第40ページ vs魔族
「これは…?」
「はっはっは!何も見えまい!貴様はここで独り死んでいくのだ!」
暗闇の中、確かに俺以外の気配は感じられない。
俺だけが閉じ込められたということか。
瀕死だった割にこんな魔法を瞬時に展開するとは、少し舐めていたかな。
だが、もしこれが奥の手だというのなら拍子抜けだな。
「暗きを照らすは星々の光。輝き満ちて闇を払え給え〈聖星〉」
唱えたのはオリジナルの呪文。
イメージを固め、夜を照らす星々の輝きを具現化する。
込められた効果は闇の払拭。
俺から放たれた光は暗闇に広がっていき、徐々に闇を払っていく。
「な、なにっ!?貴様っ光魔法が使えるのか!?」
この魔族はどこか残念な感じがするな。
なんかやる気が削がれていく。
それを狙っているのだとしたら大したものだ。
光はどんどん闇を払っていき、やがてその帳を打ち破った。
目の前に唖然とした様子の魔族が立っている。
自分で治療をしていたようで、両断したはずの身体が完全にとはいかないがくっついていた。
「へー治癒できたのか」
「魔族は魔力がある限り自己治癒が可能だっ!貴様に勝目はないぞ!」
ほんとなんでも教えてくれるな。
「そうか。じゃせいぜい粘れよ?」
無詠唱で生み出した数本の光の矢を魔族に向け放つ。
それと同時に地を蹴って接近する。
「〈ダークウォール〉!」
魔族は詠唱破棄で魔法を行使。
闇色の壁が生まれ光の矢は防がれた。
「ふっ、この程度で調子に乗るでないわ!」
「囮だよ」
「なにぃ!?」
面白いやつだなこいつ。
闇の壁が出現した瞬間に、俺はスピードを上げ魔族の後ろへと回り込む。
そして、意識が途切れた一瞬を狙って斬鬼を振った。
だが
ガキン
「ははっその程度かっ!」
「チッ」
絶好のタイミングで振るったはずの刃は、無詠唱によって新たに生み出された闇の壁に阻まれた。
「闇よ、新たに剣の役を与えん!〈ダークソード〉!」
「なにっ!?」
壁と化していた闇がその形状を変え、幾本かの剣となってそのまま俺に襲いかかってきた。
どうにか後退して回避するが、無傷とはいかなかった。
頬と腕の数箇所に切り傷ができている。
予想できなかった技をこれくらいで済ませれてよかったと思うべきか。
「チッ避けやがったか」
「悪いな。少し舐めてたよ」
無属性魔力を身体に纏わせる。
斬鬼には光属性だ。
「てめぇ一体何者だ?そんな魔法の使い方魔族でもやらねぇぞ?」
「へーそうなのか。なら俺は魔族じゃないんだろうな」
そう笑って言ってやれば憎々しげに魔族の男が舌打ちした。
「魔族はそんなことやる必要がねぇからな!」
「アメーバみたいな奴らだな!!」
俺と魔族が同時に地を蹴る。
俺の斬鬼を魔族は闇の剣で受け止め、逆側から闇の槍が襲ってきた。
それを空いている手でいなし、合気道の要領で力を加える。
魔族の重心が少しずれたところを突いて足をかける。
そのまま転ぶかと思われたが、魔族は闇を身体に纏い刺状にしてこちらを攻撃してきた。
慌てて飛び退る。
「逃げてんじゃねぇよ!!」
闇の玉が飛んでくる。
斬鬼で弾き、避けながら前へと進む。
光属性の魔力を伸ばし、刀身として魔族を斬りつける。
「くっ!?」
いきなり伸びた刀身に感覚を狂わされた魔族は、腕を犠牲にし、どうにか避けていた。
俺はそこで追撃をやめたりしない。
魔族の片腕となった方から執拗に攻撃を繰り返す。
「チッ!」
腕を拾おうとしていた魔族はそれを諦め、後方へと跳ぶ。
だが、逃がしはしない。
即座に追い、魔法で攻撃しながら斬鬼を振るう。
それでもさすがは魔族と言ったところか。
闇魔法を匠に操り、尽くを防いでいく。
だが、一度瀕死の重傷を負わされ回復途中の魔族と、掠り傷程度の俺では残っている力が違う。
すぐに拮抗は崩れ、徐々に魔族を押していく。
「くそがぁぁぁ!!」
魔族に刃が入ると思ったその時。
魔力が爆発した。
「ぐぅっ」
たまらず飛び退くが、威力は殺せず、咄嗟に交差させ身を守った腕にダメージが入る。
腕にを包む魔力の量を上げていなかったらタダでは済まなかったかもしれない。
「なんだ今のは…」
「はっ…はっ…チッまだ生きてやがるのか。今のは魔力暴発つってなぁ、自らの魔力を暴発させる捨て身の技なんだが…てめぇやっぱりやりやがるな」
やっぱり説明してくれる。
なんなんだこいつは。
もはや口が軽いとかそんなレベルではないと思うんだが。
それでも俺はヤバいと思った。
自爆技まで使った魔族は一周回って冷静になってしまったようだ。
今までの状況では俺に分があったが、純粋な力量的には向こうの方が上だと俺は思っていた。
黒白の王も言っているのだから間違いないだろう。
