Aランク冒険者VS紅夜
場が静まっている中俺は突然現れた男にそう尋ねた。
「お、お前知らないのか!?」
グライドがすごく驚いたように聞いてくる。
「ああ、知らん」
俺が言い切った後、場にいる美月以外の人が信じられないものを見るような目で見てきた。
あれ、有名人なのかな?まあ、そういう情報は集めてなかったから知らなくてもおかしくないけどそんなに有名な人なのか?初見だと唯の酒飲みオヤジにしか見えないんだけどな。
俺がくだらない事を考えていたらグライドが口を開いた。
「あの人は、かの有名なレギオン《紅き衝動》のレギオンマスターをやっているAランクの冒険者で」
そこまで行ったところで、突然出てきたあの男に声が遮られた。
「まさか、俺の事を知らない奴がいるとわな。これでも、結構有名になった方なんだぜ」
「それは悪かったな。俺の住んでいたところは、田舎だったんでそういう情報に疎くてな」
「そうかい、なら知らないのも無理はないな。なら、名乗るか、俺の名前はヨーゼフ・バナートだ。さっき、あいつの言っていた通りAランクの冒険者で三大レギオンの1つ《紅き衝動》っつう、レギオンのマスターをやってる。よろしくな」
「三大レギオンのマスターがなんでこんなところにいるんだ?」
ここの周りにいる魔物は弱いものばかりだ。Aランクの冒険者、それも三大レギオンのマスターをやっている奴がいるところではないと思うのだが。
「元々は、ここであそこにいる新人を鍛えるために来たんだがお前らが試験を受けるって事で脇に避けてたんだ。それで、あのお嬢ちゃん、えっと美月って言ったか?あの子の試合を見てな、お前のことを試してみたくなったんだよ」
はあー、なんか目をつけられたみたいだな。後々レギオンに勧誘なんかされたら面倒だな。
「それで、俺がこいつの試験を受け持ってもいいのか?」
受付嬢に対してヨーゼフが問う。
「はい、私共としては構いませんが、このクエストはグライド様がお受けしているものです。なので、グライド様に許可を頂けたのなら問題ありません」
「俺は構わないぞ。俺はただ単純に新人の冒険者が死ぬのを見たくなくて試験を担当してるだけだからな」
グライドって、結構お人好しだったんだな。ああ、だから美月を何度も挑発したのか、そういった敵にもきちんと対応できるかを見るために。
「なら、決まりだな。それじゃあ、準備しろよ」
仕方ないか、どうしようもないから準備するか。
「美月、少し夜叉貸してもらえるか?」
「別にいいけど、紅夜、刀を使えたっけ?」
「いや、使えないけど少し考えがあるから使いたいんだけど駄目か?」
「いいよ。紅夜になら」
「ありがとう」
美月から、夜叉を受け取り訓練場に向かう。
「おっ、お前も刀を使うんだな」
「お前じゃなくて、紅夜だ」
「そう呼ばれたいなら、美月と同じく実力を示してみろ」
「なら、そうしてやるよ」
〈灼熱の魔眼〉を使う。しかし、ヨーゼフが刀を1振りすると本来燃えるはずなのに何も起こらない。
「やっば、魔眼持ちだったか」
「何をしたんだ?」
「顔の辺りに何かが発動するのが分かったから刀に魔力を乗せて断ち切ったんだよ」
「そんなことが出来るのか!?」
「まあ、俺以外の奴にはできないがな。それじゃあ今度は、俺のほうから攻めるとするか」
まずいな、魔眼以外には大した戦闘能力は俺にはないからな。そうだ、ヨーゼフが近づいてきたときに〈転移眼〉を使い後ろに転移すればもしかしたら一撃決められるかもしれない。なら、まずは下準備から〈永劫の魔眼〉を使い体感時間を限りなく長くする。
「お前は刀を抜かないのか?」
ヨーゼフが俺に聞いてくる。〈永劫の魔眼〉を使っているためすごくゆっくりと聞こえる。そしてその問いに対し俺は
「必要ない」
そう答えた。
「なら、その言葉後悔するなよ」
