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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第二章 友との出会い「深淵の森」編
38/358

第33ページ 41層

ブックマークが620人、PVが170000、ユニークが11000人を突破しました!

本当にありがとうございます。

その後、トマスが野営の準備を終え、俺たちがある程度の回復をしたところで食事となった。

考えてみれば迷宮に入ってから初めての食事であり、気づかぬうちに空腹となっていた俺たちはかぶりつくようにして食べきった。


「シュウ様、少しよろしいでしょうか?」


トマスが俺のテントへと訪ねてきた。


ガーディアンというのは、ボス部屋を出て一定時間が経つと再出するらしくここに留まっているうちはその危険もない。

他の魔物も出ないため見張りの必要もなく、俺たちはそれぞれのテントで休んでいた。


「どうした?」


トマスが俺を訪ねてくるのは初めてのことだ。

何かあったのだろうか、と少し心配になる。


「お礼を、と思いまして」

「礼?」

「はい。私は戦闘能力を持っていません。こと戦闘となってしまうと完全に足でまといです。昔は気にしたこともありましたが、ベンジャミン様にお優しいお言葉をもらい気にしないようにしてきました。しかし、その時に決めたのです。足でまといでもいい、私はあの方の後ろにいつも立ち、いざとなったらこの身を盾にすると。ですが、ベンジャミン様はお強く、また高貴な身分のお方ですので私のようにお仕えする者は多くいましても本当の意味で共に並び闘う相手というのはなかなかいません。ベンジャミン様は我々を友だと言ってくれます。それは大変名誉なことですが、我々は友である前に従者なのです。勝手なようですが、シュン様にはベンジャミン様の本当の友達になっていただきたいのです」

「…」


なんというか…

考えすぎじゃないのか?


確かにトマスは戦闘で役には立てないが、それ以外の面では大いに役立ってくれている。

傍から見ると完全に友達同士であるのだが、貴族の従者というのも大変なようだ。


「言われるまでもない。俺はもう友達だと思っているぞ?ベンも、トマスもな」


そう言うとトマスは少し驚いた顔をして、ゆっくりと笑い頭を下げた。

初めて見たトマスの笑顔は、とても素敵なものだった。


---


「さて、次で41層だね」

「長かったな」

「いえ普通は一日でこの規模の迷宮を40層まで攻略というのは無理だと思いますよ?」

『愛しい子と、稀有な子がいるのだから当然ね』


サラの言う稀有な子というのは俺のことらしい。

何故かはわからないが朝になったらこの呼び方になっていた。

理由を聞いても教えてくれない。


「いや、それより40層のケルベロスでこんなに苦戦したんだから次は苦戦では済まない気がするのだけど…」

「今考えても仕方ないだろう。まだ魔族の手がかりを得てない。行くしかないんだからな」


苦笑いのベンを放っておいて俺は41層へと降りていく。

だいたい苦戦はしたが怪我らしい怪我を誰もしていないんだ。

しっかりと連携すればなんとかなるのではないだろうか。


俺の認識が完全に間違えていたことを後から知ることになるのだが、この時の俺はまだ知らない。


---


「ここは…城?」

「どっかのお城の中みたいな感じだね」


41層はどこかの城の玄関ホールのような所だった。

広々とした空間、左右と正面に扉が一つずつ。

俺たちは正面の扉が奥へと繋がる扉だと仮定し、まずは左右の扉から調べることにした。


まずは右の扉。

開けてみると、まるで礼拝堂のような場所だった。

というか礼拝堂だ。

左右を燭台が囲みロウソクが点灯している。

道を挟み長椅子が綺麗に並んでいる。

正面に一段上がり、黒い十字架と、その周りに黒い薔薇が大量に咲いていた。


「闇属性魔物の迷宮なのに十字架?」

「そもそも迷宮に礼拝堂ってなんだよ」


違和感ありまくりだ。

だが、特別変わったところはない。

そう思っていたが、トマスが何かに気づいたようだ。


「この十字架…何か仕掛けがあります」

「わかるのか?」

「おそらくですが」

「なんとかなりそう?」

「お待ちを」


トマスが十字架付近で何やらしだす。

俺はその様子を面白そうに見るが、何をやっているかはさっぱりだ。


しばらくして、ガコンという音がし十字架が後ろへと倒れる。

そして、ズズズと石棺が刷り上がってきた。


「おお!」

「罠が仕掛けられておりますね、すぐに解除いたします」


そう言うとトマスは身につけていたポーチから道具を取り出す。

盗賊の七つ道具と言われるもので別に魔法の品ではないらしい。

ひとつ欲しいから街に戻ったとき探してみよう。


「終わりました」

「ありがとう。じゃ開けるよ」


ベンが石棺に手をかけ、押し開ける。

中には一体の白骨した骸。その骸が大事そうに一冊の本を抱いていた。


「…これ動き出したりしないよね?」

「さあな」

「わかりかねます」


ベンが恐る恐る本を取る。

幸いなことに骸骨が動き出したりはしなかった。

ほっとしながらベンは本の表紙を見てパラパラと中を見ると俺に渡してきた。


「死霊術について?」


本のタイトルだ。

中身も死霊術の使い方やできることなどが書いてある。


「あげるよ」

「…ありがとう」


正直いらない。

俺は視れば使えるようになるが、読んでも使えるようになるのかはわからない。

おそらくなるとは思うが、そもそも死霊術を使いたいと思わない。

骨やゾンビに囲まれるのはごめんだ。


この部屋にはこれ以上何もないようなので俺たちは部屋を出る。

次は左側の部屋だ。


ドアに罠がないことを確認し、開ける。


そこは、玄関ホールよりも更に広いダンスホールだった。

踊っている。

何がって?

骨だ。

無数のスケルトンがダンス中だった。

お前ら踊るのな。


呆気にとられていたら、一匹のスケルトンがこちらを見た。

そして、全てのスケルトンが一斉に勢いよくこちらを向く。


「っ!?」


ダンスホールを埋め尽くすほどいたスケルトンがこちらに向けて行進し始めた。


「これは相手にしてらんないよ!逃げよう!」

「賛成だ!」


俺たちは踵を返し、正面の扉へと走る。

後ろからカタカタとスケルトンたちが追ってくる音が聞こえる。


倒せないことはないが、時間と労力の無駄だ。

脇目も振らず走り、正面の扉を開ける。


ドアを閉めるときにはすぐそこまでスケルトンたちが迫っていた。

俺が扉を閉め、ベンがどこから出したのか粗末な剣を扉の取っ手に通し開かないようにする。

ドンッと音がして扉が大きく歪んだ。


「いつまで保つかわからない!行こう!」


俺たちは背後から聞こえる扉を開けようとする音をどうにか意識から追い出し、先を進む。

この階ではそれから魔物が出てくることはなく一本道を進んだら階段があった。


戦闘はしていないが、何やら疲れた。



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