今まではわざと挑発し、こちらの方が上だと錯覚させるように攻めた。
相手から冷静さを奪い、怒りで判断を狂わせるためにだ。
だが、それももう通じそうにない。
与えたダメージでもこちらが上。
それでも、そんなことは忘れた方がいいと思わせるだけの雰囲気が魔族から放たれていた。
「あーあ、シェンツィアートの野郎の道具なんざ使いたくはなかったんだがな」
魔族は懐から石のようなものを取り出す。
「だが、このままやってもどうせ負けて死ぬなら…てめぇらまとめて道連れにしてやるよ。てめぇらは俺たちの邪魔になる。全ては魔王様の御為にってやつだ」
魔族の手にある石が不気味な光を発し始めた。
石の周りの空気が歪んで見える。
「なんだか知らんがあれはヤバいな!」
最大限の警報を鳴らしてくる危険察知のスキルに従い、俺は魔族の手にある石をどうにかしようと走り出すが
「遅せぇよ」
石が割れた。
同時に、何かが魔族に吸収されたのがわかる。
「ぐっ!!」
魔族が急に苦しみ始めた。
その苦しみは尋常ではないのか、胸を押さえてうずくまる。
「ぐっがっがぁぁぁっぁぁぁっぁぁ!!!!」
魔族から悲鳴とも怒声とも取れる呻き声が放たれる。
その瞬間、魔族の身体が膨張していく。
魔族の体の青紫色の靄が纏わり付き、まるで身体そのものが作り替えられようとしているかのようだ。
そして、そのとおりの現象が起きていく。
「!?全員下がれっ!!」
切断されていた腕が生える。
だが、その腕はとてもじゃないが魔族のそれではなく、形容しようがない。
どう表現したらいいのだろうか。
強いてあげるならそれは弾力のあるゴムの物質が無理やり手を形作ろうとしているかのような。
そしてその物質は魔族の身体全体へと回っていく。
やがて魔族の身体は全面が青紫色となり、既に原型を留めている箇所はない。
その大きさは4階建てのビルにも匹敵するだろうほどに、巨大となり、人の形など見る影もない化物となっている。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
魔族だったものが、雄叫ぶ。
それはまるで泣いているかのようでもあった。
黒葉周 17歳 男
冒険者ランク:C
HP:10200
MP:7800(+1500up)
魔法属性:全
<スキル>
格闘術、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術
氷属性魔法、空間属性魔法、無属性魔法、基本六魔法{火属性魔法+水属性魔法+風属性魔法+土属性魔法+光属性魔法+闇属性魔法(new)}(fusion)
馬術、身体強化、魔力制御、覇気、跳躍、索敵、看破、危機察知、罠発見、罠解除、空間把握、完全回復[回復速度上昇{HP回復速度上昇(new)+MP回復速度上昇}(fusion)](shift)
耐魅了、耐誘惑、耐幻惑
礼儀作法、料理
<ユニークスキル>
天衣模倣、完全なる完結、全知眼
<称号>
「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「武を極めし者」、「すべてを視る者」、「竜殺し」、「下克上」、「解体人」、「誘惑を乗り越えし者」、「美学に殉ず者」(new)、「魔の源を納めし者」(new)、「全能へと至る者」{「極致に至る者」+「深淵に至る者」(new)}(fusion)
<加護>
「創造神の興味」、「戦と武を司る神の注目」、「生と娯楽を司る神の加護」、「知と魔を司る神の注目」(new)
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闇属性魔法:闇属性の魔法が使えるようになる。
基本六魔法:基本六属性の魔法を使えるようになる。
HP回復速度上昇:HPの回復速度が早まる。
回復速度上昇:HP,MPの回復速度が早まる。
完全回復:HP,MPの他に体力や怪我の回復速度も早まる。
「美学に殉ず者」:己の掲げる美学を行動理由とする者に与えられる称号。
「魔の源を納めし者」:基本六属性の魔法を使えるようになった者に与えられる称号。魔力に+補正。
「深淵に至る」:魔の深淵へと至る可能性を持つ者に与えられる称号。
「全能へと至る者」:武と魔、両方の頂きへと至る可能性を持つ者に与えられる称号。
「知と魔を司る神の注目」:知力と魔力に補正がかかる。
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過去に基本魔法は氷を含めると言及しており、上記では含めないことになっていますが、その理由はいずれ。




