狩り
「よっと」
「ひゃっ」
無事着地成功。ニーナは着地失敗したのか。
「大丈夫か?」
「うん、でも地面から少し離れて転移するなら言っておいて欲しい」
「ごめん、言い忘れてた」
「でもなんで少し離れて転移するの?」
「まだ完全に使いこなせてないから地面ちょうどに転移先を設定すると足が地面にはまる時があるんだよ」
「そうなんだ」
ニーナは納得してくれたようだ。これから何回か使っていけば誤差もなくなると思うけど今は少し誤差があるからな。
「じゃあ、とっとと狩りを始めようぜ」
「うん、何から狩る?」
「1番最初にあったやつでいいでしょ」
「なら早く探しに行こう」
ニーナは早歩きで森の中を探しに行った。
「ニーナ、置いていくな」
俺はニーナを追いかけるために走り出す。ニーナの身体的なステータス俺よりも高いから早く追いかけないと追いつかない。
「早く行かないと陽が暮れる」
「だから少し落ち着け、むやみに探し回るよりも〈精霊の眼〉を使って探した方が早い」
「じゃあ、早く使って」
ニーナはかなり興奮気味だ。まあ、仕方ないだろう。魔眼使いだったがために外に出られなかったんだから。なら付き合ってやるか
俺は〈精霊の眼〉を使い獲物を探す。
「ニーナ、いたぞ」
敵はだいたい100メートルほど先にいた。確かあの魔物の名前は【灰狼】でFランクの魔物だ。
「何処!?」
「あっちに100メートル行ったところにいる」
「行ってくる」
ニーナはそう言うや否やスピードをかなり出して【灰狼】の元へ駆け出した。
「ニーナ、ちょっと待って」
時は既に遅くニーナは【灰狼】の元に向かっている。
【灰狼】の元にたどり着いたニーナはスピードを維持したまま刀を抜き【灰狼】に一閃、【灰狼】は速さに対応できなかったのか無抵抗に殺される。
「弱い」
それもそうだろう。なんたってFランクの魔物だ。ニーナのステータス的に負ける可能性など無いのだから
「テンションが上がってるのは分かるが先行するな」
俺が少し怒気を込めながら言ったら
「分かった。次は気をつける」
反省したようにそう返してきた。
「分かればいい。この森でニーナの負けるような魔物いないと思うが群れに囲まれたりしたら大変だからな」
「うん、気をつける」
「狩った獲物を〈無限倉庫に閉まって次の獲物を探すぞ」
また〈精霊の眼〉を使い獲物を探す。見つけたが結構遠いな。面倒だし魔物の多いところは無いかな?……おお、あった。ここから森の奥の方に入ったところにちょうどいい感じのところが。
「この近くはあまり魔物が居ないから移動するぞ」
「どれくらいかかる?」
「今から〈転移眼〉を使っていくからすぐに着くぞ。じゃあ行くぞ」
「うん」
〈転移眼〉を使い森の奥の方に転移する。
「今回は着地できたんだな」
「2回目だから」
「そうか、じゃあ狩りに行くぞ」
「うん、次はどっち?」
「いや、今度は魔物の数が多いから一緒に行く」
今回の魔物は【群衆狼】群れを作り群れで行動する魔物でEランクの魔物だ。
「今回の敵は【群衆狼】だ。群れを作っていて最低でも30匹はいる」
「かなり稼げるってことだよね」
「まあ、そう言うことだ」
見た所5.60くらいしかいない。俺が魔眼による援助をしてニーナが前衛をやればすぐに終わるだろう。
「じゃあ、斬ってくる」
「ああ、俺が後衛で支援するから思う存分暴れてこい」
「うん」
ニーナはまた凄まじい速さで【群衆狼】に斬りかかり2匹の【群衆狼】を殺す。
すると周りにいた【群衆狼】十数匹がニーナを取り囲む
なかなかに早い対応だな。なら数十匹の【群衆狼】を〈凍結の魔眼〉で凍らせる。
「ニーナ、別のところのやつを狩りに行け」
「うん」
獲物を取られて不服なのか少しテンションが低い。
ニーナは俺に負けずと身体能力を生かし【群衆狼】を斬りつける。
