エンシェントドラゴン 後編
俺は気がつくと暗く閉ざされた空間にいた。
「何処だ?俺は美月を守って気を失ったはず」
「うん、そうだよ。君は気を失ってここにきた。そこは間違いないよ」
ふと話しかけられ振り返るとそこにいたのは、あの男、夢魔海燕だった。
「お前は消えたんじゃないのか?」
「うん、僕は消えるよ。だけどそれはこの迷宮か抜けた時だよ。僕の魂はそこにあって特殊な仕掛けをしてあるこの迷宮の中なら君に話しかけるくらいなら造作もないことだよ」
「そうか、それで何をしに来たんだ?」
こいつとの話で時間を使いたくない。
「時間を使いたくない何て思ってるんだろうね君は。だけど、今のままいっても真正古代龍には勝てないよ」
「そんな筈は」
そう今さっきのように少しずつ削っていけば
「無理だよ。あいつは生まれてから10,000年もの時間を生きている。もちろん僕が連れてきたわけじゃあないよ。あいつは僕の魂でもある概念兵装に誘われてきたんだよ。」
「どういうことだ?」
「あいつの種族は不老種なんだよ。だから、あんなにも長く生きていて死に場所にここを選んだってことだよ。そして、10,000年もの長い時を生きた真正古代龍は初めてなんだよ。だから、本来の真正古代龍よりもはるかに強く厄介な性質を持っている」
「厄介な性質?」
「そう、今さっき突然色が変わっただろう。スキル名は確か生存本能だったかな?そのスキルの影響で全てのステータスが5倍近くに上がるんだよ。まあ、使ったら1日たつまであのままで1日経ったら死ぬっていうデメリットもあるんだけどどうせ1日でここは消えるから関係ないけどね」
「そんなこと関係ない。今ここで俺が倒れたらエルザを1人にしてしまう。それに美月を守れなくなる。だから俺は無茶無謀でも戦うんだ。それが俺のやらなくちゃいけないことだからだ」
「それは、前世で何かあったからかい?」
さすがにバレるか
「ああ、俺は前世で守りきることができなかった。守ってもらった恩を返すことができなかった。だから、今度は守り抜くと決めたんだ。1人にさせないと決めたんだ。だから、ここを出る方法を知っているなら教えてくれ」
「教えてあげたいのはやまやまなんだけど、今回僕は仲介役でしかないからね。そいつの話だけでも聞いて行ってからでいいかい?」
「聞かないと出られないのなら別にいい」
実際は早くここを出たいのだが仕方ない。話だけなら聞いていこう。
「じゃあ、連れてくるよ」
「その必要はない。もうここにいる」
そこにいたのは頭には角を生やしていて背中には禍々しい翼のあるいかにも悪魔という感じのやつがいた。
俺は咄嗟に臨戦態勢に入る。
「ちょっと待って。敵じゃないし別に人間に対して悪さをしたこともないやつだから大丈夫だよ」
「まじか?」
「うん、まじで」
「ああ、なんかすまん」
「いいさ、慣れているからな」
その悪魔みたいな男は気さくな感じて返してきた。
「ああ、そうだ。自己紹介がまだだったな。俺の名前はサタン。転生者なら知ってると思うが、よく魔王としてゲームに出てくるやつだ」
「なんでこの世界に?」
「まあ、簡潔に言うと転生者のせいだな。俺たちは1人の転生者に生み出されたんだ」
「俺たち?」
「ああ、俺以外にもあと6人いる。まあ、その話はあとでいいだろう。俺がお前に聞きたいことはとりあえず1つだ」
「なんだ?」
「気絶する前にもった怒りの感情は誰に対してのものだ?」
「自分自身だ」
「なぜ?」
「あいつに勝てない自身の無力さに、エルザを1人残してしまう自身の不甲斐なさに対してだ」
「敵に対する怒りはなかったのか?」
「ない、敵が強い。そんなことに怒りなど覚えないさ。自身が弱いのが悪いのだ。自分自身に怒りを覚えることがあっても敵に対して怒りを覚えることは絶対に無い」
サタンは少しの間黙ったあとに突然笑い出した。
「ハハハハハ、面白い。私飲み込んだ通りだ。1つ契約をしないか?少年よ」
「契約とは?」
「ああ、私がお前に力を与えてやる。まあ、力といっても元が強く無いと意味の無いものだがな。そしてもちろん対価はいただく」
「対価ってのはなんだ?」
「簡単だ。俺を殺しに来い。それがお前の払う対価だ」
「もし殺せなかったら?」
「何も無いさ。俺の寿命は長い。寿命では死にたく無いだけだからな。次のやつを気長に待つだけだ」
「わかった。契約する。そして、絶対にお前を殺してやるさ」
「ああ、楽しみにしてるぞ。俺は未開領域、憤怒の火山ってところにいるから楽しみにしてるぜ」
「ああ」
『固有スキル、憤怒の隻眼を入手しました』
『固有魔法煉獄魔法を入手しました』
入手?開眼じゃないのか?
