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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第四章 指名調査依頼「竜の棲む火山島」編
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第78ページ 昏き海の底に在るは

「結局…入るしかないか…」


眼で視えないのなら、海に入るしかない。

だが、視えないからこそ入りたくないのだ。


それでなくても陸上のようには動けない水中。

何があるかわからないのに入りたいとは思えない。


眼だけでなく識図展開(オートマッピング)も、何も映していない。

ここら辺には、どうやら通常の魔物さえいないようだ。


あるいは海に棲む魔物に話を聞ければ、少しは情報が集まるかもしれないが。


『この火山島付近に生息する魔物は、我らのように人語を話せる者はおろか、知能を持つ者もおらんよ。だいたい少しでも知能があれば、この島には近づかぬ』


言われてみればそうか。

好き好んで火竜の住処に近づこうとは思わないだろうな。


「ならどうするのがいいと思う?」

『入るしかなかろうな。お主にこのようなことを頼むのは申し訳ないが』


この火竜は妙に礼儀正しいというか、なんというか。

だが、もうそれ以外に手はなさそうだ。


「アステールはここにいろ」

「クル…」


本当は付いてきたいのだろうが、自分が水中では思うように動けないことがわかっているのだろう。

寂しそうに了承してくれ、気を付けてというように頭を擦り付けてきた。

撫でてやると、しばらくして一歩下がる。


「お前はどうする?」

『我ら火竜の問題だ。お主だけに任せるつもりはない』


どうやら来るようだ。

水の中でも動けなくなるということはないようなので、好きにしたらいいと思う。


さて、俺はどうするかな。

本来なら魔力は温存しておくべきなのだろうが。


だが、ここはそんな出し惜しみができる場面でもないだろう。

俺は水魔法で自分を覆うように泡を作り出し、水からの干渉を受けないようにした。


それでも地上と同じようにとはいかないし、魔力を消費し続けるというリスクはあるが、ないよりはマシだろう。


『ふむ…器用な魔法を使うな』

「思いつきだ」

『移動はどうする?』

「水魔法だな」


これも思いつきではあるのだが、水魔法によって直接水流を操作、俺を流すようにして移動する案だ。

更に魔力は消費し続けるが、うまくいけばそれなりの速度での移動が可能になるだろう。


『我に乗っていくか?』

「いいのか?」

『構わぬ。お主は既に我らが友よ』


火竜に乗って海中探索とは。

なにやらすごいことになったな。

どうせならばこんな厄介ごとではない時にしたかった。


「問題は空気か…」


泡の中の空気を使いきってしまえば、どうしようもない。

移動は迅速に行う必要があるだろう。


どうやら深度はあまりないようなのだが、どれほど潜ればいいのかはわからない。

火竜のスピード任せということになるだろうな。


「頼んだぞ」

『任せよ』


アステールに行ってくると声をかけ、火竜の背に乗り、海に飛び込む。

火竜のスピードは、本当に制限があるのかというくらいに速く、ぐんぐん潜っていく。


《スキル「水泳」を習得しました》

《スキル「潜水」を習得しました》

《条件を満たしましたのでスキル「水泳」とスキル「潜水」がスキル「水中行動」へと合成されました》

《「大海と天候の神の加護」を獲得しました》


アナウンスが鳴り響く。

俺が泳いでいるわけではないのだが、いいのだろうか?


