禁呪
やはり俺の前にもこの世界に転生して来たものはいたか
「やっぱりか、それでお前が精霊になってるのは特典か?」
「いや、違うよ。これはなんというか呪いかな。あと僕のことは氷麗でいいよ」
「なら俺の事はナイトでいい。それと呪いってどういう事だ?」
「うん、とある禁呪を使った時にこうなった。だから生まれた時の僕はちゃんと人間だったよ」
「禁呪ってのはなんだ?」
「ああ、それの説明をしなきゃだったね。えっと禁呪ってのはこの世界に居た魔王の奥さんの作った魔法の事だよ」
「この世界にも魔王ってのは居るんだな」
「いや、居たってのが正しいかな」
「もしかして、とっくに殺されているのか?」
この世界ってテンプレ多いし魔王なんてのが居るんだから勇者も居るんだろう。なら他の勇者ものと同じで勇者に倒されたのだろう。
「たぶん、君の考えてる事は間違ってるよ。この世界には勇者なんて居ないから」
「なら魔王はどうやって死んだんだ?」
「寿命で死んだんだよ」
「なんかしょぼいな」
「まあ、彼らは不老不死の研究なんかはしていないし人間だから仕方がないと思うよ」
「まあ、それもそうか」
「じゃあ、禁呪の話をする前に魔王の話をしようか、この国では魔王は嫌われていて情報が入ってこないだろうから。
まず、この世界に魔王は彼1人しかいない。彼が生まれたのは今から1000程前の話。彼が生まれた国には地球にはない制度が多くあった。その最もたる物が奴隷制度、まあ奴隷制度自体はまだいろんな所で残っているけどね。そしてその中に亜人と呼ばれる者たちもいた。例を挙げるとエルフ、ドワーフ、フェアリーなんか様々だね。
人間が奴隷になる理由の多くは借金、犯罪などにより売られた場合、身売りをして家族にお金を託すために自分を犠牲にした者などがあるが、亜人は違う。
亜人の場合は村や里で静かに暮らしているところを攻め込んで捕まえ売るというものだった。それに怒りを覚えたのが、リグム・リベリオン又は黒羽星夜。のちに亜人達を束ねて国を作ったその後自身の持つ前世の知識を使い亜人達に力を与えた事により人々から反逆の王、魔眼の王、などと呼ばれる男だよ」
「魔眼の王?」
「そう、君も神様を名乗る者に特典を貰っただろう。それと同じで魔王も特典として〈創星の神眼〉って言うのを貰ったみたいだけどその能力を知っているのは彼の奥さんでのちに自身を裏切りの魔女メディアと自称したステラ・リベリオンだけだから能力までは知らないよ」
「〈創星の神眼〉か」
「君も持ってたりしないの?」
「いや、分からないな。多くの魔眼はまだ開眼してないから」
「そうなのか、じゃあ今度は魔王の奥さんである自身を裏切りの魔女と名乗ったステラ・リベリオンの話をしようか。
彼女は元々貴族の4女として生まれたんだよ。その家の名前はリベリア、そう君たちのご先祖様の妹にあたる人だよ。彼女は魔法の才能が無かったんだよ」
「無かった?禁呪を生み出すような人なのに才能が無かったのか?」
「うん、彼女は生まれ持ながら持っていたスキルは0だったんだよ。そんなのがこの国で貴族として産まれたら鬱になっていただろうが幸いなのが彼女が転生者であった事だよ。
その彼女は特典としてある称号を貰って居たんだよ」
「どんな物なんだ?」
「〈創星の魔女〉という称号だよ。その効果は魔法を創ること。だけどそれには厳しい条件があってね」
「なんでそんなに詳しく知ってるんだ?」
「元々彼女はこの国の王国魔法協会で働いている研究員だったんだよ。だから彼女は自身を裏切りの魔女と名乗ったんだよ。
それで〈創星の魔女〉の条件は既存の魔法に新たに創る魔法が存在しないこと。既存の魔法に対する絶対的な知識が存在すること。この2つの条件を達成する事で初めて新たな魔法を創れるというものだったんだよ。
だからこそ彼女は子供の頃からずっと魔法の勉強を続けたんだよ。その結果わずか10歳にして新たな魔法を創ったんだよ。その魔法の事を彼女は〈魔導〉と呼んだ。
〈魔導〉は魔力を込めた書物、魔導書を使い発動する魔法だよ。この魔導書は誰にでも創ることは出来るけど1番強い魔導書は本人の創った5つの魔導書で、この国では禁書と呼ばれている」
「その禁書のありかを氷麗は知っているのか?」
「よく漫画であるような言い方をするとその答えはyesでありnoだよ」
「どういう事だ?」
「2つまでなら場所を知っているけど残りの3つの場所は知らないんだよ」
「2つ禁書の所在は?」
「1つ目は魔王の創った国である帝国ルシフェリアの国王である獣人バルドール・グリジストが持っているよ。2つ目はこの国的には敵国である焔の国グロージスタの王国が管理しているよ」
「1つ目はの国と2つ目の国には言い方が違うがあるのか?」
「えっと帝国の方だと国王個人が所有していて、焔の国だと国が管理しているんだよ」
