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真祖のハーフヴァンパイア

今回も間の階層の話はありません。いい加減迷宮内から抜けたいのであと2.3話で迷宮からは出ると思います。

2週間前に40階層のボスを倒した俺たちは今、50階層のボス部屋の前にいる。41階層から49階層までは、今までと変わらずAランクの魔物が出てくる事と時たまにSランクの魔物が出てくるくらいだった。Sランクの魔物で出て来たのはケルベロスやサイクロプス、バジリスクなどの魔物が出て来た。まあ、ミノタウロスよりは弱かったので直ぐに殺せたが。そんな事よりとっととこの迷宮を攻略して地上に戻らないとな。


「じゃあ、そろそろ行くか」


「うん」


俺たちは扉を開ける。その時に念のために反重力を展開する事を忘れずに行う。

しかし、準備を万端にしていった俺たちは中に入った瞬間呆気にとられる。


「ボスがいない!?」


そう、ボスがいないのだ。階層のボスは扉を抜けた後にある一定の範囲を出る事はできないようになっている。そのため大抵のボスは扉から見えるところにいるのだが、ここでは内部構造が違っていた。そう、まるで誰かがここに住んでいるかのような構造だ。


「やっと、来たか」


そこには、銀髪紅眼の少女がいた。だが、俺の経験があれは危険だと告げている。美月も同じ風に感じたのか戦闘態勢に移行している。


「お前は何者だ?」


「私か?そうだな、吸血鬼といえば分かるかな?」


魔族!!それにこの圧力Sランクはあるな。どうする、俺たちじゃ絶対に勝てないぞ。


「返事も返してくれないのか」


「すまん、考え事をしていて返事を返せなかった」


「どうやって、私に勝つか?だろう」


考えが読まれている!!いや、違うな。こんな状況で考える事は誰でも同じだろう。だが、どうする、作戦を立てる時間をなんとかして稼がなくては


「そう身構えるな。私はお前達と敵対するつもりはないのでな」


「どういう事だ?」


「うむ、簡単に言うならお前に来てもらいたい場所があるんだ」


「来てもらいたい場所?」


「ああ、お前はあの意味不明な文字か読めるのだろう?」


「なるほど、解読して欲しいものがあるという事でいいか?」


「ああ、そうだ。それで来てくれるか?」


断ったら、なんて事は考える必要もないな。普通に殺される可能性がある方を選ぶ必要はないしな。


「わかった」


「なら、案内する」


「頼む」


『美月、すまん。こっちで勝手に話を進めてしまって』


『別にいい。私が参加してたら結果は悪くなっていたと思うから』


『そうか、ありがとな』


それから、俺たちは吸血鬼の女について行き、目的の場所に着いた。


「ここか?」


「そうだ。私では、どれだけ時間をかけても読めなかったのでな」


書いてある言葉は《一度死せし者よ、その証を示せ》か。


「なんと書かれていたのだ?」


「一度死せし者よ、その証を示せ。そう書かれてた」


「一度死せし者とは、どのような謎掛けだ?」


「多分そのまんまだと思う」


俺がそう言って、扉に触れると扉は1人でに開き始めた。


「開いたようだし先に進むか」


「ちょっと待て、なぜお前が触れて扉が開く!!お前は生きているではないか!?」


「それは、私も知りたい。紅夜は何かを隠している。偶に寂しげな表情をするのもそれが原因?そうなら、話して欲しい。私は紅夜の役に立ちたいから」


俺の秘密、それは転生の事だ。まだ、誰にも話していない俺の秘密。今ここで話せたらそれでいいんだがその勇気が俺には無いんだ。拒絶されたらどうしよう、そう考えて言い出せない。小説なんかでは受け止めてくれているがここは現実だ。そんな事が起こると決まってるわけでは無い。だから俺は美月とあってから一度もこの話をしていない。だから今回も