俺も負けていられないな。それに実験したいこともあるしな。まず〈凍結の魔眼〉で大気を凍らせてそれを〈猛風の魔眼〉を吹き飛ばし【群衆狼】に当てる。
おお、一撃で倒せるくらいの威力はあるか。
次は〈凍結の魔眼〉と〈烈風の魔眼〉を〈複合眼〉で複合し使う。すると〈烈風の魔眼〉で起こった風が通ったところが全て凍り始めた。木々はもちろん大地や【群衆狼】までもが
これはこれで使えるな。
次は〈灼熱の魔眼〉と〈轟雷の魔眼〉で実験するか。
俺が実験している時ニーナは淡々と【群衆狼】を斬り続けていた。群れでいるため数匹を狩っただけで向こうから寄ってくる。それを高い機動力で錯乱しながら地道に数を減らしていき残るは10匹ほどになってしまった。残ってる10匹は最初の方からニーナ達の実力に気づいていたためニーナ達に襲い掛からなかったものである。
だが、近づかないだけでは無意味である。死にたくないのであれば遠くに逃げなければならない。なぜならこちらには射程が長い魔眼使いがいるからだ。俺は残りの【群衆狼】全てを〈凍結の魔眼〉で凍らせる。凍った【群衆狼】は不意の出来事で対応できず1匹たりとも逃げること叶わず凍らされる。
「ニーナ、斬り殺したやつの回収頼む。俺は【群衆狼】の解凍作業に入るから」
「うん、分かった」
俺は〈無限倉庫〉を渡し頼む。
さて解凍作業に入りますか、〈凍結の魔眼〉使って凍らせると〈灼熱の魔眼〉使わないと溶けないからな。
サクッと解凍作業を済ませてニーナに回収を頼む。
「ニーナ、こっちのもお願い」
「うん」
全ての【群衆狼】を〈無限倉庫〉にいれ終わり次の獲物を探し始める。
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それからしばらく同じ要領で狩りを続けていると日も暮れはじめてきた。
「ニーナ、そろそろ帝国に入るか?」
「ちょっと待って、この森にいて今まで狩ってない魔物ってどれくらいいる?」
「あと1種類かな」
「じゃあ、それを狩ってからいこう」
「別にいいけどちょっと待って」
〈精霊の眼〉でその魔物を探す。いたけど遠いしそろそろ暗くなってくるから短期決戦が望ましいな。
「そろそろ暗くなってくるからすぐに決着をつけるぞ」
「うん!」
ニーナは嬉しそうに返事をした。
「なら跳ぶぞ」
〈転移眼〉を使いその魔物のいるところに転移する。
「あれが、この森で狩っていない魔物で名前は【月輪熊】この森で1番強い魔物だ」
「大丈夫、私とナイトなら勝てる」
「そうだな。じゃあ行くか」
まあ、魔眼をフルで使えば勝てるだろうがそれでは意味がない。今回俺は完全に支援に回るとしよう。
前と同じくニーナが素早く近づき刀を抜き【月輪熊】に一閃、しかしその刃は避けられる。
やはり避けるか、ニーナがピンチになったら助けるとしよう。このまま俺が魔眼を使い倒してもニーナは納得しないだろうし
ニーナの刀を避けた【月輪熊】はニーナに向かって腕を使い攻撃する。とはいえそんな単調な攻撃をニーナが躱せないはずもなくすんなりと躱していく。たが、何度攻撃してもニーナの放つ刀は【月輪熊】には当たらず泥沼となりかけている。
これは手助けがいるか、と思い魔眼の準備に入ろうとした時ニーナが【月輪熊】から距離を取り刀を納刀した。その後、ニーナは深呼吸をし眼を閉じる。
「ふうー」
【月輪熊】はニーナを警戒しニーナに近づこうとしない。しばらく硬直状態が続き、遂には日が暮れてしまった。夜目を持たない人間に対し夜目を持つ自身の方が有利と感じたのか今まで近づこうとしなかった【月輪熊】がニーナに急接近する。
しかし、ニーナはそれを待っていた。【月輪熊】が刀の射程圏内に入ったその時視力強化系の魔眼を使っていなかった俺では眼で終えないくらいの速さで抜刀、【月輪熊】は自身の身に何が起こったのかもわからないまま死んだ
「我流抜刀術:閃光」
ニーナが技名らしきものをボソッと呟く。
