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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第三章 休暇中の大騒動「燃ゆる温泉街」編
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第45ページ プロローグ

三章開始です!

闇色のローブを纏った集団が、怪しくゆらめく炎を囲い、何やら儀式をしている。

そのもの達から漏れる声は、聞けば誰もがゾッとするような音を立てており、この儀式が絶対に健全なものではないことがわかる。


「全ては魔神ルベルベン様の為に」

「「「「「「全てはルベルベン様の為に」」」」」」


儀式は続く。

それは真に悪しき儀式。


---


「いらっしゃい!」

「おっ兄さん、寄ってかないか?!」

「ようこそいらっしゃいました!」


賑わう町並み。

夜でありながら明かりが絶える様子はない繁華街。


そこには様々な露天が並び、様々な種族が入り乱れていた。


「やっと着いたのぉ」

「左様でございますね」

「年寄りにはきついわい」


その街に、また新たな一団が到着する。

特に変わったところのないような一団。

しかし、その中の数人は厳しい目つきで辺りに注意を払っている。


そんな様子を見ながら、囲まれるように歩いていた老人は仕方ないことだと思いつつも苦笑する。

だが、次の瞬間には今後のことを考えており、どれほどこの老人がこの街に来ることを楽しみにしていたかが伺える。


「年に一度しか来れんのじゃ。楽しむぞい」


老人は笑顔で前を見る。

その方向には一際大きく、輝く建物があった。


---


「あれは…」


その一団を見ている者がいた。

建物の屋根に腰掛けるその女は、目立たないよう暗い服装をしており、周囲の闇と同化していた。


「そう…私の仕事と関わらなければいいのだけど…」


そう願いながら、しかし心のどこかでおそらくは無理なのだろうと、女は諦めたように呟く。


この街で自分に課せられた仕事。

それを全うするためにこれからどうするか、それを考えながら。


---


「目標発見。いかがなさいますか?」

「チャンスはいくらでもある。とりあえずは情報収集だ」


別の場所で一団を見ている集団がいた。

こちらも極力目立たないようにという服装をしている。


だが、こちらは人ごみに紛れるように存在しており、雑踏の中で話している。

動きを止めず、流れに逆らわず、故に気配を辿れない。

それがこの集団のやり方だった。


「必ず任務は果たす。神の名の元に」


---


「ん?」

「どうしたんですかい、旦那?」

「いや、知った顔がいた気がしたんだが…」


男は声をかけてきた番頭に答える。

しかし、男の視線の先には既に人影はない。


「気のせいか?」

「この街は人が多いですからな、見間違いということもあるでしょう」


それもそうか、と男は納得しもう気を払うことをやめる。

このことを、後に後悔するとは知らずに。


---


「兄貴、準備整いましたぜ」

「そうか、よぉし野郎どもっ!今日も派手に行くぜっ!!」

「「「おぉ!!」」」


路頭の片隅、くたびれたような酒場で男たちが盛り上がる。

この場に客は男たちしかおらず、話を聞くような者たちもいない。


男たちは何も知らず、今日も仕事に赴く。

自分たちの命が、もうすぐ終わりを告げることになることなど何も知らず。


---


一つの街であらゆる思想が蠢く。


そんなこの街にある少年が来たとき、それまでの日常が崩れ、街の全てを巻き込んだ非日常が始まる。


「やっと着いたな、アステール」

「クル」

「さぁ、久しぶりに温泉だ!」


少年は高らかに宣言する。

この街に来た目的を。


しかしもちろん、街はそんな少年の目的など意にも介さず動き出す。

明るく輝く街の裏で、暗躍する幾多もの影。


否応なく、少年は巻き込まれていく。

その強さに引かれてか、生来のトラブル体質なのか、神の悪戯か。

それは誰にもわからない。


少年は意気揚々と街に踏み入れる。

これから自分が巻き込まれる騒動のことなど全く知らず。


こうして少年の日常も、非日常へと変わっていく。

しかしあるいは、この少年にとって非日常こそが、日常と言えるものかもしれなかった。


少年の参戦は幸か不幸か。

しかし間違いなく、騒ぎが静かに終わることはなくなった。

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