英雄の末路
覇暦567年か、今は確か、覇暦2610年だから
だいたい2000年前か。そんなに古くから転生者はいたのか。
「紅夜、どうしたの?続きを読まないの?」
「ごめん、考え事をしてた。じゃあ、読むぞ
『残ってないかもしれないから説明を入れておくよ。10英雄と言うのは、邪神を封印する為に僕と、一緒に旅をしていた者たちを含めた10人の転生者の事だよ。
その旅の道中で困ってる人がいれば助けさせられたり、飢餓で苦しんでる町があれば飢餓の原因を絶ったり、そんな感じで人助けをする者たちだと思ってくれればいい。
そして、4.5年もの時間、本当だと半分くらいでたどり着けたはずなのに遠回りをしたりしてその位かかってしまった。その結果僕たちは英雄と呼ばれたんだよ。一時期だけね。
僕らがやっとの思いで邪神を封印して帰ってきた時、国に住んでいた人達は、笑顔で出迎えて何てくれず、なぜか、罵倒の嵐だったよ。
僕たちは何が何だか分からないんだよ。犯罪を犯した訳ではない、何も咎められることは無いはずなのにそんな事を言われ、国王に報告の為宮殿に行くと、国王は近衛兵に僕たちの拘束を命じたんだよ。あの時は驚いたよ。それも、邪神に取り憑かれたんじゃ無いかってね。でもそんな事は、なかった。ただ僕たちの力が恐ろしかったんだよ。国を乗っ取られないのかとか、そんな事を考えていたんだと思うよ。
拘束自体は簡単に回避できたが、僕たちはそれ以上に助けてきた人達に裏切られた事がショックだった。これだけの事でここまで、人は変われるのか?これだけの事で自身を助けた人を裏切れるのか?
あの時は、人という生き物に心から絶望したよ。いや、あの時ではなくて今もかな?あの時から僕たちは歪んでしまったんだよ。その時はこの世界をゲームのように感じていたんだよ。読んでいる君もそう思ってしまうだろう。僕たちはおそらくそれよりも酷かったんだよ。この世界の者はすごく弱かったからね。非戦闘職の奴でも無双できるくらいにはね
だからこそ裏切られた。この力が怖いから。この力で権威を奪われるのが怖いから。そんな保身しかし無い老害共がやった事によって俺たちは人を信じれなくなった。
その結果、ある者は、自身を神まで至らせた者。原点〈創星の人外〉の派生系〈創星の天使〉最終的に〈創星の女神〉となり、神の地位に自身の身一つでなった者もいた。名は鳴神天使、僕らの中で最も気高く強かった者。
ある者は、自身を堕としきる事で神となった者。原点〈創星の人外〉の派生系〈創星の悪魔〉最終的に〈創星の魔神〉となり、人ならざる者に力を与えた者。名は魔星神堕、僕らの中で最も人々を思っていた者。
ある者は、魔族を率いる魔王となった。原点〈創星の王〉の派生系〈創星の魔王〉荒くれ者しか居ない魔族をまとめ上げ国を築きあげた者。名は天崩王魔、僕らの中で最も狡賢く悪どい者。
ある者は、荒地に新たなる国を作った王。原点〈創星の王〉の派生系〈創星の豊王〉荒地を耕し死んだ土地を生き返らせた者。名は火穣豊焔、僕らの中で最も戦いを嫌った者。
ある者は、世界を旅し全世界から英雄視された冒険者。原点〈創星の騎士〉の亜種〈創星の冒険者〉この世界で最も強いと呼ばれる暗黒大陸を制覇した者。名は夢幻星覇、僕らの中で最も義理堅かった者。
ある者は、自身の趣味の為に世界中を周りありとあらゆる武器を作った者。原点〈創星の騎士〉の亜種〈創星の鍛冶士〉この世界にあるほぼ全ての伝説兵装を作った者。名は兵零迦土、僕らの中で最も頼り甲斐のあった者。
ある者は、復讐のために人生全てを費やした者。原点〈創星の魔法使い〉の派生系〈創星の錬金術士〉前世の銃などを作り同じ英雄に殺された者。名は復裁讐炎、僕らの中で最も人を怨んでいた者。
ある者は、世界中のうまい者探しの旅に出かけた者。原点〈創星の姫〉の派生系〈創星の歌姫〉路銀を歌で稼ぎどこで死んだかもわからない者。名は姫夜蒼歌、僕らの中で最も自由奔放だった者。
ある者は、元の世界に戻るために研究を続け元の世界に戻ることの出来た者。原点〈創星の魔眼〉の亜種〈創星眼〉の持ち主。元の世界に戻ったのは70を超えた時であちらへ行って5.6年で死んだ者。名は、黒城星雷、僕らの中で最も前世に未練のあった者。