「ああ、憤怒のってのは受け取ったものの素質素養に影響されて発言する場所が変わる。別のやつだと憤怒の隻腕ってのがいたな」
それなら、納得だな。
「じゃあ、俺は帰るぜ。頑張ってあいつを倒せよ。あんなのに負けてたら俺を殺すなんて不可能だからな」
「ああ、もちろんだ。首を洗って待ってろ」
「楽しみにしてるぞ」
そう言うとサタンは消える。
「じゃあ、俺は行くからここの出方を教えてくれ」
「ちょっと待って。最後にタナトスの説明をしておく。タナトスには侵食と呼ばれる特殊な機能がある。それによって所有者が死に至るのだが、君なら問題なさそうだからね。侵食によって身体能力も上がるからここから出たら試してみるといい。では、ここから出る準備はできたかい?」
「ああ、早く頼む」
「じゃあ、行くよ」
俺はまた意識を失った。
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ここは、何処?
私は確か、真正古代龍に吹き飛ばされてその後は何をしたんだっけ?
「あなたは、吹き飛ばされた後、気を失ったんです」
「誰?」
「自己紹介がまだでしたね。私の名前は夜刀、夜叉。あなたの刀です」
「刀?どう見ても人間にしか見え無いけど」
「はい、私がこのような姿であなたの前に居られるのは、あなたの祖父、そして私の創造主たる方のおかげです。彼はこの世界で唯一魔剣を打つ事の出来る鍛治師ですから」
「魔剣って勇者の持っていたと言われている聖剣の対になる剣の事?」
「厳密には違います。魔剣というのは魔法を込められた剣の事です。そして、その中で光と火の魔法が込められたものが聖剣と呼ばれています。そして、それ以外を魔剣として扱っています」
「ならあなたはどんな魔法が込められているの?」
「私に込められている魔法はありません」
「なら、あなたは魔剣ではないの?」
「いえ、先ほども言いましたが私は魔剣で間違いありません。私を打ったお方は〈究慧の鍛治師〉と呼ばれる素晴らしいお方です。そのお方の作った唯一の魔剣が私です。そして、孫であるあなたがとのように成長しても使えるようにと作られた物です。故に私には魔法が込められていません。そして、私に魔法を込めるのはあなたです」
「私が?私にかけられる魔法なんてそんなに無い」
「そう言う事ではありません。この世界に存在する聖剣の中で唯一の天然物の聖剣は人々の願いにより生まれました。唯一の天然物の魔剣は人々の絶望により生まれました。ですから、あなたは望めばいいのです。私をどういう風に使いたいのかを、私で何をしたいのかを」
私が何をしたいのか、私は何に刀を使いたいのか。そんなのは決まっている。
「私は刀で何者をも切り裂きたい。私は紅夜に仇なす物を全てを貫く矛となりたい。それが私のやりたい事」
「紅夜を守りたいとかは無いのですか?」
「無いといえば嘘になるけど紅夜が守ってくれるから。だから、私は何者をも貫く矛となる。何があっても紅夜が守ってくれると信じているから。だから、私は圧倒的な攻撃力をのぞぬ。、どんなに硬くてもどんなに強くても関係なく問答無用に切り裂けるそんな武器が欲しい」
「それが、あなたの願いですか。わかりました。そして伝わってきます。どれだけ彼の事を信じているのか、どれだけ彼を大事に思っているのかが」
「当たり前、紅夜は私を救い出してくれた。それがただの気まぐれでも私は嬉しかった。だから、私は紅夜のために戦う。だって紅夜の事が好きだから」
「そうですか、その気持ちが私の中にも流れ込んできています。そして、あなたの武器、わたしは今ここに完成します。そして、頑張ってくださいね。あの化物を完膚なきまでに倒してしまってください」
「うん、任せて」
私の意識はそこで無くなった。
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かなりやばいな。美月と紅夜は気を失っていて逃す事もでき無いし、このままだと途中で押し負けると思うし。1人で逃げるっていう選択肢も無いしな。早く目を覚ましてくれよ頼むから。
俺は淡々と真正古代龍の攻撃をいなしながら少しずつダメージを与えているが、ダメだな与えたそばから回復してやがる。まあ、変色した時よりも前の時に戻る事が無いのが救いかな。とりあえず今やる事は攻撃をいなしながら時間を稼ぐ事だな。後は紅夜と美月次第だな。
だが、私が視線を戻しまた真正古代龍を貫こうとした時驚きの光景が目に入った。
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んっ。戻ってきたんだな。そうだ!美月は無事なのか!?