『どうした?』

「なんでもないよ」


まぁ別にいいか。

あって困ることはない。


そうこうするうちに、辺りは闇に包まれ始めていた。

火竜の姿も完全には見えなくなる。

やはりこれは異常だ。


『む…』

「どうした?」

『何やら闇が纏わりついてくるような…』


水の膜があるからか、俺は感じない。

だが、同時に今までにない力が抜けていく感覚がある。


「しまった…」


魔力の流れを追うというのは、魔力を奪っている何かに近づくということだ。

近づけば近づくほど、魔力吸収の力は上がっていくとみておくべきだった。


『ここまでくれば我にもわかる。だが、不思議だ。もはや一寸先も見通せぬというのに魔力の流れにより迷うこともなく目的地にいけるとは』


火竜も今まで以上に魔力を吸われているはずなのに、余裕そうだ。

心強いことで。


『む…何か見えてきたぞ』

「何?」


火竜の言うように、今まで何も見えなかったにもかかわらず、いつの間にか進む先に何らかの光が見える。

それは、禍々しい色をした見覚えのある光だった。


---


『ではあれが…』

「おそらく魔神の欠片なのだろうな」


きっかけが何だったのかはわからない。

初代アタミ伯爵の魂がでてきたことか。

それとも八咫鏡の力によるものか。


それを調べることに意味はあるのだろうか。

調べる術はあるのだろうか。


俺はディメンションキーから神刀を取出し、抜刀する。

相手が魔神の欠片だというのならば、斬鬼では無理だ。


まるで誘われているように、俺たちは禍々しい光に近づく。

目の前には紫色の割れた結晶のようなものがあった。


もちろん、俺たちは魔力を今までの倍以上吸われている。

無事でいるのは、俺は魔力回復速度の、火竜は魔力保有量のおかげだ。


それでも気怠さはなくならない。

空気の問題もあるし早めに処分するべきだろう。


天羽々斬に魔力を通す。

刃が伸び、神刀が持つ本来の力の一端が顕現する。


『なんだ?!』


それに反応したのか、魔神の欠片がその形を変え始めた。

魔力の吸収が止む。


その代りに、奪った魔力を利用し、何らかの力を振るおうとしている。

魔神の欠片が中核となし、人型が形成されていく。


俺は、それが完全に形成される前に神刀を振るった。

だが、魔神の心臓を両断した神刀は、欠片を斬ること叶わず、甲高い音を立て弾かれた。


「何っ!?」


天羽々斬で斬れないというならどうすればいいというのか。

苦し紛れに、魔法を放つ。


「大いなる海よ。その雄大な力の中にある矮小な存在を押しつぶせ。〈大海圧殺〉」


オリジナル水魔法。

即席ではあるが、ここが海の中であり、周り全てを水で埋め尽くされている現状、その威力は絶大であるはずだった。


だが、魔神の欠片には傷一つ付けることはできず、とうとう人型が確かな形となって目の前に現れた。


『我を起こしたのは(たれ)ぞ?』


凛とした男の声が、海中に響いた。

黒葉周 17歳 男

冒険者ランク:B

HP:10500

MP:8450(50up)

魔法属性:全

<スキル>

格闘術、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術、棍術

基本六魔法、氷属性魔法、空間属性魔法、無属性魔法、神聖魔法、暗黒魔法、魔法陣術、召喚術

馬術、身体強化、魔力制御、完全回復、天足、覇気、看破、隠形、危機察知、魅了、罠解除、指揮

耐魅了、耐誘惑、耐幻惑、恒温体

礼儀作法、料理、舞踊、水中行動{水泳(new)+潜水(new)}(fusion)

<ユニークスキル>

天衣模倣マスターコピー完全なる完結ジ・エンド・オブ・パーフェクト全知眼オールアイ識図展開(オートマッピング)天の声(アナウンサー)

<称号>

「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「武を極めし者」、「すべてを視る者」、「竜殺し」、「下克上」、「解体人」、「誘惑を乗り越えし者」、「美学に殉ず者」、「魔の源を納めし者」、「全能へと至る者」、「人馬一体」、「無比なる測量士」、「翼無き飛行者」、「竜の友」

<加護>

「創造神の期待」、「戦と武を司る神の加護」、「知と魔を司る神の期待」、「生と娯楽を司る神の加護」、「鍛冶と酒の神の加護」、「炎竜王の加護」、「大海と天候の神の加護」(new)

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