「話せる時が来たら、話す」


逃げてしまうのだ。俺は臆病者だな。


「そんな事で言い逃れられると思ってるのか?」


「私はいい。話したくなったら話して。もしもそれがどんな内容でも私は受け止めるから。私を信じて話してくれるのを私は信じてるから」


「ありがとな。心の準備ができたら話すよ」


「ふんっ、なら私もその時を待つとしよう」


「うん、待ってる」


こんなのはただの後伸ばしだ。早く話さないととは思うのだが、話す勇気が出ない。これじゃあ、駄目だな。戻ったら話そう。こう言うのは早い方が傷も浅いと聞くからな。


「その代わりに最後まで付き合ってもらうぞ」


「分かった」


「うん、私もそのつもり」


それから、しばらく歩いて行くとそこには台座があった。そしてそこにはこう書かれていた。


「《過去、現在、未来この3つの試練を受け宝を手に入れよ》か」


「そう書かれていたのか?」


「ああ、どんな試練かは分からないけどな」


「1人で3つずつ?それとも3人で3つ?どっちなのかな?」


「分からないけどそろそろ何かが始まると思う」


すると、突然、台座が光を放ち始め、俺たちはその光に包まれながら気を失った。


眼が覚めるとそこにいたのはいつもとは表情の違う美月だった。


「なんで、まだいるの化物」


美月が発するはずの無い言葉だ。なんで美月がそんな事を


「貴方はこの世界にとっての異物でしかないなのだからとっとと、いなくなればいいの。それで、なんでまだいるの」


はあ〜、こんなのが試練か、いや、こんなのでないな。もしも今さっきの会話がなかったら危なかったかもしれ無いが、いまは問題無い。俺は魔眼を使い美月の姿をした何かを殺そうとする。


「なんで?」


「これが試練なんだろ。なら殺す。俺の仲間の真似をしたお前は許さ無い。だから今すぐ逝け」


「わー、ちょっと待って。それで試練クリアだから殺さ無いで」


突然第三者の声が聞こえる。


「誰だ?ってお前か。それで何の用だ?」


「その子殺さ無いで、その子に代わりはい無いんだから」


「それは、お前の都合だろ」


「そうだけど、……ってちょっと待って。だから殺さないでって」


「知らん、早く殺したいのだが退いてくれないか」


「ちょっと待って。これ上げるからちよっと待ってって」


渡してきたのは鍵だ。


「なんだこれは?」


「50階層の下にある裏ボスへと続く扉の鍵だ。これで退いてくれないか?」


「はあ〜、分かった。それでどうすればここを抜けられるんだ」


「全員の試練が終わるまで抜けられないよ」


「まじか?」


「うん、まじ」


「その間は何してればいいんだ?」


「なら、他の試練でも見る面白いよ」


「まあ、それしかやること無いからな。仕方ないか」


「なら、ほいっと」


何も無い空間にテレビが出てくる。そこには美月とあの吸血鬼が売っている。


「これで見れるよ」


本当だな。どっちから見るか?あの吸血鬼からにするか、あいつの試練は過去のようだから何か弱みでもわかるかも。そう思い俺は吸血鬼の方のテレビを見る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は私が嫌いだった。10歳までの私は半吸血鬼(ハーフヴァンパイア)である事などにより周りよりも弱かった。日頃からのいじめはもちろん産んだ親からの虐待もしばしばあった。

それが、変わったのは10歳の誕生日の日だ。その日私は、真祖に覚醒したのだ。吸血鬼(ヴァンパイア)は真祖の先祖返りを中心に力のある種族だ。真祖からの3代目までが魔人と呼ばれ強い力を持つものとなれる。そのせいで私は覚醒した後すぐに犯されそうになった。10歳の少女をだぞ。滑稽だろ。もちろん私は抵抗しそしてその結果襲ってきた吸血鬼を殺してしまった。

それが、種族全土にばれ私は監禁された。正当防衛だったと今でも思うが、周りはお前が悪いのだと、全員が言うのだ。私は大人しく犯されていればよかったと言うのか、ふざけるな!!だから、その日私は故郷を抜け出した。追っ手がいたがそれは真祖の力で殺した。そして、言葉使いを男っぽくしてみた私は形から入るタイプだからな。


そして、それから何年だろう、何十年だろう、はたまた何百年だろうか、私は世界を旅し続けてやっと安住できるこの迷宮を見つけた。疲れてしまったのだ他人に世界にそして、自身の罪の意識に苛まれる事に。私は忘れようと思ったのだ。自身が殺した同族を、生きるために奪った人間の温もりを。だが、忘れられる事はなかった。何回忘れようとしても夢に出てくる。そんな事が続いていた時あいつらが現れた。名前は紅夜と美月と言っていた。久しぶりに私は人間に興味が湧いた。私の知ら無い魔法や魔眼をもつ少年と自身より大きい刀を持った少女に対してだ。

彼らを見ていたが彼らは楽しそうだった。迷宮に殺されそうな時は違うが終わると楽しそうにその事を話す。一瞬私もそこに混じりたいと思ってしまったが、駄目だ。私は罪人だ。同族を殺す罪人だ。あんなに綺麗な心をしたものに近づいてはいけ無い。


