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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第三章 休暇中の大騒動「燃ゆる温泉街」編
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第65ページ 縛られし霊魂

〈座標転移(テレポーテーション)〉」


サメドラの死体から出た何か。

おそらくというか、絶対にアレが向かった先は匣だろう。

決して良いものではないだろうし、確認の必要がある。


そう考え、匣のある地下水道合流地点へと一気にテレポートしてきたのだが…


「なんだこれは…」


眼前に広がるのは、俺が織り成した隔離結界の周りを漂う無数の物体。

詳細を視る限り、霊魂と呼ぶべき存在のそれは、どうにか中に侵入しようとしているかのように見えた。


「シュウ!」


声に振り返れば、駆け寄ってきたのはダスカスとマテウスだった。

カリアの姿はない。


「戻ったか、上はどうだ?」

「大元は倒した。後はこれだけのはずだ」


その言葉にダスカスは目を見張り、驚きを表した。


「早いな。さすがは前王も認める冒険者ということか」

「世辞はいい。こちらの状況は?」


ダスカスは肩をすくめ、結界の方を示す。


「見ての通り、としか言い様がない。お前が私たちをここに連れてきたあと、マテウスに事情を説明された私は、マテウスとカリアに上の様子を見てくるようにと指示した。マテウスは一度屋敷へ、カリアは襲撃された場所の確認。大方の情報を確認し、戻ってくる前に今度は魔物の召喚が起きた。マテウスは魔物をなんとかやり過ごし、私の所に報告。その後、カリアも報告へ来た。私はカリアに魔物討伐と、ミッシーへの伝言を伝え、マテウスと共にここで見張りを継続していたわけだ。咄嗟の時反応するためにはここにいるのが一番とは言え、ここでじっとしているのはなかなか堪えたぞ。お前がこの結界みたいなのの効果をちゃんと説明してくれてればよかったんだ」

「…それはすまん」


まさか文句を言われるとは思わなかった。

だが、そうなるとこの霊魂たちを除き、変わったことはなかったわけか。


「霊魂が集まり始めたのは魔物の襲撃を俺が聞く前だ。おそらくは破壊された三箇所の犠牲者なのだろうな」


つまり、それを破壊する前にはもう死んだ魂はここに送られるようになっていたということか。


霊魂たちの方を見ると、その中に一際強い輝きを放つ。

どす黒い色をした物があるのに気づく。

あれがサメドラの魂なのだろう。

死してのちも、魔神の為にとは敵ながら天晴だな。


「それでどうする?一応言っておくが、剣も魔法も効かなかったぞ」

「試したのか。それなら俺ができることはないと…いや待てよ?」


俺はステータスカードを取り出し、スキル欄を確認する。

案の定そこにはお目当てのスキルが書かれていた。


<スキル>

格闘術、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術、棍術

基本六魔法、氷属性魔法、空間属性魔法、無属性魔法、神聖魔法、魔法陣術、暗黒魔法、召喚術

馬術、身体強化、魔力制御、完全回復、天足、覇気、看破、隠形、危機察知、魅了、罠解除、指揮


この霊魂のが寄ってきている魔法は、サメドラも使っていた暗黒魔法なのだろう。

ならば、対である神聖魔法を使えばどうにかなるかもしれない。

だが、


「くそっ、光魔法との具体的な違いがわからん」


俺が神聖魔法を視たのは二度。

一つは、教国の奴らが自殺に使ったとき。

もう一つは、ドンナ司祭が戦っているときだ。


だが、俺はあの時、光魔法との明確の差異を確認していなかった。

差がわからなければイメージの付けようがない。

やはりここは本職に任せるべきだろう。


「司祭を呼んでくる」

「司祭…まさかドンナ司祭か!?」

「なんだ、知ってるのか?」

「当たり前だ!力だけであるなら間違いなく司教クラスであるはずなのに、治すよりも壊すことが多くて未だに司教になれないお人だぞ!我々忍部隊が知らぬはずがなかろう!」


あの人は本当に聖職者なのか?

確かに、魔物倒す時も周りの建物のことなどお構いなしにやっていたな。


「そうは言っても俺ではこれをどうしたらいいかわからない。専門家に聞くべきだろう」

「こんな時エサイム司教がいてくれれば…」

「エサイム司教?」

「ここら近郊の教会のまとめ役をなさっている方だ。普段はアキホに常駐してくれているのだが今は他の町に行っていてな」


そのタイミングを狙われたのではないだろうか?

まぁないものねだりをしてもしょうがない。

ここはドンナ司祭で我慢して貰おう。


「待ってくださいシュウさん!見てください!」


今まで話に入らずにいたマテウスがいきなり大声を上げた。

指差す方を見ると、霊魂により隔離結界にヒビが入っていた。


「まずいっ!」


急いで貼り直そうとするが、空間魔法は生憎融通が利かない。

その中でも、転移などの使い慣れた簡単なものではなく、空間を隔離するこの魔法は構築に大変な時間がかかる。

詠唱が、魔力の変換が長く感じる。


「くそっ!?」


だが奮闘もむなしく、俺が魔法を再構築するよりも破壊される方が早かったようだ。

バリンッという音を立てて、隔離結界が崩れる。

その瞬間、押し寄せていた無数の霊魂は、匣へと殺到した。

濁流のような勢いで霊魂が吸収される。


「おいおい…」

「これはマズイな…」


集まっていた全ての霊魂を吸収した匣は、一瞬その姿を膨張させたかと思うと、天に向かって黒い光の柱を発生させた。

禍々しい光は、地下水道の天上、町にとっての地面を貫き、空を露出させる。


「地上に出るぞ」


マテウスとダスカスを含めて、地上へと飛ぶ。

飛ぶ寸前、押し寄せてくる黒い光が見えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「ならば、対である神聖魔法を使えばどうにかなるかもしれない。だが、「くそっ、光魔法との具体的な違いがわからん」 習得しただけで、「一を知れば十を知る」じゃなかったの?
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