俺は美月の事が気になり後ろを振り向く。
「紅夜も目が覚めた」
すでにそこには目が覚めている美月の姿があった。
「ああ、俺は今からあいつを倒しに行くんだが美月はどうする?」
「私も行く。あいつを倒しに」
「そうか、なら早く行こう。エルザが対面そうだからな」
「うん」
俺は、すぐに準備を始める。
「概念兵装タナトス、侵食率100%、固有スキル〈憤怒の隻眼〉及び固有魔法〈煉獄魔〉発動」
すると、俺の目のうち右眼に炎が灯る。青白い、はっきりとした炎が。それに体に模様のようなものが全身に浮かび上がってきており、タナトスは赤黒い炎を纏っている。
「我が願いの込められる魔剣よ。今ここに我がために力を振るい、我がためだけにあり続けよ。魔剣、夜叉よ」
私もと言わんばかりにそんな言葉を発する美月。その手には禍々しくも神々しいその刀に一瞬目を奪われる。全てを殺すというような雰囲気を出しているがどこか暖かいそんな感じのする剣だ。そして、その刀を持った美月を美しいと見惚れてしまった。いやいや、まだ7歳の子供にそんなこと無い無い、俺はロリコンじゃ無い。とにかくこの気持ちを誤魔化すためにあいつを殺そう。
「私から行く」
美月は前に出ると眼を閉じた。真正古代龍がこちらを敵として見てこちらに向かってくるにもかかわらずだ。つまり俺が守るから安全だと?なら守ってやりますか、大事な仲間だからな。俺は真正古代龍をタナトスを使い受け止め後方に吹き飛ばす。今さっきまで苦戦していたのが嘘みたいに簡単に吹き飛んだ真正古代龍を見て呆然としているエルザがいた。
この世界はどこまでいってもステータスの値で全てが変わる。どんなに小さくともステータスが高ければ強いしどんなに見た目強そうでもステータスが低ければ弱いそういうものだ。だから、俺があいつを吹き飛ばせても不思議ではない。そして、美月はためが終わったのか眼を開け俺にこう告げた。
「紅夜、危ないから退いて」
俺はその言葉通りすぐにその場から離れる。
「我流抜刀術、奥義、影太刀」
飛んだ斬撃が真正古代龍の影にあたり切り裂かれる。そして、そこと同じところが真正古代龍から切り離される。また、原理のわから無いと言うか結果と原因を逆転させたのか?体を切り離されて影がなくなるのではなく、影がなくなったから体が切られると言うことなのかな。まあ、それでいいか、俺研究者ではないしな。そろそろ、俺も行くか
「敵が死に絶えるまでその身を焦がし続けよ、煉獄の炎よ」
猛スピードで近づき首元を切り裂く。どうやっても対応でき無いような、素人が見れば瞬間移動をしているとさえ観れるスピードで切り裂いた。だが、確かに首は切れたがまだ、真正古代龍はいきている。だが、そんなことは関係ない。真正古代龍の首と切り離された胴には赤黒い炎が止まっている。いくら叫んでも消えずそのまま30分は燃え続けその後その炎は消えそこに残っていたのは真正古代龍の少し焦げた屍体だけだった。
そして、そこで安心した俺はスキルと魔法を解く。すると、急激な眠気、倦怠感に襲われ意識が遠のいていく。美月とエルザが心配して声をかけてきてくれるが話す余裕がないので、とりあえず笑顔で返しておくことにした。
今回でダンジョン編終わりになります。ここまでお付き合いしてくださいました皆様ありがとうございます。次の話では少し閑話を入れてからダンジョンの外の話を書いていきます。
〈憤怒の隻眼〉魔眼発動中自身のステータスをlevel倍する。発動後自身のステータスを2分の1乗する。ステータス減少時間は発動時間に比例し1秒につき1時間のバットステータスを受ける。称号に〈魔眼の王〉がある場合バットステータスを受ける時間が1秒につき1分に変化する。
〈煉獄魔法〉自身の所有する魔力量に比例し攻撃力が上昇する魔法。その攻撃力は魔力量とSTR、武器の積となる。物に纏わせる場合それかける自身のSTRとなる。だがそれのレアリティが神話級無いとそのものは自壊する。発動終了後MPに関するすべてのことが使用不可能となり継続時間は発動時間に比例する。1秒につき1時間、MPが1,000,000越えている場合1秒につき1分に変化する。
〈侵食〉別名共鳴と呼ばれる。侵食率は10%毎に制御できて10%毎に自身のステータスが2倍3倍と上がっていき最大で10倍となる。発動終了後ステータスが倍加した分の1となる。継続時間は発動時間に比例し1秒につき1時間バットステータスが継続する。全ステータスの合計値が10,000,000を超えている場合1秒につき1分に変化する。
新しく出したスキル、魔法の説明を載せ忘れていたので追記します。
〈侵食〉について7/18日に変更しました
スキルについて2016/04/21変更にました




