』と言ってくれたよ。慌てて弟のきんどのに説明したら」

「叔父さんは?」

「均どのはあっさり『兄は、智略に長けてますが、普段はあぁ言う人です。それにあの琉璃が『大好きだったおじちゃん』と良くいっていたので、刷り込みですよ。琉璃の好きな人に嫌われたら困るって必死なんだと思うんです。やらせといて下さい。大丈夫です。アホですから』って言ってくれたよ……それを横で聞いていた公祐も憲和も大笑い。私も吹き出したら『そう言えば、琉璃は叔父上たちの辛そうな顔が悲しかったって言ってました。琉璃は余り感情表現を知らないようなので、聞いてみると怒ってる叔父さん、笑っているけれど言葉の少ない叔父さん、無表情なおじさんがいて、時々目が合うと反らされて悲しかったのに、時々匿ってくれたりした時はどうしたらいいのか解らなくて……って言ってましたよ。兄が、説明したら嬉しそうに笑ってました』ってね。本当に兄弟であんなに楽しいとは……。統も、喬や広と遊ぶのは楽しい?」

「はい‼」

「じゃぁ、兄弟仲良く、お父さんたちと生きなさい。いいね?」


 頭を撫でる。

 統は子仲を見上げ、


「お母さんの最初の名前はダメと言うのは……」

「その次の……『破鏡』は『半月』もしくは『離別』『半身を失った』と言う意味だよ。自分の至らなさを琉璃に押し付け、琉璃を憎み、周囲を混乱に陥れることで溜飲を下げているつもりなんだ。それが意味もない逆恨みであることを忘れ……愚かだね。琉璃はすでに劉玄徳の娘ではなく、諸葛孔明しょかつこうめいの妻であるのに。その上、子どもたちを次々と棄てることで、自分も棄てていく……それが解るのは早いならば許される。遅ければ終わりだね」


そう告げた。


「じゃぁ、僕は叔父上と共に、お父さんとお母さんとお兄ちゃんと一緒に行きます。僕は趙子竜の孫です」

「よろしく頼むよ」

「はい」




 そう言っていた少年と、兄弟……そのうち一人は公祐の息子でもある……は、あれこれと周囲を全く気にせず喋っていたが、統と目が合う。

 にっこり笑い手招きをすると、すぐに兄弟に声をかけて揃って走ってくる。


「叔父上‼ただいま帰りました‼」


 統に比べて本当に黒さがなく、素直でおっとり系の喬は、すぐに梅花を見て、


「梅花お姉ちゃん。あのねあのね?」

「わぁい‼喬くん、お帰りなさい‼遊んで~‼」

「こ、こら‼」


突進し、本気で突っ込む梅花が裾を踏んでよろけた。

 すると、喬はすでに統が引っ張っていて安全だが、何故か広が兄である循を蹴り飛ばし転ばせると、その上に倒れこんだ梅花を抱えて抱き上げたのは金剛。


「駄目だよ?裾を踏んじゃって大怪我する所だったでしょ?循がここにいたから大丈夫だったけど、次からはちゃんと周囲をみたりして、気を付けてね?」


 めっとその青い目で見ると、にっこり笑う。


「でも、僕の叔母さんもとってもお転婆なの。一緒だね」

「わぁぁ‼青い目‼綺麗です‼髪の毛も艶々‼お名前通りですね‼」

「えっ?」


 咄嗟におろした金剛を見上げ、そして笑顔で口を開いた。


「お兄様、初めまして。私は梅花です。よろしくお願いします」




 それから時は過ぎ……、


「ま、また、何をしてるの~‼」

「大丈夫で~す‼」


 うりゃぁぁ!


と今度は広が投げ飛ばされ、危険に巻き込まれないように兄を逃がしつつ、自分も逃げている統のことを良く理解している広はすぐに体勢を立て直し、


「今日は、姉ちゃんに勝つ!」

「負けませんよ‼」

「止めなさい‼」


金剛は長男の重みを、広を捕まえることで思い知るが、


「西のアホ親父より楽か……?でも、母上もあんな親父と良く一緒にいるなぁ……尊敬と言うか感謝と言うか……又、兄弟が増えるって、苦労かけてるなぁ……母上、ごめんなさい。そっち帰るの、もう少し待ってて」


と心の中で呟いたのだった。

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