するかよ、もしかしたら決められるかもしれないんだ。
ヨーゼフが刀を持ち俺にそこそこの速さで迫ってきた。〈永劫の魔眼〉を、使いこのスピードなのだと思うと勝てる気がなくなるが今はいい。絶対にいつか真正面から勝てるように
よし、今だ!〈転移眼〉を使いヨーゼフの後ろを取る。夜叉を抜刀しヨーゼフに斬りかかるが見向きもせずなんなくヨーゼフに受け止められる。
「やっぱり駄目か」
「いや、俺じゃなきゃ受けてたと思うぞ」
「そうかよ」
やはり、近接戦は不利だな。
俺は距離を取るために〈転移眼〉を使いヨーゼフから距離を取る。
どうやって倒すか?ピンポイントだと防がれるから範囲攻撃で試してみるか
〈凍結の魔眼〉と〈烈風の魔眼〉を〈複合眼〉で複合しヨーゼフの方向に撃つ。だがヨーゼフは魔力を刀に乗せて氷の風を吹き飛ばす。
「風の魔眼も使えたのか、お前は一体どれだけの魔眼を持ってるんだ?」
「教えるかよ」
「それもそうだよな」
今さっきのやつは風の魔眼として捉えられたか、なるほど、やはり1人で持っている魔眼の数は多くて2つのようだ。つまり〈複合眼〉は俺のオリジナル又は今まで誰も使えなかった魔眼ってことか。ならやりようは幾つかあるな
〈永劫の魔眼〉を継続して使い続けながら〈先見の魔眼〉と〈第3の眼〉を発動する。
「それじゃあ、行くぞ」
〈先見の魔眼〉の効果でヨーゼフがどこに移動しようとしているかが見える。赤い線のようなものが見えどこをどうやって斬るのか、どこに逃げたらどっちに動くのかなどが見える。
うわ、線多すぎ。これって、〈転移眼〉使わないと避けられないな。
〈転移眼〉を使いすぐさまヨーゼフから離れ距離を取り〈灼熱の魔眼〉と〈轟雷の魔眼〉を複合し撃つ。かはり、すぐさま斬られ発動しない。
やっぱ、魔力切れを狙うしかないか、ヨーゼフの魔力は俺よりもかなり少ないから切れるのも時間の問題だろうし。それまで生き残れないと駄目だけどな。そうと決まれば撃ちまくるぞ
俺はこの後様々な組み合わせを行いヨーゼフへと攻撃するが1撃たりとも当たることはなかった。
「おいおい、そんな攻撃じゃ届かないぞ」
そんなことは分かってるよ。でも魔力切れを狙わないと勝てないんだよ。
「魔力切れを狙っても無駄だぜ。そろそろ、お前の転移にも慣れたからな。次は当てるぜ」
まじかよ。嫌でもハッタリかも知れない。なら作戦は続行だな。
「おら、行くぞ」
ヨーゼフは斬りかかってくる。いつも通り〈転移眼〉を使い攻撃を避けるが、今回はいつもと違い、転移する瞬間ヨーゼフが進行方向を変えた。そして、俺が転移した時にはかなり近づいている。俺はすぐにまた、転移をする。だが、何度転移しても追いつかれていて、ついには、転移が間に合わずヨーゼフに斬られる。
痛っ!こんなに斬られると痛いのかよ。
「おお、お前なんでその程度の傷でそんなに痛がってるんだ。こんなの冒険者をやってれば受けるダメージだぞ」
そんなの受けたことないに決まってるだろ!!こっちに来る前は平和な世界だったし、こっち来てからも魔眼っつうチートがあったから傷なんて負ったことないんだよ。
「俺の推測だが、その魔眼があって傷を負ったことなんてないんだろ。だからその程度の傷で痛がるんだよ」
ヨーゼフはそこまで言うとまるで、人を叱る人の様な顔をしながらこう告げた。
「覚悟も無いのに冒険者ギルドに来るんじゃねえーよ!魔物と戦ってたらその程度の傷を負うのは普通だ。どうせ、その魔眼があればなんとかなると思ってたんだろ。その程度の覚悟しか無いなら冒険者なんかにならず田舎で引きこもってやがれ!!」
覚悟が足りない、そんな事は分かってるよ!!魔眼があればなんとかなると思ってたさ、そりゃあ、神のくれた特典なんだから!!冒険者だって異世界に来たんだからってだけの理由で始めようと思ってたんだ!
