第4ページ ステータス
「異世界人だと?」
「はい。彼の称号にあります。『異世界からの来訪者』と」
マインスがそう言うと、その場にいた全員がこちらを目を見開いて見る。
ただ言わせて欲しい。
来たくて来訪したわけではない、と。
「今の話は本当か?」
「嘘か本当かと言われれば本当ですね」
こうなってしまっては隠すことに意味はなく逆にマイナスになりかねないと開き直る。
だいたいなんだ、その称号というのは。
聞いてないぞ。
そして俺はソファに座り直しこちらに来たときの話から今までの話を包み隠さずする。
といってもほとんどはララたちの知っている話となり、ララなどはどうりで常識を知らないはずだと納得している。
隠した理由として、この世界での異世界人の扱いがわからなかったし、そもそも話しても信じてもらえるとは思えなかったと言ったあと、みんなが黙ってしまった。
しばらくの沈黙のあと、辺境伯が口を開く。
「どうやら、本当のようだな。いや、異世界人など見たのは初めてだ」
「私もですわ」
「お前はどうだ?」
「私も自分で視るのは初めてですな」
そう言ってやはり、一人マインスは面白そうにこちらを見ている。
「その称号というのはなんですか?」
「称号というのは、そのままの意味です。その人物を表す称号があり、これは先天的のみならず、言動により後天的に手に入ることもあります。人によっては両手の数よりも多い称号を獲得していることもあります。それぞれに能力値の補正といった効果があります。例えば、私の場合、称号は『真実を視る者』。効果は私のユニークスキルである『審知眼』の能力上昇。また、相手の言葉が嘘か真かがなんとなくわかるといったものです」
なるほど。能力補正とプラスαだと考えればいいわけか。
「そうなると俺の『異世界からの来訪者』というのは?」
「私の『審知眼』も称号の効果まではわかりません。ただ、前例さえあれば称号全鑑というものに記載があるかもしれませんが」
「前例はあるのでしょうか?」
「確率は高いと思います。過去に異世界から召喚された者がいないわけではありませんので」
異世界から召喚されたやつなんているのか。だが、俺とは違うんだろうな。
「私はそちらをあたってみます。しかし、もう一つ、簡単に知る術があります」
「それは?」
「カードを作ることです」
カードというのは、正式名称を『ステータスカード』といい、自らのステータスを記載することができるという便利なものだ。
また、それは名前以外任意に隠すことも可能なようで、身分証明書の役割も果たす。
同時に、冒険者ギルドに登録した際はこのカードにランクなども書かれるようになり、更にはステータスが成長したり、新しいスキル、称号を手に入れると自動で更新されるというなんだその便利グッズという代物。
ここで作ることも可能であるというし、作らない手はないだろう。
そもそも、身分証明書のこれがないと街への出入りも大変となるらしい。
具体的に言うとお金が毎回かかるよう。
今回俺がガイアへと入れたのは辺境伯の馬車に乗っており、確認などをされなかったお陰だ。
危なかった。
俺が作りたいと言うと、マインスが少々お待ちをと言って出て行く。
戻ってくるまでの間、ララが俺の世界の話を聞きたいと言ったので、適当に話して過ごす。
少しして、マインスがハンドボールくらいの大きさの水晶玉と、銀色のカードを持ってきた。
まだ何も書かれてはいない。
しかし、考えてみると俺は自分のステータスをまだ知らないのにマインスはもう全部知っているというのは変なかんじだな。
「ではまずこちらの水晶玉を利き手にお持ちください。逆の手でこちらのカードを」
俺は言われた通りにする。利き手は右なので右に水晶玉を、左手にカードを持つ。
すると水晶玉が少しずつ発光していく、その光が収まっていくと今度はカードに文字が浮かび始めた。文字はこちらの文字らしく読め…た。
どうやら言葉が通じたのと同じように文字も読めるようになっているらしい。
「最後にカードに血を一滴垂らして終わりです」
俺はマインスが渡してくれた小型のナイフを受け取って、指の先を少し切り、カードに垂らす。
すると、カードが一度輝いたかと思うと、完全に文字が記載されていた。
「これでそのカードはあなたのものであり、あなた以外が触れても情報が浮かぶことはありません。無くしたりなさらないようお気をつけください」
マインスの言葉に頷いて、カードに目を向ける。
これが現在の自分のステータスか。
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黒葉周 17歳 男
HP:10000
MP:5000
魔法属性:全
<スキル>
体術、棒術、剣術、槍術、弓術、光属性魔法、馬術
<ユニークスキル>
天衣模倣、完全なる完結、全知眼
<称号>
「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「極致に至る者」、「武を極めし者」、「すべてを視る者」
<加護>
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