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冒険者

「ふわぁー、もう朝か」


昨日不安だった宿は結論から言えば簡単に見つかった。

昨日あの後


「紅夜、外門に着いたよ」


「そうだな。じゃあとっとと入るか」


「うん」


俺たちが帝国の中に入ろうとした時門番の人に声をかけられた。


「おい、お嬢ちゃんと坊主なんでこんな遅い時間まで外に出てるんだ?」


「お嬢ちゃんじゃない、私は暁美月って言うの」


「俺も坊主じゃなくて暁紅夜だ」


「それは悪かったな。ついでだし俺も名乗っておくか、俺の名前はシュベルド・イージスってんだ。それでなんでこんな時間まで外に出てるんだ?」


「魔物を狩ってた」


「俺たちの村は田舎の方で貧乏だから冒険者になって一攫千金を目指してここに来たんだ」


ニーナが完結に答えたのを、俺がそれっぽい嘘を付け加える。


「紅夜、それって嘘だよね」


「俺たちくらいの年齢の子供が冒険者になろうと思って行動できるような状況はこれくらいしかないから仕方なくだ」


俺たちは小声で話している。


「ああ、やっぱりそういう奴か、辞めとけお前らくらいの年齢のだと普通に働いた方が給料も高いし危険もないぞ」


シュベルドは諭すように俺たちに語りかけてくる。


「大丈夫、この森に入る奴なんかに負けないから」


それを美月は変な風にとらえたらしく少し挑発気味に言い返した。


「そんなことを言う奴に限ってすぐに死ぬ。悪いことは言わねえから冒険者は辞めとけ」


これなんか終わりそうにないな。ああ、あれ出せば終わるか、そう思い俺は〈無限倉庫(アイテムボックス)から【月輪熊(ブラックベアー)を取り出しシュベルドに見せつける。


「これでいいか?」


シュベルドは驚愕の表情を浮かべまじまじと【月輪熊(ブラックベアー)を見ている。


「これはお前達が狩ったのか?」


「当たり前」


「当たり前だろ」


まあ、実際は俺たちではなく美月1人だが


「お前らくらいの年齢でこの熊が狩れるとは世の中は広いもんだな。だけど冒険者ギルドに行くなら明日の昼の方がいいぞ。今はお前らくらいの年齢の子供がいくと面倒になるからな」


ああ、テンプレみたいに絡んでくる奴が居るんだろう。


「でも私たちお金がないから素材を売らないと宿にも泊まれない」


そうなのだ。それ際なければシュベルドの言う通り宿をとって寝るのもやぶさかではないのだか。


「それなら、俺の母さんのやってる宿にくるか?」


「今さっき言った通り金ないぞ」


「別にいいよ。後払いでそれを売ったらそこそこの金は入るんだから」


へえ、世の中にはこんな優しい人もいるんだな。ここは言葉に甘えるとするか


「それなら、助かる。ありがとう、それで美月はいいか?」


「うん、紅夜がいいならそれでいい」


「なら、それで決まりだな。少し待ってろそろそろ交代の奴がくるから」


それから少しして交代の奴がきてシュベルドと一緒に宿の方に向かった。


「着いたぞ。ここが、俺の母さんがやってる宿屋『小鳥遊』だ」


小鳥遊!この名前って異世界にもあるのか?