「へえーそうなのか、それでお前が使った禁呪ってのはどんな魔法なんだ」
「ああ、そういえばまだ言ってなかったね。僕の使ったのは彼女が創った魔法の中で亜人が使う事を優先して創った魔法である〈精霊魔法〉だよ」
「〈精霊魔法〉ってよくあるような精霊と契約して使うあれか?」
「いや違うよ。〈精霊魔法〉は精霊の使う魔法だよ。亜人っていうのは精霊から派生した種族なんだよ。だからこそ本来人間の使う魔法を使えない亜人達が使える魔法なんだよ」
「じゃあ、なんで氷麗は使えたんだ?」
「だからこそこんな姿になっているんだよ。〈精霊魔法〉の中の禁呪である〈精夜の呪〉怨みを持った相手を絶対に殺す代わりに自身を精霊に変える魔法だよ」
「〈精霊魔法〉の中にあるって事は彼女の創った魔法にはそれぞれ禁呪が設定されているのか?」
「うん、そうだよ。彼女の創った魔法には禁呪が設定されているが僕はそこまで知らないよ。ただ僕は殺したい人がいてその為に禁呪である〈精夜の呪〉を探して習得しただけだから他の禁呪についてはあまり知らないのよ」
「そうか、野暮な質問はしない方がいいよな」
「そうしてくれると助かるよ」
禁呪か、冒険者になったら探してみるか、だからこそ知っていることを氷麗になるべく多く聞いておかないとだな。
「氷麗、彼女は他にどんな魔法を創ったんだ?」
「僕が知っているのは〈魔導〉、〈精霊魔法〉、〈堕天魔法〉この3つだけしか僕は知らないよ」
「それでその魔法の禁呪はどう言った物なんだ?」
「〈魔導〉の禁呪は禁書と呼ばれる中にある〈絶望ノ魔導書〉という魔導書が禁呪にあたるよ。〈堕天魔法〉の禁呪は〈魔人転身〉という物だよ。どっちもどんな魔法かは知らないんだけどいまこの世界にある魔法よりも絶大な力があるのは確かだよ」
「この家を出たら探してみるかな」
「それなら中立魔法学園アクノロスに行くことをお勧めするよ」
「そこには元から行くつもりだから問題ないな」
「どうしてだい?」
「ルナとの約束でな」
「そうなんだ」
『お兄様、此方にまだフリージストが帰ってきてないんだけどそっちにいるの?』
あ、ユエから念話が来た。
「氷麗、そろそろ戻った方がいいぞ。お前の契約者が心配してるぞ」
「もうそんな時間か、なら僕は戻るよ。今度来た時に魔王なんかの昔話をしてあげるよ」
「その時はよろしくな」
「じゃあね」
そう言うと氷麗の姿はすぐに消えてしまった。精霊だから契約者の所にはすぐ行けるようになってるのか?まあ、次にあった時に聞いてみるとするか
「禁呪に魔王、そして裏切りの魔女と自称した魔王の奥さんか、この世界には厨二病の奴が召喚されるのか?」
そう、俺も卒業したが厨二を患っていた時が有るのだ。おそらくは親の影響で、内の親は大人になっても厨二が抜けて無くて子供に厨二全開の名前を付けるくらいだ。まあ、あまり気にしてはいないが
親の事を思い出していたらなんか寂しくなってきたな。俺の友人は元気にやっているだろうか、なんかもあるが1番は妹かな。あいつブラコンがヤバかったから、俺が死んで暴走してないか心配だな。
まあ、あっちのことは割り切ってしまおう。どんなに心配してもあっちには戻れないのだから。ああ、なんか前世の事を考えたら不安になってきたしもう寝るか。どうせ明日も氷麗のやつとユエは来ると思うから氷麗のやつにまだ色々聞かないといけないしな。
ベットを整えて横になる。
それにしても転生させたあいつらはなんだったんだ。どうして俺を転生させたのかも分からないし、此処で何かをしなくてはいけないと言うわけでもないのだから何のためにこの世界に転生させたのだろう?まあ、いいやとりあえず明日のために今は寝るか。
前の話で出てきた魔眼の詳細を載せ忘れていたのでこのあとがきで載せます。
〈精霊の眼〉精霊と視界を共有する事で見たいところを見ることの出来る魔眼、視界を共有可能な距離は所有者の魔力に依存
〈千里眼〉文字通り千里先まで見通す魔眼
〈白夜の魔眼〉視界内の光魔法、火魔法、風魔法、雷魔法を意のままに操り闇魔法、水魔法、地魔法、氷魔法、状態異常系魔法を無効化できる魔眼
〈極夜の魔眼〉視界内の闇魔法、水魔法、地魔法、氷魔法を意のままに操り光魔法、火魔法、風魔法、雷魔法、状態異常系魔法を無効化できる魔眼
〈病魔の魔眼〉視界内の人間の病を操る魔眼、所有者の力量次第で病治す事も可能
〈魔喰いの邪眼〉視界内に存在する魔法を魔力の状態に戻し喰らう邪眼、この邪眼を無効化する場合はユニーク魔法か神眼によってしか不可能である
〈転移眼〉視界内の人間を1度見た所に転移させることのできる魔眼、人間限定なので物体を転移させる事は出来ない
〈念話眼〉1度見た相手と念話をすることのできる魔眼、念話可能な距離は所有者の魔力に依存
これからは新たな魔眼が出た際はその話のあとがきに載せます。