「倒したよ」
「ああ、すごいなニーナ」
「えへへ」
照れたように顔を赤くして俯いてしまった。
「じゃあ、こいつを回収して帝国に行くか」
「うん、もう日も暮れちゃったから」
そうだな、日も暮れてるし早く行かないと入れなくなりかねない。
「じゃあ、帝国の外門前に跳ぶからちょっと待っててくれ」
これまた同じく〈転移眼〉を使い跳ぶ。
「これで歩けば少しくらいのところに外門前にがある」
「うん、じゃあ行こう」
それから歩き始める。
「ニーナ、お前の名前変えてみたいと思わないか?」
「どうして?」
「その名前見るたんびに嫌そうな顔をしていただろう」
収容所にいる頃姓と名前を書かされる時がありその時思い出したくないものを見るような顔をしていたのだ。
「変えたいか変えたくないかでいわれたら変えたい」
「なら、変えてみるか?」
「出来るの!?」
「ああ、おそらくではあるけど」
「それでどうやってやるの?」
「〈白炎眼〉を使う」
〈白炎眼〉実体を持たないものを燃やす魔眼、これならばステータスの名前の欄を消せるのではないかと考えた。
「いける保証がないから俺自身で試してみるけどな」
「でも失敗したら」
「別に大丈夫だよ」
そう言って〈白炎眼〉を使う。ステータスの名前の欄だけを焼く。しばらくして
「よし成功だ」
名前:未設定
ステータス
level:6
HP:7000/7000
MP:6000000/6000000
STR:1000
DEF:1000
MAT:40000
MDF:35000
DEX:200
AGI:500
INT:50000
LUK:50
Critcal:100
(以下略)
名前の欄が未設定になっている。これで自身の名前をつければ、えっと考えんのも面倒いし前世のでいいか。あの名前結構気に入ってるし
思えばいけるか?確認してみよう
名前:神代紅夜
よし成功だ。
「出来るみたいだからやるけどその後の名前はどうするんだ?」
「えっと、ナイトが付けて」
「ああ、言ってなかったが新しい名前は暁紅夜だ。それで俺が名前をつけるってそれでいいのか?」
「うん、ナイト、じゃあなかった紅夜が名前つけてくれたなら嬉しい」
「そうか」
俺の名前は俺の生まれた日が珍しい紅い夜の日だったから紅夜なんだったな。なら今日は満月か、満月、十六夜の月、いや思いつかないな、満月、満ちる月、美月、うんこれで行こう
「ニーナ、新しい名前は美月でどうだ」
「美月、うん、これがいい」
「そうか、なら〈白炎眼〉を使うぞ」
「お願い」
〈白炎眼〉を使い名前を焼く。よし成功だな。
「じゃあ、心の中で新しい名前を考えると名前が設定されるぞ」
「やってみる」
しばらくして
「出来てる?」
〈魔眼〉を使い確認する。うん、ちゃんと設定されてるな。
「ああ、出来てるぞ」
「よかった」
「それしゃあ、とっとと行くぞ」
俺はそう言って、歩き出した。
「うん、今行く」
ニーナは後を追ってくる。その表情は憑き物が取れたかのように輝いている。
それにしてもニーナ・ラディウスか。〈魔眼〉を使いニーナのステータスを見た時に印されていたニーナの名前だ。ラディウス確か俺たちの家と同じくらい偉い家だ。それにあそこは生粋の魔眼嫌いの家系だ。嫌がる気持ちもそれでやっと理解できたな。
「ナイ、違った紅夜早くしないと置いていくよ」
これでニーナは自身の生まれと少しは決別出来たのだろうか?それはまだわからないだけど絶対にこの子は俺が守ろう、1度面倒を見ると決めたのだ最後までやると押すのがスジだろう。
「少し考え事してたんだ、すぐに追いつくよ」
「早く、早く」
「わーってるよ」
俺の力全てを使い、命朽ち果てるまでこの子の笑顔を守り続けよう。
女の子には優しくするそれが今世での俺の生き方だ。
今更だけどこんな時間に行って宿が空いているだろうか?それだけが今不安だ。