そりゃあ、俺は弱いさ。身体的にも精神的にも。神からもらったチートを使うだけだったんだから。
だけどな、俺は強くならないといけないんだ、学園に入るために大会で勝たなければいけない。それに何よりも美月を守り続けるためにも、そのためにも、今ここで覚悟を決めよう、どんな苦痛も耐えよう、大切な物を守り抜こう、そして自身の持つチートを使いこなそう、そしてその過程でおきる全ての事を耐え抜こう、前世では逃げてしまったから、前世では守りきれなかったから。
そして、今ここで誓おう、俺の大切な物を守りきると、たとえそれが世界全てを敵に回したとしても。だから、今はあいつに勝つ、どんな事をしてでも。
《称号〈魔眼の王〉の条件を一部達成、これより封印の解放を始めます》
〈魔眼の王〉確か内容の一切分からなかった称号だったな。まあ、いい。この状況を打開できるなら使うまでだ。
俺はステータス内の〈魔眼の王〉を見る。
〈魔眼の王〉魔眼全ての能力を向上させる、一部条件を満たしていません、条件を満たしてください
魔眼全ての能力を向上させるか、どのくらい上がるのか、試してみるか
〈灼熱の魔眼〉でヨーゼフを攻撃する。
「またか、効かないのが分からないのか」
また、ヨーゼフが剣を振るう。だが、今回は降った後にヨーゼフが大きく回避行動をとる。その後ヨーゼフのいた所に大きな火柱が起きる。
「何をしたんだ?いきなり威力がこんなに上がるなんて」
「何もしてない。ただ、覚悟を決めただけだ。俺自身の大切な物を絶対に守り抜くとな」
「なら、その覚悟が本物か確かめさせてもらうぜ」
俺に向かって来るヨーゼフを俺は〈転移眼〉を使い空へと転移させる。突然空へと翔ばされたヨーゼフは体勢を崩す事なく着地する。
「おいおい、そんな事ができるならなんでやらなかったんだ?」
「やらなかったんじゃなくて、出来なかったんだよ。今までは圧倒的な実力差があったら出来なかった、それと相手が嫌がっていても出来なかったんだよ」
だけど、今は能力が向上してできる様になった。
「絶対に勝つ」
「出来るもんならやってみろ」
やってやるさ、〈複合眼〉で〈灼熱の魔眼〉〈轟雷の魔眼〉〈烈風の魔眼〉そして、〈永劫の魔眼〉を複合する。〈永劫の魔眼〉で発動時間を長くする。出来ないかも知れないが、いや出来る。そして放つ。
すると、ヨーゼフの周りを雷炎の嵐が包む。それは消える気配はなく、ある程度の時間で雷炎の嵐を消すために徐々に小さくしていく。
さすがにこの威力なら無傷ではないだろう。
雷炎の嵐が止むとまだ、ヨーゼフは立っている。だが、その体にはいろんな所に火傷がある。
よし、傷を与えた!これを続ければ
そう、考えていた時に何かに攻撃をされ意識が遠のく、
「まさか、これを使わされるとはな。よくやったよ、お前、じゃないな紅夜、まさか、伏せていたカードを切らされるとは思わなかったよ。お前の覚悟は伝わったよ。だから今は眠れ」
そう言われた後また、何かに攻撃をされ今度は意識を失った。
今、絵のかける友人に紅夜と美月のイラストを依頼しています。学園編に入る時には投稿できると思います。
〈猛風の魔眼〉を〈烈風の魔眼〉に変えました。それと〈烈風の魔眼〉と〈轟雷の魔眼〉の説明を変えました。
〈永劫の魔眼〉時間を引き延ばすことのできる魔眼
〈先見の魔眼〉ある程度先の未来を見ることのできる魔眼
今回出てきた魔眼の詳細です




