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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第二章 友との出会い「深淵の森」編
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第41ページ vs魔人巨兵もどき

もはや見上げることしかできなくなったその姿は、正しく怪物と称するに値するものではないだろうか。


「何したのシュウ…」

「俺は何もしていない」


隣のベンが言ってくるが完全に冤罪だ。

他のメンツは怪物を見上げながらポカンとしている。


《おやおや、すごいことになってるねぇ》

「えっ!?この声って…」

「クロか」

《お?僕クロになったのかい?いいねぇ!やっぱり名前を貰えると嬉しいねぇ!》

「いちいち黒白の王って言うのはめんどくさいんだよ。あと名前じゃない。渾名だ。名前は一番短い呪っていうからな。お前を縛ってしまうことになるかもしれん」

《そんなこといいのにー僕は縛られてる身だよ?》

「俺が嫌なんだよ」

「…え、いつの間にそんなに仲良くなったの?」


お前のような化物を縛ったら何が起きるかわかったもんじゃない。

それとベン、別に仲良くなってはないぞ?


「それでなんのようだ?」

《いやなに、ずっと見てたけど何やら騒がしくなってきたからね。まさか魔人巨兵なんてねぇ》

「魔人巨兵?」

《そうさ。遥か昔に失われた筈の技術なんだけどねぇ。いや?再現度がいまいちだね、これなら魔人巨兵もどきって言うべきかな》


これでもどきとはな。

本物はどんなもんだろうな?


「弱点はあるのか?」

《額に核があるはずだよ。手伝おうか?》

「いらん」

「そんなこと言って、どうやって額まで行くつもりさ?」

「こうやって!!」


腐竜と戦った時のように身体に風を纏う。

あれから、サラが風で飛ぶのも見ているためにあの時よりも少ない魔力を使い効率よく飛ぶことができるようになっているはずだ。


目論見通り、風で飛ぶコツを掴んでいた前とは違い楽に飛行する。


「おっと!」


飛んでくる俺に気づいたのか魔人巨兵もどきが腕のようなものを振ってくる。

大振りなため避けるのは簡単だったが、その動きにより生まれた気流が俺の風を弛めた。

即座に墜落ということにはならないが、なかなか綱渡りかもしれない。


《あ、気をつけてね。もどきが本物とだいたい同じ構造してるなら火とか吹いてくるからそれ》

「は?」


「グオオオオ」


クロの忠告が聞こえたかどうか。

頭上から高温の炎が振ってきた。


「早く言えバカ野郎!!」


慌てて回避する。

単調な線の攻撃で助かった。


「こらぁ!避けるなぁ!危ないだろう!」


下からベンが叫んでくるが実際あれくらい避けられるんだから勘弁しろよ。

てかあんなのいちいち受け止めてられるかっ!


「あ、やべ」


炎がどうなったのか気になり一瞬目を離した隙に、腕が振られていた。

さっきよりも太くなっているような気がする。


「がっ」


ギリギリ回避が間に合わず掠ってしまった。


「チッ、少し当たっただけでこの衝撃かよ…」


まるでダンプカーに撥ねられたような衝撃だった。

…ダンプカーに撥ねられた経験はない。


痛む身体を抑えながら上昇を続ける。

その間、襲い来る攻撃をかわしながらのため、予想よりもかなり時間がかかり額へと到達する。


確かに額に青紫色に輝く宝石のようなものが埋まっているのが見える。

おそらくあれが核だろう。


「螺旋を描く風の塔。凪ぐことのない風の谷。蠢き脈動す…っ!?チッ!!」


核を壊すために風の魔法を詠唱しているとこちらに気づいた魔人巨兵もどきは思いっきり火を噴いてきた。

噴火と見紛うかのごとき火炎が俺へと殺到する。


当然、俺は慌てて避けるが、それにより詠唱は中断しざるを得ない。

無詠唱で放った魔法では、おそらくあれを壊すことはできないだろう。


「さて、どうするかな」


俺を脅威と判断したのか、魔人巨兵もどきは火を吹いてくる。

だが、それは今までのただ吹くだけの火とは違い、力が固められ火球となって襲い来る。

スピードも上がり、更には数が多い。


「くっ!」


避けるのに精一杯だ。

しかし攻撃はそれだけでは終わらなかった。


「何っ!?」

「シュウっ!!」


火球が降り注ぐ中、魔人巨兵の身体から刺のような何かが生まれ、一斉に俺に向かって突き出てきた。

火球を避けることに必死だった俺は、それをどうにか避けようとするが、全て避けることは叶わず、脇腹に突き刺さる。


「ぐあっ…」


全力でその場から立ち退くが、腹から流れる血は、それが軽傷でないことを如実に物語っていた。


集中が切れていく。

魔法が…途切れる。


俺を浮かしていた風が消え、身体が落ちていく。


---



「シュウ!マズイっサラ!」

『ええっ!…!?なによこいつら!?』

「!?」


気づけば俺たちの回りを気色悪い生物が取り囲んでいた。

それは青紫色をしたスライムのようでもありながら、毒々しい煙を吐き出していた。


「くっこんなときにっ!」

「ベン様!跳べないのですか!?」

「落下しているシュウに座標を合わせようと思ったらちょっと集中しないと無理だよ!かと言ってシュウ自体を飛ばすこともできないし…そうだっ!クロさん!」

《んーできなくはないけど…シュウから手助けはいらないって言われてるしなー…んーでも友達がいなくなるのは寂しいしなー》


こんなときになんて悠長な!!