そして最後、ある者は、裏切られた後何のやる気も起きず世界を拒絶した者。原点〈創星の魔法使い〉の派生系〈創星の魔術師〉この世界にない方法の魔法を行使した者。名は夢魔海燕、僕らの中で最もやる気のなかった者。
そして、最後のが僕だ。信じていた人に裏切られたりして、やる気を完全に無くしてしまったんだ。何をする気にもなれずフラフラしていた所にこの迷宮があって、なんとなく入ってみたら、嫌がらせみたいな構造をしているから流石にここに来る人たちかわいそうだと思ってセーフティーポイントである、この場所を作ってみたんだ。
そして、いつか、この文を同じ転生者が見てくれるのを待って記したんだ。君たちのいる時代には分からないが、王族を信じるな。あいつらは自身の為ならなんだってやる。どうせ、裏切られるなら、いっそのこと人を信じるな。それが僕からの忠告だ。
〈創星の魔術師〉夢魔海燕より
PSここに辿り着いた褒美として、僕が前世で作った魔法を君たちに託すよ。世間では伝説魔法と呼ばらていたよ。前にある門をくぐると覚えられるから』
壮絶な人生だったな。助けた人に裏切られ、居場所を失った転生者か、確かに誰も信じなきゃ裏切られる事はないが、そんなの人生楽しくない。どうせ生きるなら楽しく生きないと、そしてそれをする為に強くならないと、だから、すまんな。せっかくの忠告を無視するぜ。俺は美月を信じるし、ルナやユエを信じる。たとえ何があっても、裏切られてもだ!!
「美月、俺はお前の事は何があっても信じるからな」
「う、うん」
美月は顔を少し赤くして頷いた。そしてそのまま顔を上に上げない。どうしたんだろうか?
「そ、そうだ。紅夜、転生者ってなに?」
そういえば言ってなかったな。まあ、美月にならいいか
「美月、今から言う事は嘘のように聞こえるかもしれないけど本当の事なんだ。信じてくれるか?」
「当たり前。紅夜がこんな事で嘘をつくはず無いから」
「分かった。なら説明する」
ーーーーーーーーー説明中ーーーーーーーー
「つまり、紅夜は元々この世界の人間じゃ無いって事?」
「ああ、そうだ。やっぱり、信じられ無いか?」
「うんうん、信じてるよ。疑問に思ったのは魔神テウフェルってのは魔星神堕と同じ人なのかなって事だけ」
「俺もそれは思ったけど、本神に聞かないとわからないな」
「それも、そうだね」
「なにか、通信方法があればいいんだけどな。まあ、無い者は仕方ないか」
「そうだね。あと、ここまで来たんだから伝説魔法を覚えていこう」
「そうだな。せっかくだし貰っていくか」
俺たちは貰える者は貰う主義だからついでに伝説魔法を貰っていく事にした。そして、重そうな扉を開く為に身体強化をしたが、無くても問題なさそうなくらい軽かった。
「あっさりと空いたな」
「うん、あっ、あれ見てあそこに魔方陣がある」
「あるな。状況から察してあそこに乗れって事だな」
「うん、たぶん」
俺たちは、魔方陣の上に歩いていく。魔方陣の真ん中に差し掛かった時にいきなり魔方陣が光りだし声が聞こえる。
《魔方陣起動。対象の精神状態を計測、条件を満たしている為、〈豊穣魔法〉〈重力魔法〉〈終焉魔法〉の取得に成功》
おお、念願の魔法か、でも美月ってMATなんかが0だから魔法使え無いんじゃなかったけ。
「美月、そっちにも魔法って覚えられたのか?」
「うん、〈付与魔法と〈隠形魔法〉の2つが手に入った」
「俺とは違うんだな。俺は〈豊穣魔法〉〈重力魔法〉〈終焉魔法〉の3つだ」
「それでも、かなりの戦力アップになった」
「ああ、だから俺から無謀な提案をするがいやなら断っていいぞ」
「言わなくても大丈夫。このまま最深部まで行っちゃおうって事でしょう」
「ああ、どうだ?」
「もちろん、行く」
「そうか、でもその前に今さっき手に入れた魔法をうまく使えるようになってから行こう」
「うん、分かった」
そうして、俺たちはこのまま、前の階層に行くための階段まで歩いて行く。本来魔物の居ないこの階層にいる小型の蝙蝠の魔物の姿に気づかないまま。そして、その蝙蝠が眷属であった事もその主とのちに会う事になるなんてその時は知りもしなかった。