「小鳥遊って」


「ああ、珍しいだろ。うちのご先祖様が考えた名前でな、小鳥が遊べるほど安全だからって事で天敵の鷹のいない、鷹、無しということでたかなしって名前にしたらしいぜ」


ここの家系には転生者がいるのか、まあ、俺には関係ないか。


「母さん、帰ったぞ」


すると店の中から女性が出てきた。


「あら、久しぶりに帰ってきたと思ったら誰なんだいその子供は?」


「冒険者志望の田舎出身の暁紅夜と暁美月だ」


シュベルドの母は俺たちの事を興味深そうに観察してこういった。


「合格」


何かを呟いていたがよく聞き取れなかった。


「私はナタリー・イージスだよ。それで代金は明日払うから今日泊めてやって欲しいって事かい?」


「ああ」


「いいよ。紅夜と美月と言ったかい、きちんと明日持ってくるんだよ」


「ああ、分かった」


「うん」


その後夕食をとり自室に戻り寝たのだ。


「美月、起きろ。飯食いに行くぞ」


美月を揺さぶりながら起こした。


「うーん、ちょっと待って」


ああ、美月は目覚めが悪いのか、俺も前世では目覚めが悪い方だったからその気持ちはよくわかるだが、長々と布団に入ってると後が辛くなるんだ、許してくれ。


心の中で詫びを入れ美月の布団を引っぺがす。


「起きろ。布団から早くでないと後が辛くなるぞ」


「分かった、今起きる」


しぶしぶといった感じで美月は起き上がる。


「それで、朝食は?」


いやまだ、寝ぼけているみたいだ。


「ここにはないぞ。今から食いに行くんだ」


「うん、じゃあ、行く」


「ああ、行くぞ」


食堂に行き、朝食を受け取るためにナタリーさんの元に向かう


「朝食食べに来た」


美月はまだ完全に起ききってないのかいつも以上に口数が少ない。


「はいよ、今日のメニューは白米にのり、焼き魚に味噌汁だよ」


おお、日本にいた時と同じ朝食だな。昨日の夜に、食べた時は懐かしくて泣いてしまった。そのせいで美月達に心配をかけてしまった。


「ありがとう」


「どういたしまして。あ、そうだ美月ちゃんにはフォークとスプーンを渡さないとね」


「うん、ありがとうナタリーおばさん」


昨日1日で美月はかなりナタリーさんになついている。恐らくは母親からちゃんとした愛を受け取っていなかった事が原因だと思う。


「それで冒険者になってもこの宿に来なさいよ。あんたらだけだと不安だからね」


「うん、分かった」


そう言って席に着き朝食を食べ終えると俺たちは冒険者ギルドに向かい歩き出した


「紅夜、今日はギルド登録した後クエスト受けるの?」


「俺はどっでもいいけど美月はどっちがいい?」


「私は今日はこの国を見て回りたいな」


「じゃあ、今日はそれで行くか」


「うん」


しばらく歩いて行くと大きな建物が見えてきた。


「着いたぞ」


「うん、早く登録してこの国を見て回ろう」


「ああ」


早く登録を終える為にギルドの扉を開け窓口の方へと向かう。


「ようこそ、冒険者ギルドへ、本日のご用は依頼の発注ですか?」


「いや、ギルド登録の方なんだけど」


「登録ですか!?ではこの用紙に必要事項を書いてください」


受付嬢は驚きの表情を浮かべたがすぐに本来の業務に戻った。


「それと魔物の素材などを持ち込んでいただくと試験ののち狩猟依頼が可能なEランクから始められますがどういたしますか?」


「えっとお願いします」


俺は〈無限倉庫(アイテムボックス)〉から昨日倒した魔物を取り出した。


「これ全部ですか!【月輪熊(ブラックベアー)】に【群衆狼(クロウドウルフ)】の群れまで!これらはあなた達が狩ったものですか?」


「そうだけど、なんでそんなこと聞くんだ?」


「【月輪熊(ブラックベアー)】はDランクへの昇格に必要な魔物です。なので【月輪熊(ブラックベアー)】を狩れるということはDランク相当の実力をその年で持っているということになりますから念のために聞いたのです」


「ならその権利は俺じゃなくて美月の物だな」


「何故ですか?この昇格はパーティーメンバーにも与えられますよ」


「いや【月輪熊(ブラックベアー)】を狩る時俺は手を貸してないからな」


また受付嬢は驚きの表情を浮かべた


「彼女がお1人であの魔物を狩ったのですか!?」


「うん、私が1人で狩った」


「そう、ですか。では試験はいつお受けしますか?」


「どれくらいかかるんだ?」


「試験管であるBランクの冒険者と戦いその試験管が合否を判定いたします」


「なら今日でいいか美月」


「うん、別にいい」


「分かりました。それとこの魔物はここでお売りになりますか?」


「ここ以外だとどこがあるんだ?」


「商業ギルドなどがありますがそこではあなた方のような素人だと安く買い叩かれてしまいますからここで売っていただくのがオススメです」


「なら、それで頼む。あとランクの昇格に必要な事を教えてもらえるか」


「はい、F.Eランクの昇格条件も入りますか?」


「それは、いい」


「分かりました。まずDランクの昇格条件は先ほど言った通り【月輪熊(ブラックベアー)】の討伐です。

Cランクの昇格条件は【亜龍(ワイバーン)】の討伐です。

Bランクの昇格条件は【炎龍】、【氷龍】、【雷龍】、【嵐龍】、【白龍】、【黒龍】のうちどれか2種の討伐です。

Aランクの昇格条件は古代(エンシェント)シリーズの魔物の討伐です。

Sランクの昇格条件は神話(ミソロジー)シリーズの魔物の討伐です」


古代(エンシェント)シリーズに神話(ミソロジー)シリーズってのはなんだ?」


「はい、古代(エンシェント)は太古から存在する魔物です。例を挙げると【混沌龍(カオスドラゴン)】、【四聖龍(エレメンタルドラゴン)】などが存在します。

神話(ミソロジー)は天災、と呼ばれるほどの力を持った魔物です。例を挙げると【神狼(フェンリル)】、【無限龍(ウロボロス)】などが存在します」


「査定が終わりましたよ」


すると今まで話していた受付嬢のうしろから声がした。


「初めまして、私はこの冒険者ギルドで働いているサーシャ・ローレライと申します。以後よろしくお願いします」


「これはご丁寧にどうも、えっと俺は暁紅夜それで、こっちの彼女が」


「暁美月、よろしく」


「はい、よろしくお願いします。それで査定結果ですが23万3500円となります」


「円!」


単位が日本と同じだった事に驚いた。


「はい、お金の単位となります。帝国の初代の王が決めた単位となり殆どの国で使われています」


初代の王って魔王か、なら俺たちに馴染み深かい円を使うのも当たり前か


「それでお金の方は試験のあとで発行する冒険者証の方に入れてお渡しします」


電子マネー的なやつか、それでいいか。


「ああ、分かった」


「それでは、試験会場に向かいますから付いてきてください」


今まで会話に入ってこなかった受付嬢がそう言って歩き出した。俺と美月は試験を受けるために受付嬢について行った。


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