そんなこと考えるまでもないだろう!


神剣を抜きながら考える。

落ち着け、何かあるはずだ。

何かっ!


そうこうするうちに、気色の悪い液体生物がすぐそばまで来ていた。

とりあえずこれに対処しなくてはならなくなる。


時間がない!


焦りが思考を惑わせる。

こんなに焦ったのは果たしていつ以来だろう?


そんな俺の視界に黒い影が駆けたのが見えた。


---


ドンッ


と音がした。

一瞬意識を失っていた。

どうやら何かに自分がぶつかったようだが、地面にしては衝撃が少ない。


ぼやける視界をどうにか固定すると、目の前に黒い羽毛が見えた。


「お前…」

「クルル」


ブラック・ヒッポグリフ。

その背に今、俺は背負われていた。


「助けてくれたのか?」

「クル」


ありがとう、と撫でてやれば嬉しそうに声を上げる。


「〈ライトヒール〉」


これでどうにか傷は塞がった。

とりあえずはこれでいい。


「うおっ!?」


俺が体勢を整え、ブラック・ヒッポグリフにきちんと跨ると、いきなりその翼を勢いよく羽ばたかせ、空へと駆け始めた。


「乗せてってくれるのか?」

「クル」

「…お前も戦いたいんだな」

「クル」

「わかった。頼む」

「クルル!」


その声に任せろと言わんばかりに啼き、凄いスピードで空を駆けていく。

こいつはまだ成長途中のはずだが、それでもそのスピードは驚くほど速い。


これなら空中機動は任せてもいいだろう。

俺よりもよっぽど本職なのだから。


俺が避けるのに精一杯だった火球を軽々と避け、上昇していく。

まるで風になったようだ。

こんな時だが、俺は開放感という快楽を味わっていた。


やがて額が見えてくる。

詠唱を始める。


「螺旋を描く風の塔。凪ぐことのない風の谷。蠢き脈動し吹き荒れる。束ね束ねよ束ねて貫け!〈風神の(ほこ)〉!!」


俺の全魔力を込め風の鉾を具現化する。

貫通力という一点においてこれ以上の物は今の俺には無理だろう。

水も土もない空中で、風こそが最強となる。


「はぁぁ!!!行っけぇぇ!!」

「グルルルルルゥゥ!!」


それを思いっきり投擲してやる。

額の宝石目掛けて一直線だ。


鉾が宝石までたどり着くまでに火球や刺が飛んできたりもしたが、安定してブラック・ヒッポグリフが避けてくれている。

ありがたい。


そして、狙い違わず鉾は宝石にぶち当たる。

少しだけ拮抗して鉾を押しとどめはしたが、俺の持てる全魔力の鉾に打ち勝つだけの硬度はなかったようで、バキンッという甲高い音を立て、宝石が崩れる。


それと同時に、魔人巨兵もどきの身体も崩れていく。


「ふぅ…終わったな」

「クル」

「…あれ?このまま崩れたらベンたちヤバいんじゃないのか?」

「クル?」


冷や汗を掻きながら、俺はブラック・ヒッポグリフに頼んで下へと降りてもらう。

さて、なんて謝ろうか?

黒葉周 17歳 男

冒険者ランク:C

HP:10300(up)

MP:7800

魔法属性:全

<スキル>

格闘術、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術

氷属性魔法、空間属性魔法、無属性魔法、基本六魔法

馬術、身体強化、魔力制御、覇気、跳躍、索敵、看破、危機察知、罠発見、罠解除、空間把握、完全回復

耐魅了、耐誘惑、耐幻惑

礼儀作法、料理

<ユニークスキル>

天衣模倣マスターコピー完全なる完結ジ・エンド・オブ・パーフェクト全知眼オールアイ

<称号>

「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「武を極めし者」、「すべてを視る者」、「竜殺し」、「下克上」、「解体人」、「誘惑を乗り越えし者」、「美学に殉ず者」、「魔の源を納めし者」、「全能へと至る者」、「人馬一体」(new)

<加護>

「創造神の興味」、「戦と武を司る神の注目」、「生と娯楽を司る神の加護」、「知と魔を司る神の注目」


---


「人馬一体」:騎乗した生物と一定以上の信頼関係を持った者に与えられる称号。騎乗させている生物が重さを苦にしなくなり、騎乗していない時と同様に動けるようになる。

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