だが、彼らは私に近づいてくる。人間としては長い時間を使って私のいる最深層にだ。私は、早く逃げ無いとと思ったが、駄目だった。好奇心が勝ってしまったのだ。そして、彼らと話し楽しいと思った。だけど、ここに私の居場所はないと思った。だけど、一緒に居たかったから、最後まで付き合ってもらうぞ。そう言ってしまった。駄目なんだ。こんなに手を穢してしまっている私なんかがいてはいけ無いんだ。

私が人間を殺した事を知ったら拒絶されるだろう。だから、これが終わったら私はここを去ろう。安住の地は惜しいがこれが私の罪滅ぼしなのだ。もう、誰とも関わら無い。そうすれば誰も巻き込まなくて済むのだから。そうだ、私は誰とも関わってはいけ無いんだ。だけど、少し夢を見る事くらいはいいだろう。あの2人と世界を旅できたらどんなに楽しいだらうか?1人寂しい思いをしなくて済むだろうか?そんな事を夢見るくらいは許してもらえるだろうか?

だからこそ、私は私が嫌いだ。私は、罪深い真祖の半吸血鬼なのだから。誰にも許しは請わない。なぜなら、それは私自身が背負うべき罪なのだから。私は独りぼっちの真祖、エルザ・レミーアなのだから


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺は、そこまで見て飛び出しそうになる。


「ちょっと何処に行くんだい?」


止められて初めて動き出しそうになった事に気づく。


「あいつと話がしたい。何処に行けばいい?」


「なんでだい?君にとって彼女は赤の他人だろ?」


「ああ、そうだ。だけどな、あんな顔をしている奴をほっとくなんて出来ないんだよ」


「美月の時もそうだったね。なんで、そんなに嫌がるんだい?」


「死ぬ少し前の俺と同じ表情をしているからだ。そして、俺は助けてもらっただから今度は俺が助ける番だからだ」


「君の過去の話か、それも、聞いてみたいけど教えてくれなさそうだからね、いいよあそこまで連れて行ってあげる」


そいつは指を鳴らす。すると、景色が入れ替わった。


「お、お前はなんでここにいる!?」


「その前に一つ謝らせてくれ。すまんお前の過去を覗き見た」


「過去をって事は、あの事も?」


「ああ、そして、その事を踏まえて話がある。この試練が終わったら一緒に冒険をしないか?」


そう言うと、吸血鬼いやエルザは困惑した表情をして聞き返してくる。


「私は、君達の同族を殺しているんだよ」


「それは、正当防衛だろ。俺も襲われたらお前の同族を殺すかもしれないしな」


「でもでも、私がいると面倒事に巻き込まれるよ。それでもいいの?」


「ああ、今更面倒事が増える程度で嫌がったりなんかしない」


「でもでも、私なんかがいたら」


「くどい!!俺はお前にどんな事情があろうと一緒に行くと決めたんだ。お前は一緒に行きたくないのか?」


「でも、私なんて」


俺は再びエルザの言おうとした事に被せて言い放つ。


「エルザ!お前の本心を言え、俺はお前に何があっても裏切らない。お前に何があっても見捨てたりしない。だから、お前はどうしたい?」


エルザは泣きながら言ってくる。


「そんなの、行きたいに決まってる!!もう、独りぼっちは嫌だ。誰かと一緒に笑っていたい、助け合う仲間が欲しい、悲しい時に慰めてくれる仲間が欲しい、泣きたい時に思いっきり泣ける居場所が欲しい!!だから、連れて行って!私を1人にしないで!!」


「ああ、分かった。エルザ、お前は俺の仲間だ。だから、一緒に行こう。そうだな、ここを出たら寿司を食わせてやる。俺も先輩に奢ってもらったんだ。それ以外にも美味しいものを食わせてやる。そして、お前が笑顔で居られる居場所を作ってやる。だから、もう泣き止め、俺がお前を絶対に1人にはしないから」


しかし、エルザは泣き止むどころかさらに泣き始める。


「どうした?なんか駄目だったか?」


「ううん、違う。私の事を名前で呼んでくれたのが嬉しかったから、1人にはしないって言ってくれて嬉しかったから、泣いてるだけ。私は今初めて幸せだと思ったから」


「それでいいんだよ。今迄、散々不幸だったんだからこれからは幸せを満喫すればいい、それだけの権利はあるさ」


「うん」


エルザは、満面の笑みを浮かべながらこちらを見ている。そこで、俺は不意に可愛いなと思ってしまったことは内緒だ。

今までと同じようにエルザさんにも和名を付ける予定です。作者はあまりネーミングセンスが良くないので、何か良さそうな名前のある方はメッセージなんかで伝えていただけると嬉しいです。

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