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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第三章 休暇中の大騒動「燃ゆる温泉街」編
64/358

第55ページ 動き出す

「前に王都近くに強力な魔物が出たことがあってな。そやつを討伐してくれた礼に王城に招いたことがあったのじゃよ」


ギースの飲み代を立て替えてやったのだが、それがその場にいた客全員分の飲み代を賭けていた飲み比べだった為に軽く金貨5枚は必要だった。

必要だったのだが、どうやら爺さんそれ程金を持ち歩いてるわけではないらしく、結局俺が立て替えるという意味のわからないことになっていた。


ギースはせめてもの礼にと宿までシオンを背負っていくと言い、俺たちはそれを了承。

こちらから頼みたい程だったが、恩にきてくれているのでいいだろう。


宿につき、ギースと別れて爺さんの部屋に行くと、爺さんは金貨5枚を渡してきて、ギースと会ったときのことを話し出した。

SSランクにもなると王城に招くこともあるそうだ。


「『野犬』の異名を持つあやつは、実戦経験に基づく独特な剣法を使うそうじゃが、その強さはSSランクに相応しいものじゃ。当時の七星剣とも模擬試合で引けをとらなんだ」

「それで恩を売っておこうと?」

「そんなところじゃな」


ほっほっ、と楽しそうに笑う爺さんを呆れて見ていた。

打算を打算と言い切るとは思わなかったが、言い切ったところで俺が気にしたりしないことまでわかっていそうだ。

この爺さんと話していると全部わかられているような気がするんだよな。


―・―・―・―・―・―


フェルディナン・エタンセル・マジェスタ・フォン・アッシュフォード 66歳 男

種族:人族

HP:400

MP:2300

魔法属性:水

<スキル>

槍術、水属性魔法、算術、礼儀作法、覇気、指揮、鼓舞、直感

<ユニークスキル>

王者の資質(クオリティー・オブ・キング)

<称号>

「自由人」、「大国の王」、「賢王」、「狸爺」

<加護>

「生と娯楽を司る神の加護」、「愛と美を司る神の加護」、「大地と豊穣を司る神の加護」


―・―・―・―・―・―


王者の資質(クオリティー・オブ・キング)」は文字通りだ。

王であるための資質。

それは、人心の掌握であったり決断力であったり、そういった王の資質を総括したスキル。

これも持って生まれるものだ。


この爺さんには、心の中を覗くようなスキルも、頭の回転を助けるようなスキルもない。

にも関わらず、心の奥底を見られているような感じがする。

この爺さんとカードゲームはしたくないな。


---


「天上の湯」近くの裏路地。

そこにフードを被った複数の人間がいた。


「何かわかったか?」

「は、あの者はガイアの街を拠点としたBランク冒険者のようです。しかし、実力的にはSランクに匹敵し、なんでも地竜を単騎で討ち取ったとか。それにより『竜殺し』と呼ばれているようです」

「ガイア…辺境の地だったか。地竜を単独で討つ相手が護衛に加わったとなると面倒だが…」

「それが、どうやらそうでもないようで」

「何?」

「フェルディナンが奴のことを気に入り、連れ回しているだけのようです」

「正式な依頼ではないと。ならば機会はあろうな。あの男はどうした?」

「ギースも特に依頼を受けた訳ではないようですね」

「ならば大丈夫か…決行は明日の夜とする」

「「「「「「はっ」」」」」」


---


アキホの町の地下。

闇色のローブを纏った集団が。篝火を囲み怪しげな呪文を唱えている。


「もうすぐじゃ、もうすぐ全ての行程が終わる。後は血を流すのみ」

「復活の時は近い」


---


翌日。

今日も俺はアステールを連れて町をぶらついている。


「うん?あれは…」


目に付いたのは朱色の屋根をした建物。

その前には石で出来た鳥居もある。


「神社?何を祀っているんだ?」


気になった俺は、とりあえず行ってみることにした。

鳥居をくぐり、社まで行く。

人気はなく、何が祀ってあるのかはわからない。


「「ようこそいらっしゃいました」」

「っ!?」


後ろから声をかけられ、慌てて振り向く。

そこには白と紅の巫女装束を着た二人の女性。

全く気配を感じなかった。

だが、どうやらアステールはわかっていたようだ。

特に反応を見せない。


「お待ちしていました」

「待っていただと?」

「はい。神のご意思により」

「今日、俺がここに来るのがわかっていたと?」

「いいえ。いつかは来るだろうと」


それは何とも気の長い話だな。

だが、未来がわかると言われるよりはいいか。

…そういえば俺未来見れるんだったな。

そんな俺が予知を否定するのもおかしな話か。

どうにもまだ向こうの感覚が染み付いているんだよな。


「それで?何の用だ?」

「神の伝言をお伝えします」

「伝言?」

「はい。教会に顔を出せ、と」


そう言えば行く行くと言いながら行ってなかった。

しびれを切らした神様が伝えてきたのか。

いや、どんな神様だよ。


「あんたらは誰を祀っているんだ?」

「私たちは特定の神を祀りません」

「全ての神をお祀りします」

「八百万の教えに基づき」


八百万。

それは日本の神の考え方。

全てのものに神は宿るというもの。

つまりここもアタミ伯爵が建てたということなのだろうか?


「それでは確かにお伝えしました」

「ああ、わかったよ。帰ったら必ず顔を出す」


いつ帰るかはわからないがな。


「ああ、それと」

「?」

「何やら災難の相が出ております。お気を付けを」


ちょっと待て!

不吉なことを言いながら去るんじゃない!!


まったく、何が起きるっていうんだ?

心当たりなんか…

何人かの顔が思い浮かぶな。


今日は宿に戻ってのんびりしておくか?

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